黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ』池上永一(角川書店)

2011-11-20 | 読了本(小説、エッセイ等)
旱魃により小禄間切が間切倒(財政破綻)したという。そんな村再建に乗り出してきた下知役・伊舎堂里之親雲上は、村人たちが怠け者だと決め付けて苦役を課し、あらゆる音曲や雨乞いの祈祷さえも許さない。
そんな中、伊舎堂の番所に火が放たれ、捜査に乗り出すことになった筑佐次の武太。やがて人々の尊敬を集める、屋良座ノロが自分が犯人だと名乗り出て裁かれ、流罪に。だが、その一件が聞得大君加那志の耳に入り……“第一夜 間切倒”、
真壁按司から触れが出され、王宮に献上する菓子器と菓子のコンテストが催されることになり、料理自慢のをなり宿の三姉妹も若狭町村の漆器職人たちと組み、張り切る。
長女の鍋は、師匠の松金と組み、甑菓子を堆錦細工の東道盆に、次女の竃は、松金の弟子・思嘉留銘と焼き菓子と螺鈿細工の器で勝負を賭ける。だが三女の甕や新米の職人・恩亀は、雑用に追われて、時間もなければ材料もなく……“第二夜 職人の意地”、
雨の夜。をなり宿に、ウフスーコーの法要の御膳料理を注文する、士族らしき身なりの女が現われた。だが姉妹が作った料理は、彼女に重箱とともに盗まれてしまう。武太はその犯人を捕まえるべく、再び現われた女に罠を仕掛けることに。
またしても重箱と消えた彼女は、実は幽霊。仕掛けた糸を辿ったところ、女は六年前に亡くなった屋良家のマムンといい、彼女の息子・若松が里子に出された先で虐げられていて、ひもじい思いをしているのを助けるための盗みだったと知り……“第三夜 雨後の子守唄”、
清国から輸入している蛇皮の横流しについて調べていた武太。屋良座当ヤーが怪しいとの情報を得るも、その後見人である有力者・牧志按司の横やりもあって、捜査は打ち切りに。
それでもあきらめられない武太は、魔加那に頼み込み、楽師として牧志按司の屋敷に潜入することに……“第四夜 那覇ヌ市”、
風水に基づいて拓かれたはずの比嘉盛村だったが、村が衰退しているという。
久米村の神山里之子親雲上と名乗る風水師は、をなり宿で出会った村人に頼まれ、村の風水を見ることに。
どうやら清国で風水を学んだ風水師が、土地を観ずにそのまま琉球に持ち込んだために齟齬が生じているのだと判明するも、神山が偽風水師だという訴えが出され……“第五夜 琉球の風水師”、
王府の御用物座の役人である真境名親雲上は、首里天加那志に献上するための極上の芭蕉布を探していた。
そんな中、末吉の森に優れた織手がいると聞いた真境名は、そこで、織物のすべての作業をひとりでこなす若い娘・布里に出会う。次第に惹かれていくふたりだったが……“第六夜 芭蕉布に織られた恋”を収録。

続編。前作から一年くらいは経っていて、武太はちょっと成長した…かな?
ほとんどの話が、大岡裁き並にいい感じに収まっている中、芭蕉布~だけが何とも切ない…;
前回気になっていた黒マンサージの正体は今回も謎ですが、どうやら寧温は知っている様子(逆もまた)。……とりあえず、『テンペスト』を早く読まねば(笑)。

<11/11/20>

『まないた手帖』山本ふみこ(毎日新聞社)

2011-11-19 | 読了本(小説、エッセイ等)
空に浮かぶ雲をみて釜飯を思い浮かべたり、たまたま耳に入った声から海老チリがつくりたくなったり。あわて慣れているが台所ではあわてないようにと自分を戒める。訪ねてきてくれた材料で献立を決めたり…等、台所での出来事の他、日々のあれこれ、季節のうつろいの中での食や、家族や友人、周囲の人々とのエピソードを綴るエッセイ集。

毎日新聞で連載されているエッセイをまとめたものだとか(うちは違う新聞なので、初見なのですが)。
ちょっとほっこりする感じのエッセイですね~。
巻末に乾物を使ったレシピをイラスト入りで解説した『わたしの料理ノート<乾物篇>』を収録されていて、あれこれ試したくなります(笑)。

<11/11/19>

『あつあつを召し上がれ』小川糸(新潮社)

2011-11-18 | 読了本(小説、エッセイ等)
認知症になり、はなちゃんに戻ってしまったバーバ。
バーバが住んでいた団地の近くのアパートに引越したマユとママは、通って世話をしていたが、無理がたたってママが倒れてしまったことから、バーバはホームに入居した。しかしバーバは何も食べようとせず、無反応。
そんなある日、「ふ」という音を漏らしたところから、それが富士山だと推測したマユ。彼女が求めているのは、かつて富士山のようだと形容したかき氷だと思い当たり……『バーバのかき氷』、
中華街で一番汚い店だという店に、恋人に案内された私。
そこは、彼が幼い頃から通っていた、馴染みの店であるという。食にうるさかった彼の父がこよなく愛した、ぶたばら飯を一緒に堪能した後、ある話を切り出され……『親父のぶたばら飯』、
三十代最後の一日を迎える私は、籍は入れなかったものの長く付き合っていた山下と別れることに。
そんなことになる前に予約した奥能登への旅行に一緒に出かけ、松茸を食べる……『さよなら松茸』、
まだ幼い頃に亡くなった、母・秋子から味噌汁の味を受け継いだ呼春。
以来二十年、父とふたりで仲良く暮らしてきたが、呼春は嫁ぐことになって……『こーちゃんのおみそ汁』、
“私達の記念日”だといい、懐かしい、思い出のパーラーで食事をする老婦人。彼女は無口な夫・ショー造さんに絶えず話しかけ、思い出を語る。好きだった“ハートコロリット”を注文するけれど……『いとしのハートコロリット』、
形ばかりの妻子と別居し、愛人・ポルクと同棲中の男。心中でもするかと思い立ち、男が生まれたパリにやって来たふたり。餓死を試みる前に、最後の晩餐をすることに……『ポルクの晩餐』、
母から電話があり、父の四十九日に一緒にご飯を食べようと呼び出された由里。
彼が何より大好きだったきりたんぽを、同じように作ってみるも、何故かおかしな味になってしまい……『季節はずれのきりたんぽ』の7編収録。

