黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『残月 みをつくし料理帖』高田郁(角川春樹事務所)

2013-07-20 | 読了本(小説、エッセイ等)
吉原の大火で、つる家の助っ人として共に働いていた料理人・又次を亡くし、一月ほど経った水無月。
そして三方よしの日。つる家にひとりの客が訪れる。
火事に巻き込まれ、あさひ太夫にかばわれて助かった翁屋の上客・摂津屋助五郎が澪を訪ねてきたのだった。摂津屋は、澪にあさひ太夫の無事を伝え、ふたりの関係と、又次が最期に言った言葉の真意を尋ねる。しかし、澪は二人を慮り、そのどちらにも答えずにいた。
その後、又次の初盆を来月に控え、店主の種市はみんなで悲しみをきちんと分かち合い、次に進めるようにとふさわしい膳を澪に作ってほしいと頼む……“残月  かのひとの面影膳”、
仕事の合間に、ふきに料理を教えはじめている澪。
そんな中、種市がふくべを買いこんで来て、それは干瓢になるのだと教える。やがて干瓢は干されて簾のようになり、店にやってくる人々の食欲を誘った。
ある日、細工物しながらを嘉兵衛を思い出す澪。鶴と梅の花の剥き物を店に飾ったところへ、かつて翁屋の元新造・菊乃であり、今では呉服商・藤代屋に身請けされて幸せに暮らしているしのぶが、つる家にやってきた。
そこに飾られている剥き物を見た藤代屋は、二人の婚礼の祝いの際に釣り忍売りから似たものを貰ったことがあると聞く。その人物が、行方知れずの息子・佐兵衛だと確信した芳は激しく動揺する。
その後、しのぶに詳しい話を訊くと、佐兵衛は今では捨吉と名乗っているらしい。彼を説得して、彼岸までに芳に会いに行かせると約束したしのぶ。しかし……“彼岸まで  慰め海苔巻”、
伊佐三おりょう一家が、先の水害をきっかけとして親方に乞われて一緒に暮らすことになり、裏店を引っ越すという。見送りながら、いつまでも同じままでは居られないと呟く芳。
そんな中、澪は登龍楼の采女宗馬に呼び出される。吉原の火事で新店も焼け、板長が亡くなったことから
代わりに澪を引き抜こうと考えているのだった。それまでの嫌がらせの数々を忘れ、自分の主張が通ることを疑わない采女に呆れる澪。そんな彼に対して、つい、自分が欲しいのならば四千両を用意するようにと啖呵を切ってしまう。
采女は四千両の価値があるか自分を納得させてみろと言い出し、澪は来月十八日に料理を作る約束をしてしまう。玉子を使うことを決めたものの、他の思案が浮かばず悩む澪。
ある日。源斉に頼まれて翁屋の寮に同行。火事以来、覇気がなく寮で静養中だというあさひ太夫の話を聞く。それぞれの思いから、晴れて再会とはいかなかったが、二人で話す機会が出来、野江を廓から助け出すという思いを新たにする。
彼女との再会をきっかけに、新たな玉子料理を思いついた澪は……“みくじは吉  麗し鼈甲珠”、
戯作者の清右衛門が種市に、澪とあさひ太夫の話をしたらしい。しばらく魂が抜けたようになった種市だったが、つる家から送り出す決意を固めたと澪に告げる。
そんな中、以前芳につきまとっていた旅籠よし房の房八が後添えを迎えることになったという話を聞き、その宴席での料理を頼まれた澪。房八は、坂村堂の父で一流料亭の一柳の主人・柳吾の竹馬の友。当然そちらに最初に依頼がいったのだが、仕出しはしないという店の方針により断られていたのだった。
その宴には、関係がこじれたままの柳吾と坂村堂が同席することになり、なんとか彼らの関係修復の手助けになればと、ある昆布料理を出すことを決める。
料理は柳吾も感心させ、宴も無事に終わったのだが、その後父子は言い合いに。激昂した柳吾は倒れてしまう。
先に、清右衛門の妻の看病をした折の話を聞いていた坂村堂は、芳に柳吾の看病を依頼することに……“寒中の麦  心ゆるす葛湯”、
長月二十二日。つる家に男の客が訪れた、りうがその相手をする。
流山の白味醂を使った料理が食べたいという彼は、よほど味醂が好きらしく、鰯の味醂干しを二人前注文する。豆小鉢に入っていた試作品は……“特別収録 秋麗の客”を収録。

シリーズ第八作。
これからの新たな展開に向けて、それまでのいろんな話が収束された感じの巻でした。それぞれの過去に決着が付き、前を向いて歩いていくような……それが最初に望んでいた幸福ではなかったけれど、それぞれにハッピーエンドかな。
さてこれからは、野江ちゃん絡みの話が中心になっていくのかな?

<13/7/19,20>