退屈しないように シニアの暮らし

ブログ巡り、パン作り、テニス、犬と遊ぶ、リコーダー、韓国、温泉、俳句、麻雀、木工、家庭菜園、散歩
さて何をしようか

幸福な世界 2

2015-05-03 05:26:08 | 韓で遊ぶ


おじいさんの監視

庶民が暮らす賃貸アパートの入り口のところに露天が立ちました。
トッポギのおじさん、野菜のおばあさん、豆腐のおばさん、、、、。皆がそれぞれの板に、いくらにもならないような物を置いて、小銭を稼ぐという人たちでした。私はねぎ一本でも、小奇麗な店で買うよりは、この露天で買うと気が楽でした。ところが、その道をはさんだ向かい側のバス停留所の近くに、この露天の人たちの好奇心を刺激するおじいさんが一人立っていました。
曲がった体、みすぼらしい服装、浮浪者にも見える老人は、朝、市が立つ頃から、夕方、市が終わるまで、立ったり座ったり、その場をぐるぐる回って露天の方を眺めていました。
「あのおじいさん、また来たわね。」
「ボケているのかしら。でなければ何で一日中ああやっているの。」
「きっと、そうだわ。」
おばさんたちは噂をしました。
疑問が解けたのは、私がおじいさんを見つけた1ヶ月後でした。ある日、市場を見て帰る途中、老人と出くわした私は、気になっていたことを聞きました。
「おじいさん、ここに住んでいるのですか。」
おじいさんは、うなずきました。
「あの、、気になることがあるのですが。なぜ、一日中、そこに立っているのですか。」
身体が不自由に見える老人は、不自由な言葉でやっと言葉を続けました。
「露天に家内がいるんだ。私が身体が悪くて商売をすることができないから、、、」
おじいさんは、露天のほうに行きました。
若い頃から苦労をさせたおばあさんを道端に出しておいて、家で楽にしていることがすまなくて、悪い身体を引きずって来て、おばあさんが商売をする姿をそうやって一日中見守っているということでした。
そうやっても何の助けにもならないけれど、苦労を分け合うという老人の執着、それは明らかに愛だったのでした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする