ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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台風19号被害は「人災」~藤井聡氏

2019-11-18 10:00:57 | 移民
 国土強靭化を唱える京都大学大学院教授・藤井聡氏は、「台風19号は人災である」と、産経新聞令和元年11月12日付に書いた。
 台風19号で決壊、氾濫した箇所や免れた箇所に関する様々な事後検証が進められた結果、明らかになったのは次の一点だと、藤井氏は言う。
 「ダムや堤防、河道掘削など、しっかりとした治水投資が行われたところは決壊を免れ、そうした治水投資がおざなりにされたところで、数多くの決壊が発生した」ということである。
東北や北関東にかけては多数の決壊個所があるが、東京都心を中心とした南関東の都市部には、まったくない。都心部に集中的に洪水対策の投資が進められた一方、それ以外の地方部には十分な治水投資が進められなかったためである。
 東京都心の荒川では第一調整池、利根川では八ツ場ダムと渡良瀬川遊水地が機能した。これらの「各インフラへの投資金額は0・7~0・8兆円程度だが、これらのおかげで首都圏はその何十倍から100倍以上もの数十兆円から100兆円前後にも至る超巨大被害を免れたのだ」と藤井氏はいう。
 その一方、長野県の千曲川では予算がないという理由、宮城県の吉田川では対策完了に3年以上かかるという理由で、対策がされなかった地点で決壊が生じた。しっかりと投資した箇所は決壊を免れ、そうでなかった箇所で決壊が生じたことは、「何人たりとも否定し難き事実なのである」と藤井氏は指摘する。
 藤井氏によると、「わが国は治水投資がピークを迎えた1990年代の頃から今日に至るまで、投資額は半分程度にまで削減している。結果、治水投資額はトータルで8兆円前後も削られた。もし、あの頃の投資水準を保っていたら、決壊箇所は半分や、3分の1程度にまで抑えられていたことも十分に考えられるのである。つまり、今回の台風19号災害には、国民の生命と財産を「守る」ことよりも財政規律を「守る」事を優先した歴代政府の「人災」の側面が濃密に存在するのである」と述べている。
 そして、次のように主張する。「もうこれ以上、政府は国民の生命と財産よりも財政規律を優先するような、無慈悲かつ破壊的な財政運営を続けてはならない。しかも過度に財政規律を優先すれば、被害が拡大し、復旧復興予算が肥大化するとともに経済低迷による税収減にも苛まれ、かえって財政が「悪化」する」。「政府には賢明なる財政運営を、一人の専門家として強く要請したい。その人災の構図が明らかになった以上、もうこれ以上の人災は許され得ないのだ」と。
 藤井氏は、経済学的には積極財政派である。財政規律を守ることを優先するのではなく、積極的な財政運営を行なって国土を強靭化することが、経済成長をもたらし、また防災・減災によって、自然災害による犠牲者と被害と財政負担を減らすことができるという考えに立って、上記の分析と主張を行なっている。
 以下は、藤井氏の記事の全文。

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●産経新聞 令和元年11月12日

台風19号被害は「人災」である 京都大学大学院教授・藤井聡
2019.11.12

 東日本を中心に凄(すさ)まじい被害をもたらした台風19号。その決壊箇(か)所は実に71の河川、140カ所、死者、行方不明者は100人近くにまで上った。その襲来から1カ月がたったが被災地は未(いま)だその巨大な傷痕に苛(さいな)まれ続けている。救護、救援、そして速やかなる復旧復興が進められている状況ではあるが、並行して決壊、氾濫した箇所や免れた箇所に関する様々な事後検証も徐々に始められている。

