ひさしぶりのツレの物語。
未掲載原稿を見つけたので2回に分けて載せてみる。
「もうやめたい…これは永遠に続く罰ゲームだ。
だが、自ら足を踏み入れた以上、己れの力で抜け出さない限り、この地獄の様な状態は変わらない。
何とかしなくては… 時間ばかりが過ぎていく… アァ、ダレカタスケテ…」
その日、俺は二日ぶりに学校にきた。
風邪をひいて休んでいたのだ。
大切な一人息子だ。
大事をとって二日間休まされたのだ。
バアチャンと一緒に観てた昼メロの続きが気にはなったが、勉強のことが気掛かりで弱った体にムチ打ち登校してきたのだ。
俺は頭と顔は良いが体が弱い。
だからこそ、人々の悲しみを理解し陰日向にいろいろと気遣ってきた。
…御仏の分身と自負してきたのだ。
だが、そんな慈愛溢れる心の俺に、
「やっと出てきたか。今日からお前がオニな♪」
容赦ない言葉が待っていた。
…ハァ?って何でェ?
…思い出した。
俺が学校を休む前のオニはSだった。
元々、気持ちの弱いSは、かれこれ二週間ほどオニをやり続けて神経衰弱気味だった。
実際に泣きながら十数えるSは、憐れとしか思えなかった。
そこで救いの手を差し出すべく、俺はわざと最初に見つかってやった。
その上、現状からの脱出の知恵を授けてやったのだ。
という訳で、俺がオニだということになっていた。
だが、何かおかしい…
禍々しいニオイが…
…今さら、どうこう言っても始まらない。
挑戦は断固受けて立たねばなるまい!
小学生でも高学年ともなれば、鬼ごっこも危険な遊びに進化する。
基本的なルール意外はかなり先鋭化されるため、恣意的な解釈が入り込む余地が多い。
問題点の判断を自分に有利にする場合は、過半数の参加者の同意を得なければならない。
数は力である。
ルールは簡単だ。
先生が退出した瞬間にオニが十まで数え始めスタート。
その間に隠れ、次の授業開始の鐘の音でタイムアップ。
その繰り返しだ。
「まぁだだよ」は不可。
一見、オニ有利だが、そうでもない。
追い詰めてもチャイムが鳴ったらその場は終わりで、また最初からスタートしなくってはならない。
「○○見っけ!」と言ったところで、オニごときのいい分を信じる者などいない。
証人となる有力者の証言が必要となるのだ。
政治力なくして楽しくは遊べない。
一番最初に見つかった者には議決権は無い。
「アイトン!」という、オニがタッチされゲームがリセットされるのを祈るしかない。
その望が叶わなかったら、次のオニとして頑張るしかないのだ。
自らがオニとなった場合、そのあまりの苛酷さに誰しも尻込みした。 つづく
未掲載原稿を見つけたので2回に分けて載せてみる。
「もうやめたい…これは永遠に続く罰ゲームだ。
だが、自ら足を踏み入れた以上、己れの力で抜け出さない限り、この地獄の様な状態は変わらない。
何とかしなくては… 時間ばかりが過ぎていく… アァ、ダレカタスケテ…」
その日、俺は二日ぶりに学校にきた。
風邪をひいて休んでいたのだ。
大切な一人息子だ。
大事をとって二日間休まされたのだ。
バアチャンと一緒に観てた昼メロの続きが気にはなったが、勉強のことが気掛かりで弱った体にムチ打ち登校してきたのだ。
俺は頭と顔は良いが体が弱い。
だからこそ、人々の悲しみを理解し陰日向にいろいろと気遣ってきた。
…御仏の分身と自負してきたのだ。
だが、そんな慈愛溢れる心の俺に、
「やっと出てきたか。今日からお前がオニな♪」
容赦ない言葉が待っていた。
…ハァ?って何でェ?
…思い出した。
俺が学校を休む前のオニはSだった。
元々、気持ちの弱いSは、かれこれ二週間ほどオニをやり続けて神経衰弱気味だった。
実際に泣きながら十数えるSは、憐れとしか思えなかった。
そこで救いの手を差し出すべく、俺はわざと最初に見つかってやった。
その上、現状からの脱出の知恵を授けてやったのだ。
という訳で、俺がオニだということになっていた。
だが、何かおかしい…
禍々しいニオイが…
…今さら、どうこう言っても始まらない。
挑戦は断固受けて立たねばなるまい!
小学生でも高学年ともなれば、鬼ごっこも危険な遊びに進化する。
基本的なルール意外はかなり先鋭化されるため、恣意的な解釈が入り込む余地が多い。
問題点の判断を自分に有利にする場合は、過半数の参加者の同意を得なければならない。
数は力である。
ルールは簡単だ。
先生が退出した瞬間にオニが十まで数え始めスタート。
その間に隠れ、次の授業開始の鐘の音でタイムアップ。
その繰り返しだ。
「まぁだだよ」は不可。
一見、オニ有利だが、そうでもない。
追い詰めてもチャイムが鳴ったらその場は終わりで、また最初からスタートしなくってはならない。
「○○見っけ!」と言ったところで、オニごときのいい分を信じる者などいない。
証人となる有力者の証言が必要となるのだ。
政治力なくして楽しくは遊べない。
一番最初に見つかった者には議決権は無い。
「アイトン!」という、オニがタッチされゲームがリセットされるのを祈るしかない。
その望が叶わなかったら、次のオニとして頑張るしかないのだ。
自らがオニとなった場合、そのあまりの苛酷さに誰しも尻込みした。 つづく
書いたのは去年の秋だった。
メール13回分の原稿。
よく書いたよね。