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土佐いく子の教育つれづれ ~またあしたね〈51〉

2016年11月17日 | 土佐いく子の教育つれづれ
いま学童保育が熱い 研究集会に全国から5千人  

いま私は、愛知県で開催された全国学童保育研究集会を終えての帰りの車中だ。気持ちはまだ熱い。今年で51回目を迎えた全国集会、文字通り北から南まで全国から5千人の指導員や保護者が集まってきた。今日、子育てや教育にかかわる集会で、これだけの人が集まるのは他に例をみない。しかも、ここは集められたのではなく、自ら学びたいと主体的に身銭を切って参加してきているので活気が違う。

 私は、この集会の講師陣の一人で、毎年全国あちこちを飛びまわっているが、もうかれこれ14~15年にはなるだろうか。一つの分科会と言っても200人を超える参加者で、お借りした大学の講義室は満杯だ。一つ一つの話への共感度が高く、話す私も熱が入る。

 笑うし泣くし、自分の素を安心して出して、会場が響き合っている。そうなんだ。ここは自分の素が出せる場所だから、人が集うのだ。  

1964年に東京で第1回の大会が開催されて以来50年、学童保育発祥の地、大阪での昨年の大会は6500人にまで発展してきた。今や2万7千ヵ所で107万人の児童が利用していて、長年の運動で学童保育が制度化され、厚労省の後援までとれるようになっている。

■素の子どもと向き合う

 さて今年の分科会「学童保育と学校――保護者と指導員と教師のかかわり」。参加者はほとんどが指導員で、残念なことに学校の関係者が実に少ないのだ。

 ここでは、生の保護者の声が聞かれ、最も子どもたちが素顔をみせる学童での姿が見えるのだ。学校でよい子をし、親の前でもよい子をしてストレスをため込んできた子が、学童で爆発する。「死ね」と叫んで暴れる子を抱きかかえ、まさに格闘しながら、子らの心の声を聴きながら、まっすぐ子どもと向き合っている実践が語られる。

 管理化が進む学校で、子どもの本当の姿が見えにくくなった先生方に、この集会に来て、指導員さんの話を聴いてほしいと強く願っている。

 二つの0と二つの100(いじめ0、交通事故0、あいさつ100%、努力100%)を実践しようという学校ではついつい先生方も、しつけや管理に傾いてしまいがち。学童で見せる子どもの姿を語り話し合っても、子ども理解に困難があるという。

 保護者と学校の先生方と指導員の三者が、それぞれとらえた子どもの姿を出し合いながら、子どものSOSや悲鳴をききとり、どう寄り添えばいいかを学び合うことが、今日ほど求められている時はない。気づいたときはいじめや殺人、自殺にさせてはならないのだ。

 話は変わるが、今回の分科会でまた一つドラマが生まれた。私が、今の大学生が自分の生き辛さを聴いてほしいと切々と訴えてくる、そこからまた自分作りが始まっているという話をしたことに誘発されてか、一人の若い指導員がそっと私に手紙を届けに来た。無記名ならみんなに読んでくれてもいいとのメモ書き。さっそく紹介した。

■66人からのエール  

自分が好きになれなくて、人間への信頼が薄く、保護者とのトラブルでうまく関係が結べず、こんな自分が一層嫌いで人格失格のように思う、という内容だ。

 「彼に何か言葉を届けてあげようと思う方は、紙切れにでも書いて帰りにここへ」と促したら、なんと66通の手紙が届けられたのだ。本当に人間くさく、熱い仲間たちだ。  

「今日ここの場で、悩みが打ち明けられてよかったですよね。私も指導員2年目、今日、土佐先生の話を聞きながら、私も自分のことを見つめ直していました。何もかも自暴自棄になり、私はダメなんだと何度も落ち込んだ日々を振り返っていました。そんな時、私の話を聴いてくださってフォローしてくれた人がいました。とても気が楽になったのを覚えています。でも、今でも不安ですよ。土佐先生もおっしゃっていましたね。人間相手の仕事に自信があるなんて…と。だから学び続けてきたって!だから私も今日この会に来たのです。そしてやっぱり私に元気をくれたのは、あのやんちゃたちの可愛らしさです。ここがまず出発で、保護者対応はボチボチね。一人でかかえ込まないで!来年ここでまた会えたらいいですね」  

66人のエールが届くといいな。

(とさ・いくこ和歌山大学講師)
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