ジャコシカ148

2020-06-30 18:42:53 | ジャコシカ・・・小説

「ちよっと見せてくれ」

 

 高志はしゃがみこんで、彼女の紐付きシューズの足首に両手を当てた。

 

 静かに数か所を押し、支えたままそっと褄先を動かし、千恵の表情と声の反応を見てから言った。

 

 「折れてはいないが挫いていると思うので、出来るだけ動かさないで病院に行こう。

 

 まずはこの斜面から出よう」

 

 高志の動きは冷静で何だか場慣れている。

 

 

 彼は知恵を右脇下から抱え上げるように腕を入れ、反対側からはあやに肩を貸すように指示した。

 

 清子にはあやの後方から腰のベルトを支えさせた。

 

 こうして両脇から抱え上げられながら、千恵はじわじわと急な斜面を登った。

 

 誰か一人が足を滑らせれば、事態は更にめんどうなことになる。

 

 千恵は時折顔を引き吊らせたが、声は上げなかった。

 

 ようやく小径に戻った時は、皆がへたりこんで、暫くは荒げた呼吸ばかりで声も出ない。

 

 

 「さてと」

 

 ややあってようやく高志が、清子を見て言った。

 

 「先に行って鉄さんにこのことを報せて下さい。千恵さんを船で港に運び、病院に連れて行って

 

くれるよう話して下さい。

 

 そろそろ港に行く時間だけれど、間に合うでしょう。

 

 あやさんは千恵さんのリックを背負って下さい。僕とあやさんの荷はここに置いていきましょう」

 

 清子が一人で先発した後、高志は千恵に背を向けてしゃがんだ。

 

 「ボチボチ行こうか」


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