ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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野田首相と民主党政権の末路8

2011-10-02 08:49:17 | 時事
●増税より危険なのが、TPPへの参加

 野田氏は代表戦では増税を愚直なほど明確に繰り返し説いたが、首相になると「私は財政原理主義者ではない。現実主義の対応をする」と述べ、増税時期などには柔軟に対応する姿勢を見せている。
 多くのマスメディアは、野田氏が代表選では増税を愚直なほど語り続けたことを、ぶれないと評価した。それをよしとする立場から見れば、首相になった野田氏が「現実主義の対応をする」と述べたことは、野田氏がぶれたことになるだろう。
 だが、野田氏の発言は、増税論に反対や慎重の声があることへの対応である。増税をしなければならないという基本的な考えが変わったのではない。
私はデフレ下の増税には反対する。増税によって景気が冷え込み、税収は下がり、デフレが悪化する。野田氏には、単に状況を見て意見を変えるのではなく、もっと深く経済理論を学び、財務省の官僚に操られるのではなく、政治家として官僚の上に立って、大局的な判断をしてもらいたいと思う。
 増税以上に危険なのが、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加である。このことに気づいていない人が多い。アメリカのオバマ大統領は、日本に対して、TPPへの早期参加を求めている。野田氏は、TPP参加について「早期に結論を得たい」と語っている。TPPに参加するとその影響は、増税よりはるかに大きい。全国紙は産経新聞を含めて、社の見解としてはTPP参加を支持している。
 増税は国内的な施策である。だが、TPPは国際的であり、かつきわめて広範囲に破壊的な影響をもたらす。農業だけではない。金融、労働など多くの分野で、わが国はアメリカの進出を受け、かつてない大打撃を受ける。復興財源が国債か増税かの違いは大きいが、TPPの参加はその違いなどぶっ飛んでしまうほど、日本の経済と社会に重大な影響をもたらす。
 私は、現在の状況は、戦前日独伊三国軍事同盟への参加が論議された時の状況に似たものを感じる。三国同盟の時は、「バスに乗り遅れるな」と言って同盟締結を推進した勢力があり、わが国は闇雲に三国同盟を締結した。これがわが国の運命を大きく左右した。TPPへの参加は、これに比すべき決定的な誤りとなる。
 私は、TPPに反対する掲示を何度かしてきた。6月28日には「大震災後もTPP参加はならぬ」と題して書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/2dcb977256cd9edd4401eab1fe9e07c1
 本稿では、ジャーナリストの東谷暁氏の主張を紹介する。東谷氏は、産経新聞平成23年9月16日号に「TPP、オバマ政権の愚策」と題した一文を書いた。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110916/plc11091602570001-n1.htm
 東谷氏は、輸出全般については、「賛成派はTPPに参加すると輸出が飛躍的に増加するというが、これは完全な間違いである。TPP参加国のほとんどは経済的規模が小さく輸出増加が見込まれるとすれば対米輸出だけだが、いまの円高ではそれはまったく不可能だ。財界は韓国が米韓FTA(自由貿易協定)によって対米輸出を急増させたというが、米韓FTAはいまも批准すらされていない。韓国が対米輸出を急増させたのは通貨ウォンのレート急落によるもので、もういいかげんにこんな嘘はやめるべきだろう」と言う。
 次に農業については、「前原誠司元外相が『農業などの第1次産業は対GDP(国内総生産)比で1・5%。残りの98・5%を犠牲にしている』と発言したため、いまもTPP問題は農業問題であるかのようにいわれるが、日米ともにTPPの作業部会は24あって、農業はその一分野にすぎない。経済規模の小さい4カ国だけの経済協定に、米国が加わってから新たに加えられたのが金融サービスと投資の徹底的な自由化だった。農業分野においても、米通商代表部が課題としているのは対日コメ輸出の増加などではなく農協共済の解体である」と言う。
 次に、投資については、「米通商代表部の狙いは、政府調達の分野での規制撤廃や制度の見直しであり、日本側の行政刷新会議などの動きを見れば、農地の自由な売買や農協の解体も射程内にあると思われる。すでに林地における売買は匿名で可能であり、外資の農地へのアクセスが容易になれば、日本国の農業政策だけでなく安全保障すら危うくなる」と言う。
 次に、安全保障については、「それは日米安全保障条約に任せればよい。冷戦後の地域経済協定では安全保障例外条項を設けるのが普通で、米国が結んだFTAでも、中東の小国とのFTAやイラク戦争時に交渉した米豪FTAなどを例外とすれば安全保障には立ち入っていない」と言う。
 そして、東谷氏は、次のように主張する。「そもそも、米国経済は二番底のリスクが高まっていて35兆円の追加財政支出も効果は限定的だといわれる。そのような状況で日本の対米輸出を増加できると考えるほうがどうかしている。そして何より大震災後の日本はオバマ政権の愚策に付き合っていられるほど余裕がない。迷うことなくTPP参加は見送って、着実な国内経済の立て直しとオバマ政権後の堅実な米国との関係を考えるべきだろう」と。 
 野田氏は、財務官僚に吹き込まれた考えを持って、TPPの早期参加を進めようとしている。TPP参加の是非を判断するには、複雑高度な経済理論や財政学の見識はいらない。いくつかの事実とデータを理解すれば、「からくり」が分かる。野田首相には、官僚が作った資料を脇において、上記の東谷氏をはじめ、中野剛志氏、三橋貴明氏、関岡英之氏らの著書を自分で読み、TPP反対論の要点を整理し、そのうえで自分の頭で考えてみてもらいたい。

 次回に続く。
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