黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ちょちょら』畠中恵(新潮社)

2011-04-19 | 読了本(小説、エッセイ等)
文政六年。困窮にあえぐ弱小藩・多々良木藩の江戸留守居役を、兄の後を受け務めることになった、<平々々凡々々>と評される武士・間野新之介。
優秀だった兄・千太郎が自ら死を選んだ理由、そして新之介がほのかに思いを寄せていた千太郎の許嫁・入江千穂の一家…千穂の父・貞勝は、同じく留守居役だった…が藩を出た理由がわかるかもしれないと思ったからだった。
さて、その留守居役には、ふた通りある……藩主不在の折に藩を守る、身分の高い者がなる留守居役と、聞番とも呼ばれ、幕府や他藩の動向を探る、外交的な面を担う役目の、ほどほどの位置にある者がなる留守居役。新之介がこのたび任されたのは、もちろん後者だ。世間的には、藩の金で豪遊する迷惑な輩と思われているが、それは情報を得、またあらゆる面でいざというとき融通をきかせてもらうために、必要な接待であり、各方面への心付は欠かせないものであるという。
同程度の他藩の留守居役たちの組合に入れてもらい、久居藩留守居役・岩崎らに、留守居役としての心得などを厳しく教わる新之介。
そんな中、組合の会合のために訪れた茶屋で、千穂と再会。藩を出たのち父は亡くなり、病の母を抱えて仲居として働いているという彼女には、青戸屋という札差から妾話が出ているという。
一方、ひょんなことから、お手伝い普請の情報を手に入れた新之介。ただでさえ普請を受ける財力がないものを、今回はかなり大規模なものになるらしく、困った彼は皆を巻き込み一計を案じることに……

尊敬していた優秀な兄が亡くなり、代わって困窮に喘ぐ多々良木藩の江戸留守居役を継ぐことになった、<平々々凡々々>な新之介の奮闘記。これまで町人のお話を多く書かれてきた畠中さんの、初の武士モノかも?
最初はもっとほのぼのなお話かと思いきや、なかなかに厳しい留守居役の現実にちょっと切なくなったり;
兄ほどに、目に見える優秀さはないものの、柔軟な発想で困難に立ち向かう新之介の成長振りが良いですね♪
彼のその後も気になります~。

<11/4/19>