ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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インド38~中道・四諦・八正道

2020-01-06 09:55:40 | 心と宗教
●初期の経典

 仏教には、多くの経典がある。それらのうち、最初期に編纂されたものは、釈迦が実際に説いた言葉をある程度、伝えているものと考えられる。釈迦の死後、数百年以上経って作られたものは、釈迦自身の教えではなく、経典の作者の理解や思想を書いたものだろう。
 最初期に編纂された経典のうち現代に伝わっているものの中に、『スッタニパータ』と『ダンマパダ』がある。
 『スッタニパータ』は、南伝仏教のパーリ語経典に収録されたものである。スッタは「経」、ニパータは「集」を意味する。本書で、釈迦は、次のように語ったと記されている。
 「この世に還り来る条件となる煩悩から生ずるものが存在しない修行僧は、今世も来世もともに捨て去る。──蛇が古い皮を脱ぎ捨てるように」「無明によって、世間は覆われている。強い欲と、怠惰の心ゆえに、世間は輝かない。渇望によって生ける者はけがれる。苦しみが世間の大きな恐怖である」「命ある者における煩悩の流れをせき止めるものは、気をつけることである。それが煩悩の流れの防護である」「修行僧は、欲望に耽けってはならない。心が濁ってはならない。あらゆる事柄に熟達して、よく気をつけて旅を続けなさい」(中村元訳、『ブッダのことば』)
 『ダンマパダ』もパーリ語経典の一つである。ダンマは「法」を意味し、「法句経」と訳す。本書で、釈迦は、次のように語ったと記されている。
 「心は、極めて見難く、極めて微妙であり、欲するがままにおもむく。英知ある人は心を守れかし。心を守ったならば、安楽をもたらす」「心が煩悩に汚されることなく、おもいが乱れることなく、善悪のはからいを捨てて、目ざめている人には、何も恐れることがない」「正しい知識によって解脱して、やすらいに帰した人――そのような人の心は静かである。ことばも静かである。行ないも静かである」「何ものかを信ずることなく、作られざるもの(=ニルヴァーナ)を知り、生死の絆を断ち、(善行をなすに)よしなく、欲求を捨て去った人、――かれこそ実に最上の人である」(中村元訳、カッコ内も中村による。『ブッダの真理のことば 感興のことば』)
 これらの経典は、釈迦が折々に語った言葉を記憶と伝承に基づいて集成したものと見られる。すなわち、教説である。
 『ダンマパダ』は釈迦の教えを初めて学ぶ入門書である。一方、『スッタニパータ』はかなり高度な内容を含んでおり、より修得が進んだ者向けと見られる。これら最古の経典における釈迦の言葉は平易で、たとえも日常的なものが多い。
 なお、ここで煩悩とは、心身を煩わせ悩ませる一切の妄念をいう。煩悩の根源は、無明である。無明とは、真理に暗いことをいう。

●教義の形成

 後代になると、何世代にも及ぶ弟子たちの営為によって、教義が体系化された。その過程で、釈迦自身が説いた教えだけでなく、弟子たちが生み出した思想が加わったものまでが、釈迦の教えとされた。
 次に、教義の概要を示す。

●中道

 釈迦は、自らの教えを中道と呼んだ。中道とは、当時の社会に蔓延していた快楽主義と修行者が競っていた苦行主義の両極端を避ける中間の道である。
 釈迦は、中道の内容として、四諦(したい)、八正道を説き、ただこの教えのみが人を解脱に導くと説いた。

●四諦・八正道

 四諦とは、四つの真理のことである。それらは、次の通りである。

 苦諦(くたい): 人生は苦しみであるという真理。ここで苦しみとは、思うようにならないことをいう。
 集諦(じったい): 苦しみの原因は愛着・渇愛にあるという真理。ここで愛は、欲望にとらわれて執着することをいう。
 滅諦(めったい): 苦しみの原因は滅せられるべきであるという真理。その原因を滅することができれば、涅槃に至ることができるとする。
 道諦(どうたい): 苦しみの原因を滅する道についての真理。涅槃寂静の境地に至るための方法として八正道を説くもの。

 八正道は、道諦の内容である。すなわち、正見(正しい見識)、正思(正しい思惟)、正語(正しい言葉)、正業(正しい行為)、正命(正しい生活)、正精進(正しい努力)、正念(正しい思念)、正定(正しい瞑想)である。

 ヴェーダの宗教において、『ウパニシャッド』は、解脱を目指す者にヴェーダの学習、禁欲、祭祀、布施、苦行、断念、五感の抑制等を奨励した。そして、欲望を捨てることこそ、解脱への最善の道とする一方、無知、貪欲、放逸、虚偽、竊盗、飲酒、姦淫等は、なすべからずと戒めた。
 釈迦の教えである四諦・八正道は、こうした『ウパニシャッド』の思想と全く異なるものではない。異なるのは、『ウパニシャッド』は、ヴェーダを聖典とし、祭祀と苦行を重んじるのに対し、釈迦はこれらを重んじないことであり、また智恵による認識と道徳的な実践を勧めることである。

 次回に続く。

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