
ユ夫人の愛
天性が善良で考えが深いユ婦人が、家に客をもてなすために牛肉を1斤買ってくるように下女のコップンを市場に行かせた。
しかし、コップンが買った来た肉が、どうにもおかしかった。色があまりにも黒く腐った匂いがした。ユ婦人はその肉の塊をじっくりと調べた。それは明らかに痛んだ肉だった。
婦人はもう一度コップンを呼んだ。
「コップン、お前が行ってきた肉屋には肉がどれぐらい残っていた。」
「すごくたくさん残っていました。」
婦人は急いで寝室に入って行って、急な用事があった時に使おうと大事にしまっておいたお金を全部取り出した。そして、そのお金をみなコップンにやった。
「コップン、このお金を持って行って全部買って来なさい。お前一人では重いから持って来られないだろうから、ヘンランのお父さんを連れて行きなさい。」
「奥様、そんなに多くの肉を何に使うのですか。」
「それはお前の心配することではない。早く行って来なさい。」
少し後に、コップンとヘンランの父が大きな荷となった牛肉を背負子に背負って帰ってきた。
「ご苦労だった。人が立ち入らない裏庭の隅に穴を深く掘って、肉を全部そこに埋めなさい。」
コップンとヘンランの父は、何事かよくわからずに互いの顔を見合わせた。コップンは、なぜそんな言いつけをしたのか気になって仕方がなかった。
「奥様、なぜ大切な肉をみな埋めようとしますか。」
「それが痛んでいるからだ。」
「それならば、そうだとわかっていて、なぜたくさんのお金を出して痛んだ肉を買って来いと言いましたか。」
「コップン、万一、他の人がその肉を知らないで買って食べたらどうなる。そして、その肉を捨てなければならない肉屋の店主はどうなるか。暮らしが楽でないのが明らかな肉屋の店主が、その多くの肉を捨てることになると損害が並大抵の大きさではないのではないか。そして、心もまたどんなに痛むだろうか。だから、私が全部買って埋めようとするのだ。」