食べることと生きることの関わりを描いた短編集。
ハッピーエンドもあるけれど、何だかどれも切なさが漂う作品…。

<11/11/17,18>

『童話を失くした明時に 薬屋探偵怪奇譚』高里椎奈(講談社)

2011-11-16 | 読了本(小説、エッセイ等)
横須賀で探偵事務所を営む、鬼鶫航の元に、ひとりの女性・戸奈瀬芽衣子が依頼に訪れた。
依頼内容は、祖父・陽一朗が遺したという古い本について。以前見た時には、子供も楽しめるお伽話だったはずが、地獄や悪魔の物語に内容が書き替わっていたという。実は祖父に恨まれていたのではないかと、思い悩んでいるというのだった。
鬼鶫の友人で、探偵助手の佐々稀一は、その事件に怪異が絡んでいるらしいことから、鬼鶫に内緒で、深山木薬店にその依頼を持ち込んだ。
甥と偽り秋を同道した佐々と、鬼鶫は、新幹線で彼女が住む新潟へ。
その車内で知り合った車内販売の女性・遠藤星晴が、芽衣子の従姉妹で、彼らの迎えだった。
かくしてやってきた、旧家・戸奈瀬家では早速怪異が起き、芽衣子が動揺する中、鬼鶫は秋をライバルと思い込み、勝負を挑む。
早速、陽一朗の周辺について調査をはじめた彼らは……

シリーズ第二章・第五弾…ですが、雰囲気は初期っぽい?と思ったら、番外編だったようです。
新潟が舞台ということもあって、個人的に、どうもその辺に意識が行き過ぎ(新米に、イタリアンにへぎそば…/笑)。秋たちが食べてたイタリアンは、多分フレンドの方ですね(笑)。
今回、雰囲気探偵(=鬼鶫/笑)たちは、今後も登場するのかなぁ。

<11/11/15,16>

『マイマイとナイナイ』皆川博子/宇野亜喜良(岩崎書店)

2011-11-15 | 読了本(小説、エッセイ等)
おんなのこ・マイマイは、かあさんにもとうさんにもみえない、ちいさいちいさいおとうと・ナイナイをみつけ、くるみのからのなかにいれた。
そんなあるひ、おおきなもりにはなをつみにいったマイマイは、はしってきたしろいうまにけられ、みぎのめがこわれてしまう。
かわりに、ナイナイのはいったくるみをいれたマイマイ。
まぶたをひらくとくるみのからもひらく。マイマイがねむっているとき、ナイナイがそっとからをあけると、へやのなかにはよるのゆめがひろがっていた……

皆川さんと宇野さんの豪華なコンビが、妖しく不思議な世界感を表現されていて素敵♪
……ちいさい子が読んだら、ちょっとトラウマになっちゃうかもですが(笑)。
<怪談えほん>という叢書で、他にもいろんな作家さん(普段大人向けに書かれてる)が参加される模様。続刊も気になります~。

<11/11/15>

『東京ピーターパン』小路幸也(角川書店)

2011-11-14 | 読了本(小説、エッセイ等)
伝説的存在の天才ギタリストでありながら、現在は家族を捨て、ホームレス生活をしている杉田辰吾(シンゴ)60歳。
彼のファンで、かつてドラムやってた過去を持つ交番勤務の警察官・吉川宏は、ささやかながらもそんなシンゴの手助けをしている。
印刷会社で働く社員・石井和正は、高校時代仲間とバンドを組みボーカルをしていたが、夢を追わず、堅実な道を歩んでいた。
メジャーを目指すも、組んでいたバンド<キネリック・ジャンクション>のボーカル・キネが失踪し、あえなく解散。事務所社長が経営するつけ麺屋でバイトしながら、今後について模索するベーシスト・小嶋隆志(コジー)。
友人からギターのうまい老人の噂を聞いた小嶋は、彼がシンゴだと知り、追いかけて公園へ。そこで思いがけない事態に遭遇することに……
さらに、土蔵に引きこもっている少年・聖矢や、聖矢の姉・茉莉もそこに関わることに……

それぞれ音楽に何等かの形で関わっている老若男女の人々が、ある事件がきっかけで一夜限りのバンドを組むお話。
奇跡的な出会いにより生まれた音楽、というのは、素敵なのですが、きっかけになる事件の扱いが微妙なので、ちょっとスッキリしないかなぁ;という気が。
もっと違うきっかけだったら、良かったような…;

<11/11/14>