まいど、日本機関紙出版です。

〒553-0006 大阪市福島区吉野3-2-35
 TEL06-6465-1254 FAX06-6465-1255 

土佐いく子の教育つれづれ~またあしたね〈25〉

2013年09月19日 | 土佐いく子の教育つれづれ

青木一さんの生き方に学ぶ=教え子を戦場に送るまい

◎西の名物校長

 8月9~11日、大阪の地で、教育科学研究会の第52回全国大会が開催されました。公開講座「青木一さんの生き方に学ぶ」のパネリストの一人として参加したのです。
 
 東の「金沢嘉一」、西の「青木一」と言われ、歴史を動かした名物校長がいたのです。
 
 私は、その青木先生のご自宅で開かれていた雑誌『教育』の読者会に10年を超えて参加させていただいてきました。毎月、奥様の手料理のお寿司をいただきながら、研究者と現場の実践者が部屋いっぱいに集まり、熱心に学習していたのです。
 
 青木先生は、どんな意見、考えもゆったり黙って聞き入ってくださり、ときどきご自身の体験や、深い歴史や教育学に裏打ちされたエピソードなどを語ってくださったものでした。
 
 たとえば「こどもの日」はなぜ「こ」が平仮名になっているのかご存知でしょうか。「こどもの日」というのは、子どもの人間としての人権が宣言された「児童憲章」が作られた日なのです。戦前、子どもは天皇の「赤子」で、一人の人格を持った人間ではなかったのです。「赤子」ではなくなったので、「子」ではない「こ」を使ったということでした。目が覚めるような話でした。

◎先生の遺言

 青木先生は93歳で旅立たれました。そのときの遺言は「教育基本法を決して変えさせるでないぞ」でした。

 先生は戦前、軍国少年でした。若くして教壇に立たれたときも、教え子に死ぬことを教えた、にがにがしい過去を持っているのです。私の手は汚れている、その自覚から戦後の青木一の闘いが始まったのでした。

 あの勤務評定の闘いの嵐の最中、ただ一人、勤評不提出で処分を受けた校長でした。勤評は戦争への一里塚という考えで抵抗したのです。教科書裁判の証言も贖罪という考えであったようです。そして、地域と手をつなぎ、保護者と二人三脚のすばらしい学校作りをしてきたのです。

 今なぜ青木一なのか。

 それは、教え子を戦場に送るまい、と体をはって闘ってこられた青木先生が今この時代の教育の危機に警鐘を鳴らしているからなのです。教育基本法が改悪され、大阪の教育条例が出され、今、憲法九条を変えて徴兵制すら導入しようとする動きがあることに「死んでも死にきれない」という声が聞こえてきそうです。だからこそ、今、青木先生の生きてきた道から学びなおしたいと文献をいくつも読み直し、心を引き締めているのです。

 そして、私は青木先生から「教育は親とともにある」という教育思想を深く学びました。今日、「モンスターペアレント」などと言い、親との連携に困難を抱えた時代ですが、今の教育困難を突破する大きな鍵が親との連携にあるのです。

 学級PTAを大事にしなさい、学級通信を出し続けなさい、授業作りにも親が参加する実践を工夫しなさい、地域と手をつなげる学校作りを進めなさい、と教えていただきました。私は、自分の実践の根底にその教えを据えて取り組んできました。

 今、この実践は、作文の会の若い仲間たちに引き継がれ、青木先生の好きな言葉「たんぽぽ咲いて、たね十方にとぶ」の通りにあちこちで花が開いていますよ、と伝えたいです。

 若い先生を育てる学校「せんせの学校」の開催を呼びかけ、自ら校長になったのも青木先生でした。今、全国にそれが広がり、今年も「せんせの学校」は盛会です。

 「誰にもゆずれないという学識の深さを持った教師であれ」と無知であることを戒め、学び続けることを身をもって教えてくださったものでした。

 今日、現場には若い先生がいっぱいです。若い先生と一緒に学ぶ場を組織し、共に学び合っていける機会を一つでも作っていこうと私自身も考え、行動しているところです。

 青木先生の遺言は、もう一つありました。「なぁ、土佐さん、一人でも二人でも、あなたの話が聞きたい、学びたいという方があれば断らずに行きなさい。人数は何人以上だとか講師料はいくらだとか考えず、行ってあげなさい」ということでした。この教えを守り過ぎて、ちょっと引き受け過ぎかな。

 (とさ・いくこ 和歌山大学講師・大阪大学講師)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月18日(水)のつぶやき

2013年09月19日 | ツイッター

上脇博之先生の新刊『安倍改憲と「政治改革」』を校了し、印刷所へデータ送りました! ということで今日はもう引き揚げようかな。 pic.twitter.com/dU64LAHPA5


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする