ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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現代世界史16~リーマン・ショック

2014-08-10 08:23:43 | 現代世界史
●世界を揺るがしたリーマン・ショック

 米国のブッシュ子政権は、9・11の同時多発テロ事件をきっかけに、アフガニスタンやイラクに軍事介入し、莫大な戦費を支出した。産業構造の転換で製造業が縮小し、国内の生産力が低下したアメリカでは、戦争経済はもはや経済の再興につながらなかった。米国経済は、1990年代からのITバブルが2000年代に崩壊し、景気が後退した。ブッシュ子政権は、クリントン政権とは異なり、再びレーガン政権を受け継ぐ新自由主義の経済理念を取った。税制をレーガン型に戻し、法人税減税と高額所得者への減税を実行した。だが、その経済政策は、失敗に終わった。クリントン時代に蓄積した財政黒字は一挙に赤字に転じた。貧富の差が拡大し、税収が減少した。米国は、再び双子の赤字を抱えるようになった。
 こうした問題に対処するため、アメリカはウォール街の株式市場に海外から資金を集める必要を高め、様々な金融派生商品で資金を呼び込んだ。自己資金の何倍もの資金を借りて株式を買うレベリッジという手法により、巨額の取引が行われた。石油、穀物など、あらゆるものが、投機の対象となった。その活動は、強欲資本主義と呼ぶにふさわしい。ここで猛烈な活動をしたのが、ゴールドマン・サックスに代表される投資銀行や、ジョージ・ソロスらによるヘッジファンドだった。
 特に大きな問題となったのが、サブプライム・ローンである。アメリカ国民は、ものづくりを軽視し、金融による利益取得に走り、ドルの力に基づく過剰消費癖から抜けられなくなっていた。低所得層までが過剰消費に走り、収入に見合わない住宅を所有しようとする。そうした信用能力の低い階層を対象とした住宅ローンが、サブプライム・ローンである。ウォール街は、低所得者向けの住宅ローンを証券化し、これを安全性の高い商品であるかのように仕立てて、世界中で売りさばいた。破綻は時間の問題だった。
 2007年(平成19年)、サブプライム・ローンが焦げ付いた。これをきっかけに世界的な金融危機が始まった。翌2008年(20年)9月15日、投資銀行のひとつリーマン・ブラザーズが倒産した。世界経済は約80年前に起きた大恐慌以来の危機に陥った。これがリーマン・ショックである。
 1929年の大恐慌は、投機的な投資が一つの原因となって発生した。1920年代の資本主義は、ものの生産より金融が中心となり、金融市場が賭博場のようになっていた。アメリカでは大恐慌後、議会上院に銀行通貨委員会が設置された。この通称「ペコラ委員会」は、金融危機の原因と背景を解明するとともに、再発防止のための金融制度改革に取り組んだ。ペコラ委員会は、1929年の株価大暴落前後のウォール街の不正行為を暴き、銀行家が証券子会社を通じた銀行業務と一体的な業務展開をすることによって、巨額の利益を得ていたことなどの実態を明らかにした。その調査結果に基づき、1933年に銀行業務と証券業務の分離を定めたグラス・スティーガル法(銀行法)と証券法が成立した。また、翌34年には証券取引所法が成立し、ウォール街の活動を監視する証券取引委員会(SEC)が設立された。
 大恐慌後に設けられた規制は、1970年代までは、巨大国際金融資本の活動を抑えるのに有効だった。また、ケインズの理論・政策・思想を継承したケインズ主義が世界的に普及したことにより、マネー・ゲームに対する一定の制御がかけられていた。しかし、アメリカでは1980年代、レーガン政権の時代から徐々に規制が緩和された。そして、クリントン政権の1999年にグラム・ビーチ・ブライリー法が成立した。同法によって、銀行・証券・保険の分離が廃止された。その結果、金融機関は、持ち株会社を創ることで、金融に関するあらゆる業務を一つの母体で運営することが可能になった。これを理論的に推進したのが、新古典派経済学だった。
 「自由」の名の下、アメリカの金融制度は大恐慌以前に戻ってしまった。ウォール街は、さまざまな金融派生商品(デリバティブ)を開発し、サブプライム・ローン、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)等を生み出し、世界中を狂乱のマネー・ゲームに巻き込んだ。そして、リーマン・ショックによって、猛威を振るったカジノ資本主義は破綻した。
 FRBのグリーンスパン議長は、リーマン・ショックを「100年に1度の大津波」と呼んだ。1929年世界恐慌に匹敵するかそれ以上の経済危機という意味だろう。だが、この大津波は100年のスパンではとらえられない。少なくとも過去500年を視野に入れて見るべき現象である、と私は考える。リーマン・ショックは、数百年規模で起こりつつある世界的な変化の一貫である。近代西洋文明が生み出した現代の世界システムは、根本的に転換されるべき段階に入っている。しかし、世界はまだ新たな指導原理を見出していない。
 リーマン・ショック後、米国では投機的な金融機関に対する一定の規制が行われた。しかし、その規制は小規模なものにとどまっている。強欲資本主義は、一時的なダウンから立ち上がり、その勢いを取り戻しつつある。

 次回に続く。
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