ほそかわ・かずひこの BLOG

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米国はパリ協定離脱宣言を撤回すべし6

2017-07-04 09:46:37 | 地球環境
●科学は万能ではないが、人為的原因の削減は人間の責任

 トランプ政権の環境政策への批判が強まる一方、米国には気候変動問題の全容や解決策が科学的に解明済みだと考える「科学万能主義」を戒める声もある。
 産経新聞6月12日付のワシントン支局・小雲規生記者は、次のように伝えている。
 ジョージア工科大学の元教授で気候変動問題の専門家、ジュディス・カリー氏は、本年3月、米下院科学・宇宙・技術委員会での公聴会で「IPCCの結論を確信をもって受け入れることは正当化できない」と述べた。気候変動に関する歴史的なデータは不十分なうえ、将来の気温の変化を予測するための計算モデルは極めて複雑で完成形があるわけではない。複雑なモデルには前提条件をわずかに変えるだけで、長期的な予測結果が大きく揺らぐ性質もある。にも関わらず連邦政府の支援を受ける研究機関や大学は研究者に対して、IPCC報告書に象徴される統一見解に従うよう「圧力」をかけている、とカリー氏は述べた。
 ピュリツァー賞の受賞者で現在、米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニストのブレット・スティーブンス氏は、IPCC報告書について「洗練されたものではあるが、間違っている可能性からは逃れられない」と指摘し、「科学について完全に正しいと主張することは科学の理念に背くことになる」と主張している。
 また1980年代からNYTなどで気候変動問題を取材してきたジャーナリストのアンドリュー・レブキン氏は、「分からない問題が存在することを過小評価すれば、かえって問題を解決しようとしない人たちに力を貸すことになる」として、科学で未来を完全に予測できないことを認めたうえで、幅広い解決策を模索するべきだとする。
 小雲記者は、上記のような専門家やライターの見解を引くとともに、「米国における立場の違いは科学的な知識の有無ではなく、所属するコミュニティーに左右されるとの指摘もあり、離脱派と残留派の対立は「文化戦争」の様相を呈している」と述べている。
 ロイター通信が6月6日に発表した米国の世論調査によると、パリ協定離脱への支持は、全体では39%という低水準だった。しかし、共和党支持層では70%、民主党支持層では17%と好対照をなした。どの政党を支持するかで、離脱への賛否が大きく分かれる。
 同じ傾向が2013年のある世論調査でも見られた。大気中のCO2の増加が気温上昇を引き起こしていると科学者の多くが考えていることについて、共和・民主の両党の支持層で認知度に大きな違いはなかった。しかし、「人間が地球温暖化を引き起こしていると信じているか」との質問に、民主党支持層は80%超が同意したが、共和党支持層は約25%の同意に留まった。イエール大学のダン・カーン教授は、「人々が気候変動について何を信じるかは、知識に左右されるのではなく、回答者がどういう社会的なグループに属しているかに左右される」と述べているという。カーン氏は、気候変動問題をめぐる対立への注目が高まるなかで自分が属しているグループと異なる意見を持つことは、グループ内での立場を危うくすると指摘し、「合理的な人間ならば、自分が属しているグループ内で大勢となっている意見を取り入れるだろう」と見ている。小雲記者は「気候変動問題をめぐる米国内の対立は科学的な知見とは無関係な、経済や社会、地域などに深く根ざした文化間の戦争状態にあるといえそうだ」と書いている。
 私見を述べると、IPCCの評価報告書は、地球温暖化の原因をすべて人工的なものだとは断定していないのではないか。第5評価報告書は「人間による影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高い」という書き方をしている。数百万年から数億年という超長期的な時間の幅で考えると、現在地球に起っている気候変動には自然的な原因があることも考えられる。太陽黒点の活動や地球自体の物理的な変化も考えられる。しかし、人為的な原因が全くないとは考えられない。産業革命後の急速な産業の発達による温暖化効果ガスの排出の影響を過小評価してはいけないと思うし、まったくその効果を否定する一部の科学者の姿勢には疑問を感じる。仮に自然的原因と人為的原因が重合していると考えても、人為的な原因については削減を図ることが必要だし、それは人間の責任として努力すべきことだろう。事は温暖化に限らない。全地球規模で沙漠化、森林消失、大気・土壌・水質・海洋お汚染、種の大量絶滅等々が進行している。これら全体への取り組みと、地球温暖化の対処は、切り離せない課題である。
 産業革命以来、経済的な発展に猛進し、環境との調和を軽視してきたことが、現在の人類文明と地球生態系の危機を生み出している。そのことへの真摯な反省なく、温暖化問題への取り組みよりも、自国の労働者の雇用や自国民の経済的利益の確保を優先する姿勢は、長期的に見た時には、子供や孫、またその先の世代の将来を損なうことになるだろう。

●パリ協定宣言への反発が広がる

 トランプ大統領は、6月1日パリ協定から離脱することを宣言した。米国は温室効果ガス排出量の国別割合で、中国の20.1%に次ぎ、17.9%で第2位を占める。続いて、欧州連合12.1%、ロシア7.5%、インド4.1%、日本3.8%の順である。こうした位置にある米国の離脱が現実になれば、世界全体への影響は、非常に大きなものとなる。米国内では、離脱宣言に反発する州、市、企業、団体等が増えている。その点については、下記の拙稿に書いたので、ここでは繰り返さない。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/f2639e68e540d6d97186b05cca24cef3
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/acd8fdf3d2d4bd319c66a1482731bd2c
 今後の展開が注目される。(了)

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