対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

アブダクション異聞1

2018-06-18 | アブダクション
まず、アブダクションを定式化したときのパースの説明を読んでみよう。
(引用はじめ)『アブダクション』(米盛裕二)参照
わたくしがある部屋に入ってみると、そこにいろいろな違う種類の豆の入った多数の袋があったとする。テーブルの上には手一杯の白い豆がある。そこでちょっと注意してみると、それらの多数の袋のなかに白い豆だけが入った袋が一つあるのに気づく。わたくしはただちに、ありそうなこととして、あるいはおおよその見当として、この手一杯の白い豆はその袋からとり出されたものであろうと推論する。この種の推論は仮説をつくること(making a hypothesis)と呼ばれる。(CP:2.623)
(引用おわり)
部屋の中に、いろいろな違う種類の豆の入った多数の袋があり、テーブルの上には手一杯の白い豆がある。これが推論前にわかっていることである。しかし、袋の中身も、どの袋からとり出されたのかもわからない。不確定なことばかりだが、白い豆の由来を考えるために、パースは1「白い豆だけが入った袋があること」と2「白い豆が1つの袋からとり出されたこと」の2つに可能性を絞る。
パースは、白い豆だけが入った袋が1つあるのに気づき、テーブルの上の白い豆はその袋からとり出されたものだろうと推論する。
すなわち、パースはまず、1「白い豆だけが入った袋があること」に着目する。「多数の袋のなかに白い豆だけが入った袋が一つあるのに気づく」。そして、これを推論の前提として組み入れて(1は大前提とし、テーブル上の白い豆は小前提とする)、そして2「白い豆がその袋からとり出されたこと」を結論として推論する。

(1)この袋の豆はすべて白い(大前提・規則)、
(2)これらの豆は白い(結論・結果)、         
(3)ゆえに、これらの豆はこの袋の豆である(小前提・事例)。

下線の上が推論の前提(大前提と小前提)、下が結論である。命題の後の()内は演繹での位置づけである。パースのアブダクションは演繹での大前提(規則)と結論(結果)から小前提(事例)を導きだす推論になっている。

次に、このパースの設定している部屋の説明から、パースとは違ったアブダクションの可能性を探ってみよう。

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