ジャコシカ36

2018-04-29 11:08:42 | ジャコシカ・・・小説
漁港に着いた時は、早くも粉雪が舞い始め、休憩小屋の前に立った時は、風まで吹き始めていた。

 海は早くも苛立ち、ちらちらと白波を見せ始めている。

 「こいつはまずいなあ」

 小屋の前で鉄さんは、思案顔でつぶやいた。

 その時、小屋の戸が開いて赤間猛が現れた。


 「船で帰るのは無理だなあ」

 いきなり駄目押しの一声をかけた。

 「やれやれまた雪中行軍か」

 鉄さんはうんざりしたように言った。

 「えっ、歩いて帰るのですか」

 「まさか、あんたの真似はやらんよ。汽車で入江の上の駅まで行って、そこから歩く。夏なら

15分もあれば着く。たいした距離じゃないが、坂だし雪もある。月が明ける頃には完全に歩けな

くなるが、今ならまだ大丈夫だ」

 言いながらも空を眺める鉄さんの顔には、不安がある。

 「今日は止めた方がいい。この空模様だと荒れる」

 猛も空を仰いで言った。

 「この後汽車は夕方まで無い。4時には陽が落ちるから、雪のあの坂道は危険だ」

 続けた後で、ぱっと笑い顔になった。

 「今夜はわしの所に泊まるといい。久しぶりに一杯やろう。かみさんも娘たちも喜ぶ。うちは賑

やかなのが好きなんだ。鉄さん暫く来ていないから丁度いい。皆喜ぶ。あんたもいいだろう」
『小説』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« ジャコシカ35 | トップ | 我が家のサクラ開花宣言 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ジャコシカ・・・小説」カテゴリの最新記事