ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

デフレ脱却の経済学12~岩田規久男氏

2013-03-21 08:56:40 | 経済
 最終回。

●デフレは必ず脱却できる、そして日本は復興できる

 「デフレ脱却のメカニズム」について、岩田氏は、『日本銀行――デフレの番人』で次のように書いている。
 「日銀がインフレ目標の達成にコミットした上で、マネタリー・ベースを増やすと、予想インフレ率が上がる。予想インフレ率の上昇は①円安、②株高、③予想実質金利の低下の三つのルートを通じて、総需要を増やす。この総需要の増加により、デフレに終止符が打たれる」
 コミットとは、目標値や目標達成期間を発表し、達成できなかったら説明責任と結果責任を負う約束をすることをいう。責任を取ると約束することを言う。上記引用の後半は、大意次のように展開する。予想インフレ率の上昇は、①円安をもたらす。円安になると、輸出が増え、輸入が減り、企業の設備投資が増える。②株価が上がる。株価が上昇すると、設備投資が増える。また③予想実質金利は下がり、企業設備投資が増える。これらによって、実質国内総生産が増え、雇用が増える。総需要が増加し、需給ギャップが縮小して、物価が上がる。こうして、デフレは終わる。
 昨年12月、安倍政権の誕生の前後から、株高円安となり、本年1月22日の政府・日銀の共同声明で、日銀がインフレ目標2%の受け入れを発表すると、一層株高円安が進んでいる。この現象は、岩田氏の説くデフレ脱却のメカニズムの妥当性を裏付けつつあると言えよう。
 岩田氏は本書で、次のように主張する。「日銀の金融政策を世界標準の金融政策に変えれば、デフレを脱却できる」と。具体的には、「日銀法を改正し、日銀にインフレ率を中期的に2%に維持することにコミットさせる。インフレ率の許容範囲は2%の上下1%とする」。岩田氏は、物価の安定と雇用の最大化を両方めざしつつ安定的な成長を達成するには、これが許容範囲だという。 
 「デフレ下では、需要が供給能力を下回る(この状況を需給ギャップが存在するという)ために、実際の実質成長率は日本経済が達成可能な潜在成長率よりも低くなる。しかしデフレを脱却すれば、実際の実質成長率は潜在成長率まで上昇する。ここまでが、金融政策の役割である。一方、潜在成長率そのものを引き上げるためには、規制緩和や市場開放などの競争政策によって、民間の能力を引き出して、労働生産性を引き上げなければならない。この競争政策は政府の役割である。競争政策によって潜在成長率を高めることは供給能力を高めることに他ならない。したがって、デフレを解消する金融政策が伴わずに、競争政策だけを実施して供給能力を高めるならば、需給ギャップがさらに拡大するだけで、高められた潜在成長率は実現しない。つまり、競争政策はデフレ脱却の金融政策が伴わなければ、その成果は実現しない」と岩田氏は説いている。
 ここで岩田氏が「規制緩和や市場開放などの競争政策」と書いているのは、岩田氏が過去の著作で「市場の競争を維持・促進するような構造改革」と呼んでいたものである。この点、岩田氏は、平成13年(2001)の『デフレの経済学』の時点から、ある種の構造改革の必要性を認める姿勢は変わっていない。デフレ下でやると失敗するが、デフレ脱却の後は、構造改革を進めるべきだというのが、岩田氏の立場である。本書では、「市場の競争を維持・促進するような構造改革」を競争政策と呼び、「デフレを解消する金融政策が伴わずに、競争政策だけを実施して供給能力を高めるならば、需給ギャップがさらに拡大するだけで、高められた潜在成長率は実現しない。つまり、競争政策はデフレ脱却の金融政策が伴わなければ、その成果は実現しない」と強調している。
 わが国の政府が為すべき課題は、東日本大震災からの復興、対中国・北朝鮮等に対する国防の強化、来るべき巨大地震に備える国土強靭化、次世代育成のための教育、高齢化に対応する社会保障、地球的課題としての環境保全、自然と調和したエネルギー開発等、多くある。これらの政策課題は、民間に任せていれば、自ずと実現されるものではなく、政府が国家構想を打ち出し、道筋をつけてこそ、民間の力が生かされる。岩田氏のいうような構造改革は、デフレを脱却してからの中長期的課題である。その際、過去の橋本=小泉構造改革の誤りを徹底的に総括し、本当に日本のためになる改革案を練り上げなければならない。特に米国追従、米国模倣の姿勢はだめである。日本には日本の道がある。
 昨23年12月から本年1月にかけて、安倍内閣は、日銀法の改正もちらつかせながら、白川方明日銀総裁に迫り、インフレ目標政策を呑ませた。白川総裁は任期前の辞任を表明している。岩田氏は、日銀法を改正しないと日銀は変わらないという見方だったが、安倍首相の交渉力が、こういう展開を生み出したのだろう。安倍内閣は、現時点では日銀法の改革はせずに、日銀にインフレ目標下での大胆な金融改革をさせるという姿勢である。そして、その日銀の総裁に黒田東彦氏、副総裁に岩田氏と中曽宏氏を起用する人事案を国会に提示し、同意を得た。誰よりも厳しく日銀を批判し続け、日銀法の改正を訴えてきた岩田氏が副総裁に就任したことを支持するとともに、氏の活躍に期待したい。
 私は、財政政策・金融政策を一本化し、政府と日銀が一体となって、デフレ脱却を成し遂げ、日本経済を力強く成長軌道に乗せるには、インフレ目標政策だけでなく、現行の日銀法の改正が必要と考える。日銀法の改正を訴えてきた岩田規久男氏が、日銀の幹部となって日銀の改革を進め、今後、政府が日銀法の改正に踏み切るならば、日本の経済的復興は加速するに違いない。
 デフレは必ず脱却できる。そして日本は復興できる。日本と日本人の底力を信じよう。(了)

関連掲示
・拙稿「経世済民のエコノミスト~菊池英博氏」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion13i-2.htm
・拙稿「構造改革を告発~山家悠紀夫氏」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion13i-1.htm
・拙稿「デフレを脱却し、新しい文明へ~三橋貴明氏」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion13f.htm
参考資料
・岩田規久男著『デフレの経済学』『昭和恐慌の研究』(以上、東洋経済新報社)『日本経済を学ぶ』『「小さな政府」を問い直す』『世界同時不況』(ちくま新書)『日本銀行は信用できるか』『デフレと超円高』『インフレとデフレ』(以上、講談社)『ユーロ危機と超円高恐慌』『日本銀行 デフレの番人』(以上、日本経済新聞出版社)

■追記

 本項を含む拙稿「デフレ脱却の経済学~岩田規久男氏」は、下記に掲載しています。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion13s.htm
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2 コメント

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Unknown (sh)
2013-03-24 13:34:56
デフレ経済学の脱却11が人権のカテゴリーに入っていますよ。
>shさん (ほそかわ)
2013-03-27 00:00:24
ご指摘ありがとうございます。修正しました。

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