恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

4.恋の妖精

2006年05月19日 | 幻の恋
 とても大きいしっかりとした木がポツンと真ん中にある。樹齢何年だろうか。千年くらい経っているのではないだろうか。
 木を囲むように美しい湖があった。辺りは、薄い霧がモヤッとかかっていて、神秘的にボンヤリと輝いていた。
 私がいつものように木にぶら下がっているブランコに乗っていると、白いドレスを着た小学生くらいの女の子がスキップしながら近寄ってきた。
 まるで踊りを楽しむかのようだった。
 「また、ふられたの?」私が現実の世界で女の子から振られた時に必ずここに来るので、女の子はよく知っているのだ。
 「いつもの事だよ。」私は深いため息をつくと今度の恋について話した。
 「仕事場の女の子でさ。告白したら、好きな人がいるから駄目だって言われたんだ。」
 「それは、しょうがないわね。私だったら付き合ってもいいけどな。」女の子は、照れて無邪気に笑った。
 「そんな事言っても、君はまだ子供だし、ここは架空の世界だろ。」
 「架空の世界だと思ってるの?困った男の子ね。」と女の子は、大人のような口調で言った後に、呪文みたいな言葉を唱えて、大人の女性に変化した。
 「これで分かった?あなたこういう女性が好きなのね。」目がクリッとして、セミロングの茶髪で、スタイルがいい女の人が目の前にいた。
 まさに私のタイプだった。
 「すごい。」女の子だと分かっているのにドキドキと胸が高鳴っていた。二人でブランコに乗って、将来の事について語った。
 湖では、白い珍しい鳥が飛んでいた。どうやらここは白い色しか駄目なのだろうか。
 「もうそろそろお別れね。変身の時間が決まっているの。」
 「そんな。もう少し一緒にいたい。」
 「規則は規則だから。」
 「とても残念だ。」私が落ち込んでいると、彼女がホッペにキスをした。母親のような温かいキスだった。キスをするにつれて段々と大人の女性から女の子に戻っていった。
 「どうだった?」小さくなった女の子が笑って聞いてきた。
 「よかったよ。ありがとう。」
 「いいえどういたしまして。えへへ。」と笑うと、ブランコに乗って、女の子は静かに歌を口ずさんでいた。綺麗な歌声だった。小鳥のさえずりの様な感じだった。
 私はもう少し、この夢の中にいたいと思うが、どうやら目覚めてしまうようだ。上の方から光が差し込んで来た。
 「また来るよ。」女の子に言うと、ふわっと体が宙に浮いていた。
 「恋が早く実るといいね。」
 「ありがとう。今度こそは、恋を掴むよ。」
 「ずっと見守ってるから。安心して。」女の子が悲しそうな顔をして見送っていた。私は、ベッドの上で目が覚めて、涙が一筋流れていた。決まって同じ夢を見る。あれは夢の世界なのだろうか。ひょっとしたらこちら側が夢の世界なのかもしれない。顔をつねると痛くて涙が少し出た。
 「今度こそ恋を掴んでみせるぞ」大声で叫ぶとベッドの上から転げ落ちた。


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