黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『道徳という名の少年』桜庭一樹(角川書店)

2010-05-24 | 読了本(小説、エッセイ等)
町でいちばんの美女は、父親の知れない娘を立て続けに四人産んだ。母親ゆずりのうつくしい娘たちは、それぞれ「1」「2」「3」「悠久」と名付けられる。
だがその後母は黄色い目をして痩せこけた商人と恋に落ち、四人を置いて、町から出ていってしまった。娘たちは宮殿を模した娼館に身を寄せ、娼婦として暮らすようになり、高価な花束となった。
やがて四姉妹の前に、醜く老いた母が現れた…母にも姉たちにも似ていない、黄色い目の少年を連れて。病により肉塊の如き肢体となった彼女を治す為には、高価な真珠を飲ませなければならないという……『1、2、3、悠久!』、
母に似て美しく、そして父に似た黄色い目を持って生まれた少年・ジャングリン。その幼馴染である、雑貨屋の娘には生まれつき父親がおらず、ひそかにジャングリン・パパを慕い、自分をかわいがってくれるそのパパの腕を欲した。
やがて十五歳になったふたり。ジャングリンが戦地に招集され、肉塊と化していたジャングリン・ママは狂い、空襲の中、飛び出し亡くなった。
その後戦地から戻ったジャングリン。しかし彼は両手を無くしていた。雑貨屋の娘と結婚することになったのだが……『ジャングリン・パパの愛撫の手』、
黄色い目をして、薔薇のかんばせを持つ、国いちばんの歌手・ジャングリーナさん。
彼の母は彼を産んでまもなく、腕しかないお化けがやってきて、連れていってしまった為どこにもおらず、父に育てられた。十六まで父に抱きしめられて眠っていたが、十七にどの父を殺して町を出、国いちばんの都会へと向かった。
やがてちいさな国で人気歌手になったが、つめたいプラスチックの恋人を抱いて眠るばかりで……『プラスチックの恋人』、
ちいさな国では有名だったロックスターの一人息子である十六歳の少年・ジャンは戦場にいた。
女の子を好きになったことはなかったが、うつくしい愛の言葉で埋め尽くされたラヴ・レターばかりを書いていた……『僕の代わりに歌ってくれ』、
ミミとクリステルは十六になったばかり。いま病で死にかけているロックスター・ジャングリーナの親戚だという話を曾おばあさんから聞いたことがあるミミ。その言葉を証明するように彼女の目は黄色。
その話の真偽を確かめるべく、田舎町を出たふたりは彼の館へとやってきた……『地球で最後の日』の5編収録。

四姉妹の母から連なる血の系譜を描いた、連作短編集。ジャングリンが『道徳』という意味です。
『血』の物語という点では、紅朽葉家的でもありますが、背徳的で(タイトルに反して)不道徳な感じ。
造本も耽美で素敵です♪

<10/5/24>