≪治水への投資の差は顕著だ≫
 その結果明らかになったのが、次の一点だった。「ダムや堤防、河道掘削など、しっかりとした治水投資が行われたところは決壊を免れ、そうした治水投資がおざなりにされたところで、数多くの決壊が発生した」
 筆者の手元には今、決壊箇所に×を付けた東日本の地図がある。これを見ると、東北や北関東にかけて無数の×が付けられている。一方で東京都心を中心とした南関東の都市部には一つの×も付けられていないのだ。これは明らかに都心部に集中的に洪水対策の投資が進められた一方、それ以外の地方部には十分な治水投資が進められなかった事を示している。
 具体的に見ていこう。
 今回、東京都心を流れる荒川などは決壊を免れた。荒川の決壊は、62兆円という東日本大震災を上回る巨大被害が懸念されている(土木学会試算)。そんな荒川には様々な治水投資が重ねられてきたが、その一つである「第一調整池」は東京を守る巨大な働きをした。この調整池は今回、3500万立方メートルという途轍(とてつ)もない量の水を貯(た)めたのだが、もしもこの池がなければ、この大量の水が流下し、大なる可能性で荒川洪水が発生していたのである。
 利根川においても、10月1日から試験が開始された八ツ場ダムが荒川第一調整池の2倍にも上る7500万立方メートルの水を貯め、渡良瀬川遊水地は実に1・6億立方メートルという水量を貯めた。これらの働きがなければ、利根川においても大なる可能性で堤防決壊が発生していたのである。
 以上に述べた各インフラへの投資金額は0・7~0・8兆円程度だが、これらのおかげで首都圏はその何十倍から100倍以上もの数十兆円から100兆円前後にも至る超巨大被害を免れたのだ。

≪「予算ない」は理由になるか≫
 一方で首都圏から遠く離れた長野県の千曲川は決壊し大規模な洪水をもたらした。この決壊箇所は約1千メートルの川幅が200メートルにまで狭くなる箇所であり、専門家は豪雨時には決壊は免れ得ぬと認識していた箇所だった。にもかかわらず投資がなされなかったのは偏(ひとえ)に「オカネがない」という一点が理由だった。政府は昨年から3カ年の緊急治水対策を行っているが、この決壊箇所は「対策には3年以上かかる」という事を理由とし対策対象から除外されたのだ。
 同様に宮城県の吉田川でも、対策完了に3年以上かかるという理由で対策されなかった地点で決壊が生じている。この河川では3カ年以内に完了できるということで対策が行われていた区間においては決壊氾濫は生じなかった。つまり「しっかりと投資した箇所は決壊を免れ、そうでなかった箇所で決壊が生じた」のは、何人たりとも否定し難き事実なのである。
 にもかかわらずわが国は治水投資がピークを迎えた1990年代の頃から今日に至るまで、投資額は半分程度にまで削減している。
 結果、治水投資額はトータルで8兆円前後も削られた。もし、あの頃の投資水準を保っていたら、決壊箇所は半分や、3分の1程度にまで抑えられていたことも十分に考えられるのである。
 つまり、今回の台風19号災害には、国民の生命と財産を「守る」ことよりも財政規律を「守る」事を優先した歴代政府の「人災」の側面が濃密に存在するのである。

≪かえって財政悪化招く懸念≫
 今年はもう「台風」の季節は過ぎたが、来年再びやってくる。これ以上大きな台風は二度と来ない-とは絶対に言えない。このクラスの台風が近い将来やってくる。しかも何度も何度も、繰り返し。その時、この台風19号の巨大被害を教訓に政府が努力すれば、被害は大きく削減されるだろうし、そうでなければ、激しい被害がもたらされることとなろう。
 もうこれ以上、政府は国民の生命と財産よりも財政規律を優先するような、無慈悲かつ破壊的な財政運営を続けてはならない。しかも過度に財政規律を優先すれば、被害が拡大し、復旧復興予算が肥大化するとともに経済低迷による税収減にも苛まれ、かえって財政が「悪化」する。例えば今回荒川や利根川の決壊は免れたが、一つ間違えば10兆円以上もの「財政被害」が生じていたのだ。そう考えれば財政規律を優先する財政運営は無慈悲で破壊的であるばかりではなく、財政悪化を導く「愚か」極まりないものでもあるのだ。
 政府には賢明なる財政運営を、一人の専門家として強く要請したい。その人災の構図が明らかになった以上、もうこれ以上の人災は許され得ないのだ。(ふじい さとし)
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