ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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インド6~ブラフマンとアートマン

2019-10-09 13:30:16 | 心と宗教
◆アートマン
 アートマンは、もともと息や呼吸を意味した。多くの言語でみられるように、インド・アーリヤ人の言語においても、息や呼吸を意味する言葉が生命や霊魂を意味するようになった。アートマンは、さらに自我・自己を意味するようになり、哲学的な考察によって、自分の奥にある本来の自己を言い表すようになった。
 アーリヤ人は、人間は何度も生まれ変わるものと考え、その再生を繰り返す個人の本体をアートマンと呼んだ。つまり自己に内在する精神原理がアートマンといえる。それに対し、宇宙の根本的な原理がブラフマンである。そして、このブラフマンとアートマンが根本において同一であるとするのが、梵我一如の思想である。
 梵我一如の哲理を説く『ウパニシャッド』は、アートマンについて、心臓の中にある、黍粒の中核よりもさらに微小である、また同時に世界よりも大きい、万有の中にあって、しかも万有の外にあるなどと述べている。また『ウパニシャッド』には、「そは我なり。汝はそれなり」という句と「我は梵なり」という句がある。「そ」はブラフマン、梵を意味し、「我」はアートマンを意味する。これらの二つの句は、アートマンとブラフマンの根本的な同一性を説くもので、『ウパニシャッド』の二大格言となっている。
 アートマンを個我とすれば、ブラフマンは宇宙我といえる。ブラフマンを大宇宙とすれば、アートマンは小宇宙であり、大宇宙と小宇宙の一致を説くのが、梵我一如の思想である。
 梵我一如の思想が形成された過程について、山下博司は、次のように考察している。「梵我一如は、おそらく次のような単純で原始的な発想に由来している。すなわち、アートマンは個人個人の『呼吸』を意味している。それに対しブラフマンは、風や大気、言い換えれば宇宙的な呼吸のことである。人間は息をしなければ生きていけないから、呼吸こそ命の源・本質であり、魂のよりどころである。アートマン(呼吸)=魂という観念が現れるのは自然である。人間は死ぬと呼吸をしなくなるが、呼吸が消えてしなったのではなく、宇宙的な呼吸と一つになったからである。それは死ではなく、個が全体の中に合一した結果なのである」と。(『ヒンドゥー教~インドという謎』)
 ヒンドゥー教の教義において特徴的なのは、梵我一如によって単に全体と個、大宇宙と小宇宙の一致を示すのではなく、輪廻転生の世界からの解脱を目指すところにある。この点については、人間観との関係が深いので、その項目で述べる。

◆神と根本原理
 ヒンドゥー教には、神々に関する神話、讃歌、祝詞、叙事詩等が豊富にある。それらは、神々の由来や系譜、活動、言葉等を書き記している。またそれが教義の一部を成している。そうした教義は、多数の神々が並存する多神教の教義となっている。
 ヒンドゥー教は、神々の背後に唯一絶対の原理が存在することを認めている。その母胎となったヴェーダの宗教では、早くも『リグ・ヴェーダ』に、多数の神々は一つの神の異名にほかならないという考えが現れている。それは、宇宙は「唯一なるもの」が発現したものだという一元論的な思想によるものである。この「唯一なるもの」は、やがて宇宙の根本原理であるブラフマンと呼ばれることになった。神々に関するヒンドゥー教の教義は、この根本原理とその表れを様々な仕方で説くものである。この点において、ヒンドゥー教の教義は、一元論的多神教の教義である。

◆内在的かつ超越的
 ヒンドゥー教の教義において、根本原理を現す神は、内在的かつ超越的である。これは、『ウパニシャッド』以来、実在に与えられている性格である。すなわち、神は万物に内在すると同時に、万物を超越している。神は森羅万象に偏在しつつ、それらの総和ではなく、それらに超越するものとしての実在である。

・一即多、多即一 
 内在的かつ超越的とは、唯一の神が森羅万象を生み出し、これを象徴的にとらえたものが多数の神々であり、また、多数の神々は根本においては唯一の神であるという関係でなる。論理的に言えば、一なるものが多なるものとして現れ、多なるものが根本において一なるものであるという構造である。これを一即多、多即一と言い換えることができる。ヒンドゥー教は、一即多、多即一の多神教であり、その教義はこの構造を説き表している。

 次回に続く。

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