伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ47

2018-06-04 10:54:14 | ジャコシカ・・・小説
 あの汽車に乗る者は光と闇の点滅の中で煤(すす)臭い空気にむせながら、変な所に引きこまれ、迷いこ

んでいくのを感じるのだという。

 今度はそのトンネルの道で途中下車をすることになったのだ。

 何だか懐かしい所に帰って行くような気がした。


 煙にむせながら汽車はほんの束の間で二人をホームに下ろした。

 半分トンネルの中に残したホームの、直ぐ目の前には次のトンネルが口を開けている。

 駅舎も無く駅員もいないホームを降りると、そこから海までは急な坂ばかりだ。

 入江の家は秘境の隠れた家のただずまいだが、そこへ行くために降りる駅も、その場所に相応(ふさわ)し

い様子をしている。

 初めて下り立った人は誰でも、呆然となる。

 「いったいここは何処だ」

 そんな不安がこみ上げてくる。

 高志はいかにもぴったりの始まりに納得して、妙に気持ちが昂るのを覚えた。

 何だか子供の世界に戻って行くような気さえした。

 前日までに積もった雪は、鉄さんの予想通りまださして深くはなく、せいぜい踝(くるぶし)の上ほどで苦

にはならなかったが、坂の急勾配には泣かされた。

 何度も足を取られて尻もちを突かされ、時には崖下に墜落しそうになった。

 直にこの道は歩けなくなる。春までは狐や鹿の専用通路で、人は近付けないと言う鉄さんの言葉

には、素直に肯くことができた。

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