黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『天使』須永朝彦(国書刊行会)

2010-08-20 | 読了本(小説、エッセイ等)
例年のごとく、同じ条件で新聞広告を出した“私”。ピアノを弾ける17~22歳の、チェンバロに興味のある青年。
面接の末、選んだ若者に、満月の夜チェンバロを演奏させ、八人の青年たちとともにそれを鑑賞の後……『契』、
三年前の晩秋に私の前に現れた“お前”。以降、乳母と私と三人暮らし。
小説家である私の書く物に興味を示さなかったが、やがて自ら論文やエッセーを発表し始める。世間で評判を得るが、年一度しか発表しない……『天使 Ⅰ』、
今朝、滝壺近くの淵に若い男の溺死体が二つ上がった。
それは昨夜近く、彼女の館の扉を叩いた二人。彼女は古装束の美しい女で……『ぬばたまの』、
ある日、突然美大生・百合男の目の前に現れた天使。美貌の恋人薔薇子をも放り出し、どんどん天使に夢中になる百合男。やがてその天使に爵(ジャック)と名付けて……『天使 Ⅱ』、
広間の壁間を占める数百年を経たらしい綴織画には、王子と騎士の友情が織り出されていた。
ヘルムートは、十八で初めてこの博物館を訪れて以来、、たびたび訪れては、その綴織画を描き写していたが……『R公の綴織画』、
華水橋近くの煙草屋に、この頃時々天使が現れるという話を耳にした彼。
煙草屋を訪れ、十日目ごとにゴールデンバットを買いに来ると聞き、その出現を待つことに……『天使 Ⅲ』、
何処とも知れぬ曠野に迷い込んでいた私。
チェンバロの音を聞いた後、霧が晴れて、東欧風の館が顕れ、そこには金髪碧眼の青年が。彼の話す言葉は日本語だが、ここはトランシルヴァニアでヘルベルト二世だと名乗り……『就眠儀式』、
私は今朝、弟を毒殺した。
弟は私の乳房に咲いた血紅色の罌粟の花を視てしまったから。そんな弟の腿の付け根には百合の蕾が生えていた。それは館に現れた庭師のせい……『木犀館殺人事件』、
アルプレヒト・フォン・R公爵。ハプスブルグ家の一員たる彼が、皇帝一族の血に繋がる五人の青年貴族に書簡を送った。ヘルベルト・フォン・クロロック公を玉座に戴くにあたり、ブダペストのホテルで会見を行うという……『神聖羅馬帝国』、
もしも背くようなことを仕出かした時には、どんな罰も受けると言った“お前”。
傲慢な美しい若者に過ぎなかったお前。やがて二人の間には刑罰の必要が生じ、そのしなやかな身体には鞭の痕が増えていった……『花刑』、
ヴァーミリオン・サンズのミニアチュールのようだと聞かされ、その町に来てみたものの、実際には貧相なつまらぬ場所だった。
大学講師として招かれた私は、館で一人暮らしはじめたが、そんな中で、<黒い森>という名のレストランを気にいり、常連となる。
そこは美青年の兄弟が営んでいたが、兄は廃人のようだった。
やがて私の前に、爵という青年が現れ……『森の彼方の地』、
僕は昨日まで彼の王子さまだった。昨夜、彼ははじめて僕を擁いた……『MON HOMME』、
ヘルムートの頭の中は、収穫祭の見世物小屋で見た蝙蝠男のことでいっぱいだった。毎日のように通っていたが、やがて我慢できなくなり、夜中に家を抜け出し小屋に忍び込んだが……『蝙蝠男』、
壬生笛子夫人は、演奏会にたびたび足を運ぶ。それは彼女が古典音楽愛好家だからでははなく、古典音楽若手演奏家愛好家だから。
やがてフルートを演奏する丘倉芳樹という青年に目をとめた彼女は、彼のパトロンとなったが……『笛吹童子』、
本の執筆のためにスペインにやってきた耀子。そこでマリオという美しい舞踊手に引きつけられるが……『光と影』、
大貴族の婦人の美しいドニャ・ソールと闘牛士エスカミリオの間柄は、セビリアでは勿論のこと各地で有名だった。
ドニャ・ソールには、アルフォンソという弟がいて……『エル・レリカリオ』、
従妹のジャンヌの話を聞き終えたジャン・ド・フラノワは、ルイ・ド・モンテスキューを討たせてほしいと願い出たが許されなかった。ジャンは同輩の小姓で無二の親友であったが、ジャンの両親が殺害された現場から飛び出したところを目撃されていた……『LES LILAS』、
十七歳で墺太利の首都維納に棲んでいた私。その頃、父が日本大使館を宰領していた為だ。
やがてヘルベルト・フォン・クロロック公爵という美青年に出会い、親しくなった私は、彼のトランシルヴァニアの領地へと誘われる。行きたいと願ったが父に許されず……『樅の木の下で』、
幼い頃、伯父から聞いたクロロック公爵の話に惹かれていた僕。
日本で暮らしていた独逸人のペーターが帰国するついでに、独逸に渡り、トランシルヴァニアへとやってきた。
そこでヘルベルトという青年に出会い……『ドナウ川の漣』、
エリザベートは、美しく幸せな娘で、湖を眺めるのが好きだった。そんな彼女には、異母姉ゾフィーがいたが、継母に苛められてばかりいた。
エリザベートはゾフィーに対して、すまないと思いながらも、つい一緒に責めたりしてしまうのだった……『白鳥の湖の方へ』、
ヘルムートは、貿易商のペーター叔父さんがクリスマスプレゼントにくれた、オセロットの置物に夢中になった……『誘惑』、
昔むかし、ババリアのさるお城に、エリザベートというたいそう美しいお姫さまが住んでいた。
ある時、若い詩人フィリップが彼女に聞かせた話…ハンガリーの奥地に、銀毛狼皮という何でも望みの叶う宝物がある…を聞いたエリザベートは、それが欲しくなり、探しにいってくれる勇士を募った。名乗り出たのは、エリザベートの従兄にあたるジークフリードだった。かくして旅に出た彼は……『銀毛狼皮』、
昔むかしババリアに王さまがいてその城には、珍しい動物たちが飼われていた。それらはペルシャの商人が連れてきたものだった。
ある日、いつものようにやって来た商人は、動物を連れておらず、緑色の小壜に入った<一角獣の泉>の水を差し出した。それを飲むと、自分の願う動物になることができるというのだが……『月光浴』を収録。

天使や吸血鬼、美青年等々のゴシック要素満載の掌編&短編集。
多分全集のほうで読んだものばかりですが、一応(笑)。
かなり耽美~な雰囲気。

<10/8/19,20>