ほそかわ・かずひこの BLOG

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インド20~ヒンドゥー教の家庭での五大供儀

2019-11-10 09:35:42 | 心と宗教
●家庭での五大供儀

 ヒンドゥー教徒は毎日、家庭で祭儀を行う。家庭での祭儀は『マヌ法典』に定められている。この法典は、家長に対して五大供儀(パンチャ・マハーヤジニャ)と呼ばれる供儀の執行を義務付けている。
 供儀の第一は、ヴェーダを読誦して神々を喜ばせること。第二は、日々祖霊に水を供え、適時に祖先の供養祭を行うこと。第三は、祭火に供物を投じる儀式(ホーマ)を行い、神々を礼拝すること。第四は、地面や水中に穀物を撒いて、生類や鬼神を供養すること。第五は、客人を心から饗応することである。

◆祖先崇拝
 五大供儀の一つに祖先に対する供養祭(ピトリ・ヤジニャ)がある。これは、明らかに祖先崇拝の祭りである。
 インドでは、父母や祖先の霊は、死後もあの世から自分たちを見守っていると考える。これに対し、子孫は、父祖の霊が飢えや渇きを感じないように尽くすことを義務とする。それゆえ、ヒンドゥー教徒の家庭では、毎朝、祖先の霊に水を供え、また時節に応じて祖先供養祭(シュラーッダ)を行う。供養祭では、米や豆の粉で作った団子を供えて霊を慰める。古来インドの家族形態を成す大家族の成員は、この祭儀に参加することで相互に結ばれている。
 森本達雄は、著書『ヒンドゥー教――インドの聖と俗』に、大意次のように書いている。ヒンドゥー教徒の家庭では、「家長が亡くなり、祖先供養を継承する男子がいなくなること」は、「非常に不吉なこととして恐れ、嫌がられる」。ヒンドゥー教徒の新婚夫婦の最大の願いは、「一日も早く、また一人でも多く男子をもうけ、なき祖先や、親兄弟を安心させることである」と。この点の考え方は、シナの儒教と共通する。日本でも同じ傾向がある。
 総じてインドの先祖供養の慣習は、神道・儒教の慣習とよく似ている。このことは、それが日本・シナにも共通する宗教文化の非常に古い層に根差すものであることを示している。その層の文化とは、インドで輪廻転生の思想が支配的になる前、他の社会と同様に行われていた原始的なアニミズムの文化である。

●水浴

 インドの都市や霊場の至るところには、タンクと呼ばれる四角形または長方形の貯水池がある。ヒンドゥー教徒は、タンクで身を清めてから神殿の中に参詣する。河川崇拝の中心になっているガンガーの川岸では、向こう岸に日の出を拝みながら沐浴できる場所が聖地となっている。人々は、ガート(沐浴場)に設けられた石の階段を下りて、川の水に浸る。それによって罪が清められると信じられている。
 こうした水浴は、神道における禊に通じるものである。古事記において、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)は、黄泉の国から戻ると、体についた穢れを祓うために、筑紫日向(つくしのひむか)の橘の小門之阿波岐原(おどのあわぎはら)で禊を行った。その禊によって伊弉諾尊の身体から、天照大神、素戔嗚尊(すさのをのみこと)、月読命の三神が生まれたとする。
 ユダヤ教にも、穢れを忌み嫌い、穢れを祓う清めの思想と儀礼がある。死体に接した者、月経や出産後の女性は、ミクベ(沐浴場)で首まで水につかって、身を清める。
 これらの宗教に共通するのは、物質的な汚れを洗い流す働きを持つ水には、抽象的な罪や穢れをも浄化する力があると考える信仰である。

●穢れ

 ヴェーダの宗教では、過失が悪とされていた。だが、ヒンドゥー教では、不浄が悪と考えられるようになった。ヒンドゥー教徒は、肉体を含む物質をすべて不浄とみなす傾向がある。なかでも忌み嫌うのは、死と血である。
 死を穢れとする観念は諸民族に広く見られるが、ヒンドゥー教ではその傾向が極めて強い。人が死んだ部屋は穢れた場所とされ、それが浄化されて元通りになるには何日、ときには何カ月も必要とされる。そのうえ、その部屋にある土器や食物はすべて捨てられる。
 血を穢れとする観念もまた多くの民族に見られるが、ヒンドゥー教では月経期の女性はひどく穢れているとされる。今日でもバラモンの保守的な家庭では、生理期間中の女性は家族と寝所を別にしたり、庭の片隅の小屋に筵を敷いて寝るといわれる。
 穢れの観念は、カースト制の根本にあるものである。この点については、生活の項目のカースト制のところに書く。

●大罪

 ヒンドゥー教において、大罪とされるのは、バラモンを殺すことと聖牛を殺すことである。バラモンは、祭官として祭儀を司る神聖な階級ゆえ、その殺害の罪は重い。ヴェーダには、牛を神聖視してその屠殺を禁じる思想は認められない。牛は、祭儀の際に犠牲にする動物の一種だった。だが、聖牛崇拝が形成されるようになると、その屠殺は大罪となった。

 次回に続く。

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