恋愛ブログ

哀しい事があっても辛い事があってもそれでも人は出会っていく。
出会いの数だけドラマがある。一日一話愛の短編物語。

11.ラーメン屋

2019年11月05日 | 家族
 ラーメン屋の店内は、天井や壁紙は油で色あせ、無造作に置かれたストーブは、壊れてるのか、ウィンウィンと変な音が鳴っている。真ん中に汗まみれの店主が競馬新聞を広げて座って、貧乏ゆすりをしていた。
 親父と入ると、「いらっしゃいませ。」としわがれた声で競馬新聞をたたんで、横に置いた。
 古びたカウンターがあり、席に着くと、壁に貼られている油がついたメニュー表が一枚ずつ目につく。印刷してある字なのか、自分で書いてある字なのか薄くなってて、見づらい。
 左からラーメン、チャーハン、ビールとおにぎりと見ていくと、トイレの隣には本棚があり、こち亀が一巻から十三巻くらいまであり、あとは飛び飛びの巻があった。その中には北斗の拳や隣の凡人組などのコアな漫画本が並べられている。
 親父と横に並んで、いつものラーメンとチャーハンを頼んだ。
 店主がラーメンを作り始める。
 私がこち亀の13巻を取り、読み始める。両さんと部長とのやり取りが面白い。
 なぜかこのラーメン屋と両さんの世界感が一緒のような気がした。
 店主が「ハイお待ちどう。」とカウンターの上にラーメンとチャーハンを置いた。見た感じおいしそうだった。ツンと豚骨の香りが漂った。親父も割り箸を取り、ラーメンを食べ始める。
 親父とこうやってラーメンを食べるのは何年ぶりだろう。
 10年ぶりか。喧嘩して、家を出てからそんなに時間が経ったのか。白髪が増え、おでこが広くなってきている。
 隣の親父が歳とって見えてきた。
 親父と店内を見ていると、親父がラーメンを勢いよく食べて、蒸せている。
 時間の流れは、この店と同じなのかもしれない。
 無口な親父が「こしょう入れるか?」と聞いてきた。
 「そうだな。」と自分のラーメンに入れる。
 私も勢いよく食べたら蒸せてしまった。
 支払いは、自分がするといったが、頑固な親父が支払った。
 ラーメン屋の暖簾を出ていくと、ひんやりとした風が通り過ぎた。
 「もうすぐ師走か。」とため息に似た言葉を親父がぽつりと呟いた。
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