クマンバチが道でぶんぶんいっている。
アスファルトに少し体液が出ている。
飛べないらしい。
草はらに移しても、草の海を上り下りして無駄に動いている。
じっとして体力を回復させたらどうかと思うが、虫は人と違うのだ。
スギナのとがった葉っぱの先に水滴がついている。
王冠の突起みたいに並んでいる。
水滴がついてるスギナとついてないスギナがある。
つーことは、外からついた水滴じゃなくて、内から出てきた水滴ってことか。
なめてみたら甘くも苦くもなかった。
虫もこういう水滴を飲むのかなあ。
クマンバチは草の陰で少しおとなしくしていたかと思うと、飛ぼうとして翅をブーンとうならせた。
飛べない。
そして勢い込んで草をのぼると、用水路に落下してあっという間に流されていった。
幅20センチほどの水路は田植えの水で勢いよく流れていたから、葉っぱを持って走ってみたけどてんで無理だった。
サヨナラ ハッチ。
スギナの水滴は、水孔という、植物の排水組織からでたオシッコだった。
ある種の植物は、余分な水分を葉っぱの先の穴から排出するのだそうだ。
知らなかったな、きれいなもんだな。
考えてみればこの草の何者であるかをわたしはほとんど知らないわけで、
それはあらゆることに対してもいえるわけで。
草一本にも知らない宇宙があるなんて、あゝあるなんて。