染織工房きはだや 「店主の独り言」

きはだや店主が今日の出来事を語る。喚く。話す。切る。
でも日記は苦手。
皆様の気軽なコメントをお待ちしています。

鈴木さんの事。

2011年12月31日 | 店主の一日
今日は鈴木さんのところに年末の挨拶にいきました。
10年位前のきはだやをご存知の方ならもしからしたら、知っているかもしれません。
僕も何度か鈴木さんに糸取りの実演をしてもらって一緒に催事に出た事があります。もう80歳くらいでしょうか?

僕の知る限りでは随分減ってしまった「昔の十日町のおばあちゃん」って感じの人です。
春は山菜採り、夏から秋は農業、冬は農業で採れたものの加工。いつも働いています。そして暖かい。
ある時は漬け物を作り、ある時は餅をつき、ある時はこんにゃくを作り、何でもできます。自給自足なんじゃないかと思う程です。まあ、ご子息夫妻と高校生になるお孫さんがいらっしゃるので、そんな事はないのですが。あはは。
本当に暖かな人柄で、鈴木さんの人柄に引かれて年に二三回十日町にお越しになるきはだやのお客様もいる程です。

今日はご家族は留守で、一人で白菜を漬けていました。僕が行くといつも持て成してくださいます。
今日も「あがらっしゃい、あがらっしゃい」と言いますが、暮れも迫っているので遠慮しました。
するとひどく残念そうな顔をしてあれや、これやと持たせてくださいます。
さっきの白菜漬けや、水にもどしたゼンマイ。~きっと、鈴木さんがお正月のごちそう用に戻したのではないかと思うのですが。。  あまり、その辺に頓着しないのも鈴木さんです。

三年程前に病気をされてから「忘れっぽくなって、言葉が出なくなった。」とぼやきながら漬け物樽の石をどかしたりしながらあれやこれやと袋に積めてくださいます。
挨拶に持って来た手荷物よりもずっと多いお土産をいただき恐縮するばかりです。
そんな僕に構いもしないで「ああ、そうそう」と玄関を出て軒先の雪を掘りだしました。そこからは袋に入ったお餅が出てきました。
「冷蔵庫に入れておくとダメんなるども、雪の中だけば春まで大丈夫なんだ。不思議だね。」と言いながら、真っ白なお餅を持たせてくれます。

鈴木さんの様を見ていると、僕が子供の頃の十日町の生活を思いだします。リンゴの木箱を雪の中に保存したり、凍る様な寒さの水屋にある漬け物樽から石をどけて、ぬか漬けを取り出す事。芽がでたじゃがいも。身欠き鰊。

帰ろうと車に乗り込んで、年末の挨拶をすると、「寄ってくれたのが何よりのごっつお」とにこにこ笑います。
実に元気なのですが、少し痩せられた様で、体重は僕の半分程。
小屋根の雪を降ろしたので、背丈程もある雪の脇でにこにこと、そして慎ましやかに笑いながら手を振る鈴木さんがいる景色は、なんだか涙が出そうになるくらい美しい情景でした。

文章で伝えるのは難しいですね。でも、鈴木さんの笑い顔を見たら書かずにいられませんでした。
まだ、年賀状も書いてないや。やれやれ。
写真に撮りたいけど、鈴木さんって写真、嫌いなんですよね。。
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