黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ばんば憑き』宮部みゆき(角川書店)

2011-04-05 | 読了本(小説、エッセイ等)
流行病のコロリで家族を喪ったおつぎは、住んでいた長屋の差配人に連れて行かれた、お救い小屋に身を寄せた。その小屋は材木問屋田屋の主・重蔵の出資による小屋。そこでの働きが認められ、おつぎは田屋に女中奉公することに。
それから一年たったある日。重蔵が、ある掛け軸を広げているのを目撃したおつぎ。そこに描かれていたのは、奇妙な壷と坊主。しかし同じ絵を見たはずの番頭の喜平には、坊主は見えなかったという……『坊主の壺』、
北六間堀町の剛衛門長屋に住む左次郎という隠居から、ある相談をされた岡っ引きの政五郎親分。
先の十三夜。彼のところに遊びにくる子供たちが、影踏みをして遊んでいた。その中の吉三という男の子が、誰もいないのに影だけが走っているのを見たという。左次郎自身も他にも二度ほど同じ体験をしたことがあったのだが、年の割りに世事に疎く、子供たちの納得いく説明ができないという。何かよい謂れを知らないか、知恵を拝借したいというのだ。
政五郎が調べたところによると、その長屋が建ったのは二年ほど前。ずっと空き地で、その前は薬種問屋の胆沢屋の別邸があったという土地。政五郎は、養い子である<おでこ>こと三太郎に、茂七親分から聞いた、胆沢屋の話を語らせる……『お文の影』、
上野新黒門町の醤油問屋近江屋の主人・善一は、朝ご飯の最中、突然親戚の政吉が死んだことを感じとり、そして次は自分の番だと言い出した。その後、家中大騒ぎになり、男衆総出で店の三番蔵に何かを閉じこめた様子。
しかし、善一の娘・お美代には誰も何も教えてくれず、不満な彼女。翌日、それを見たらしい同じ手習い所に通う太七を、八幡宮の前で問い詰めていると、どこからともなく謎の声が。それは、十年ほどまえに他所の土地から拾われてきた青年・竹兄こと竹次郎と同じ、きついお国言葉だが、しゃべっていたのは狛犬。竹兄に翻訳してもらうと……『博打眼』
亀沢町の手習所・深考塾の若師匠・青野利一郎は、彼の生徒である本所松坂町の紙問屋大之字屋の息子・信太郎のことで、番頭の久八から相談された…何と信太郎を殺して欲しいという。
五日前に店の前に突然現れた怪しい坊主・行然坊曰く、この家には討債鬼という財を食い尽くす魔物がついており、それが信太郎だという。店の主である信太郎の父・宗吾郎は、その話を真に受けてしまったらしい。
隠居している加登新左衛門の元に相談に行った利一郎は、「女を探せ」といわれ……『討債鬼』、
湯島天神下で小間物商伊勢屋を営む若夫婦、佐一郎とお志津。お志津は本家の娘で、佐一郎は格下の分家の次男で、養子になった後、婿になった。我儘なお志津とは連れ添って三年、仲はうまくいっていたのだが、子ができない。
跡取りが欲しい彼女の親に送り出され、箱根に湯治に出かけたふたりと、お目付け役の古参の下男・嘉吉。
その帰路、戸塚宿で雨のため足踏みをすることになった彼らは、混み合う宿でやむを得ず、老女との相部屋を引き受けることに。
すっかりへそを曲げたお志津が寝静まった後、新材木町の松井屋の隠居・松と名乗る老女の話を聞く佐一郎。
それは五十年前の昔話。庄屋の家に引き取られた孤児だった彼女は、気立ての良い庄屋の娘・八重付きの女中となった。やがて八重に許婚として富治郎が決まったが、豪農戸井家の娘・お由が彼に一方的に横恋慕して……『ばんば憑き』、
深川三間町の八兵衛長屋に父子で住む、<何でも屋>柳井源五郎右衛門は、七つになる娘の加奈から、よく化ける猫は嫌いか、と問われる。長屋にはタマという三毛猫が住み着いているが、そのタマが化け猫であるらしい。
驚きつつも加奈の願いを聞き入れた源五郎右衛門の元に、女の姿で現れたタマ。
彼女の頼み事とは、物の怪を一匹退治して欲しいというもの。元は古い木槌が変じた野槌だが、あるきっかけで人に害を為すようになってしまったことから、何とかして欲しいというのだった……『野槌の墓』の六編収録。

怪奇時代小説の短編集。基本、それぞれ単独の話ですが、『お文~』のおでこや政五郎、『討債鬼』の利一郎たちは他作品にも登場。
本物の怪たちも登場しますが、彼らの存在の方がむしろほのぼの。人間の怖さの方が際立っている気がします…;
個人的に、『博打眼』の狛犬がちょっとお気に入り(笑)。

<11/4/4,5>