高知県では、観光立県を目指し、県外観光客を文字通り“おもてなし”する心で県の観光を盛り立てようというコンセプトのもとに県庁の観光部内に<おもてなし課>を発足した。
発足して一年。入庁三年目で、その課員となった掛水史貴は、他県のアイデアを踏襲して、<観光特使>という制度を取り入れることに。
それは、県出身の有名人たちを、観光特使に任命し、県の魅力をPRしてもらうというもの。クーポン券として使える名刺を作成し、彼らに配ってもらうのだ。
ところが、そんな特使の中のひとりである、人気作家・吉門喬介から連絡が入り、実効が薄い、民間感覚が欠如していると、厳しくダメ出しを食らった掛水。
公務員的思考に捕らわれている自らを反省しつつも、何とか努力を試みる掛水。
そんな中、吉門から、外部からフットワークの軽い、若い女性をスタッフとして雇うこと、そして<パンダ誘致論>を唱えた人物を探すようにとアドバイスを受ける。
パンダ誘致論とは、二十年前に、県内で市立動物園と県立動物園の新設計画の話が持ち上がったのに伴い、当時の観光部の職員・清遠和政が提案した計画。しかしそれは受け入れられず、閑職に追いやられた末、退職。現在は民宿を営みながら観光コンサルタントとして活躍しているという。
それを調べて資料をまとめてくれた、アルバイトの明神多紀の有能さに着目した掛水は、彼女を課のスタッフとして雇うことを決める。
早速、清遠に接触をはかった彼らだったが、娘の佐和は県庁に対して、激しい敵愾心を抱いており、合わせてもらえない上に、水を掛けられる始末。
その後、紆余曲折ありつつも、何とか清遠を引き込むことに成功。高知の自然に着目した企画をたてることになり……
高知県に実在する<おもてなし課>を舞台に展開する、観光&恋愛小説。
有川さん自身の経験が多分に盛り込まれてる様子(笑)。
巻末には、実在のおもてなし課の方たちとの対談も収録。
<11/4/20,21>