退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界 2

2015-05-12 06:12:19 | 韓で遊ぶ


先生のモヤシスープ

冷たい風が窓を叩く冬です。
今ぐらいの時期、窓に白く霜がつき冬が始まるとまず思い出す人がいます。
私の思い出の中の美しい顔、それは初恋の人でもなくサンタクロースでもなく、小学校5年生の時の担任の先生です。
その年の冬、教室で初めてストーブに火が入った日のお昼の時間、ストーブの上に弁当をのせてひとしきり騒いだ頃に先生が入ってきました。
大きな鍋としゃもじを持ってです。先生は鍋をストーブにのせて、前もって準備して来た材料でモヤシスープを作りました。
初めて見る光景に私たちは皆わくわくしました。
「わぁ、モヤシのスープだ。」
「うむ、さあ、これぐらいでいいだろう。」
熱いスープを作ろうと先生は額に汗を浮かべていました。
スープがグツグツ煮えると、先生が弁当を出して鍋の蓋の上にご飯を半分近くとりだして置き、そのご飯のなくなったところにモヤシのスープを入れました。私たちも先生のように弁当の隅から一匙すくって蓋の上においてモヤシスープをもらいました。鍋の蓋の上にはそうやって置かれたご飯が白く積みあがり、そのご飯は弁当を持って来られない友達の分になりました。
「さあ、こっちに来なさい。」
先生が友達を手招きして呼ぶと、弁当を持って来られない子供たちも一人二人と集まり始めました。
「さあ、一緒に食べよう。こっちに来なさい。」
それは、普段とは違い、食べることのできない友達が一人もいない、そしてとってもおいしい昼ごはんでした。
家に帰って、お母さんにモヤシスープの話をすると、お母さんは次の日の朝、登校する私の手に小さい包みをひとつ持たせてくれました。
「さあ、これを先生にもって行って頂戴。」
「ううん、これ何。」
包みの中にはチゲを煮ることができる材料が入っていました。学校に行って見ると、他の子供達も、それぞれキムチやねぎのような材料を持って来ていました。
昼の時間になると、先生は持ってきた材料を全部混ぜてごった煮を作りました。
その後、鍋はわかめスープを煮る日もあったし、味噌汁を作る日もありました。寒い冬にぶるぶる震える子供たちの心を、ストーブの火よりも暖かくしてくれ、貧乏のために弁当を持ってこられない友達のお腹を満たしてくれた先生のモヤシのスープ。
毎年冬になるとその時のそのモヤシのスープが、いいえ先生がとても恋しく思います。
コメント
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