ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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トッドの移民論と日本52

2011-04-23 08:51:09 | 国際関係
●トッドの日本論3~脱工業化時代への対応

 トッドによると、直系家族的集団は、伝統的な社会が近代化し、さらに脱工業化社会になっても、親子の結びつきが強く、家族が団結する。それにより、脱工業化時代にあっても、根本的な価値観を維持している。トッドは、次のように言っている。
 「20世紀において、ドイツ、スウェーデンあるいは日本の都市部では、両親と未婚の子供だけから構成される核家族型世帯が、人類学的な中核的制度として主流を占めるにいたる。しかし三世代家族が姿を消したからといって直系家族的システムの根本的価値観が消滅したことにはならない。その存続は別の形で家族生活の中に観察できるのであり、また社会生活の中で多様な具体的形態を通して観察できるのである。
 家族のレベルではその価値観の永続性は、親と既婚の子供の間の緊密な絆の維持に明らかに現れており、その絆は狭い核家族世帯の枠を超えた親族のネットワークを形成する。こうした連帯により、家計面であれ子供の教育に関してであれ相互援助が可能になる。とりわけ、核家族的外見の世帯の中核において直系家族的価値は、権威と規律という価値と家族の知的・職業的世襲財産の相伝と拡大という観念を重要視する教育の中に永続している。直系家族システムの核をなす家系の連続性の原則は、社会的・経済的状況の変化によって破壊されず、むしろ形を変えたのである」と。
 トッドが指摘する上記の傾向は、わが国においてはっきりと見ることができる。先に書いたように敗戦後、わが国の家族制度は外力によって変造されたが、それでもなお直系家族的価値観は存続し、また家系の連続性の原則は形を変えて保持されている。「価値体系としての直系家族は、家庭を形成する形態としての直系型世帯が消滅しても生き残ることができる」とトッドが言っていることは、わが国によく当てはまる。
 トッドは、社会的・経済的変化への直系家族の対応の例として、教育を挙げる。直系家族的集団は、親子の結びつきが強く、家族が団結する。それが、子供の勉学には有利に働き、社会的職業的な上昇を促す。直系家族の教育熱心さは、知識や技術が高度になった脱工業化社会では、次世代の育成に成果を上げている。トッドは、次のように書いている。
 「脱工業化時代の全般的な知的・技術的レベルの上昇の中では、社会的地位向上の欲求は、特に高度な教育を受けた子供の産出を通じて実現されるようになる。こうした目標を達成するために、もはや三世代同居家族ではなく、むしろ心性的システムを特徴とするようになった現代の直系家族は、大抵は子孫の数を制限し、両親の注意と援助をただ独りの子供に集中させるようになる」。日本はその例であることをトッドは指摘する。日本を含む直系家族は「極めて低い出生率が、今日では子供の優秀な学業成績と連動している」と言っている。
 日本人やユダヤ人が、アメリカ社会で、大学に多数進学しているのは、このためである、とトッドは指摘する。直系家族的集団は、産む子供を少なくして、子供一人一人の教育に費用をかけ、教育を財産として子供に与える。そのため少子の傾向がある。一方、絶対核家族は、個人の自由と子供の自立を重んじるため、教育では成果が上がっていない。その代わり、相対的に子供の数は多いという傾向がある。
 トッドは、直系家族的集団は、脱工業化時代になっても、根本的な価値観を維持し、親子の結びつきが強く、家族が団結し、次世代の育成に成果を上げているとし、その典型を日本に見ているのである。この見方は、日本の社会の特徴を評価し、日本人は直系家族的な価値観を保つべきことを示唆していると言えるだろう。

 次回に続く。
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