ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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尖閣が中国の核戦略上、重要な理由~志方俊之氏

2013-12-04 10:06:50 | 国際関係
 中国は11月23日東シナ海に防空識別圏を設定したと発表した。中国は、周辺国に対して圏内に入る航空機の飛行計画の事前提出を要求し、不審機には「中国軍が防衛的な緊急措置を講じる」という恫喝的な表現を用いた。その防空識別圏には、わが国の尖閣諸島上空が含まれている。明らかに領空化を目指した挑戦的な行為である。中国は、東シナ海だけでなく、南シナ海等にも防空識別圏を設定する意思を明らかにしている。
 一方的に地域の現状を変更しようとする中国に対し、日本・米国が強く抗議すると、中国外務省は「無責任な発言をやめるように」と反論。だが、日米韓が中国に通告せずに圏内に軍用機を進入させると、中国軍はほとんど動きを見せない。中国非難の声がオーストラリア、韓国、台湾、東南アジア、ECにも広がるなかで、中国は態度を軟化させた。ここまでの国際社会の反発は、予想外だったのだろう。
 なぜ中国は、こうした粗暴ともいえる仕方で、尖閣上空を含む空域に防空識別圏を設定し、あえてそれを発表したのか。そこには、中国が戦略上、尖閣諸島の周辺地域を極めて重視していることが示されている。米国に対抗して西太平洋で覇権を確立し、さらに世界的な覇権を目指そうという野心がうかがわれる。
 帝京大学教授の志方俊之氏は、10月30日付の産経新聞に、尖閣問題について、重要なことを書いた。要点を示すと、次のようになる。
 「中国の核戦略は、最低でも米国のいくつかの大都市を破壊できる核弾頭数とその運搬手段を保有すればよいとする『最小限核抑止』と呼ばれるものである。相手からの核攻撃の第一撃に生き残り、最小限の核報復を行うという戦略であるから、第一撃に対する残存性が鍵となる」「その点、核弾道ミサイル搭載原潜は海中を遊弋して狙われる確率が低く、つまり残存性が高いから核抑止力として機能する」「原潜には、潜没航行できる一定以上の深さが不可欠だ」「尖閣諸島周辺には十分に深い海域があり、周辺海域は格好の条件を兼ね備えている。中国が同海域を必要とする理由はまさにそこにこそある」「尖閣は、中国にとって対米核抑止力を保持するという『核心的利益』の海となったと考えておかなければならない」
 防衛問題の専門家ならではの指摘である。
 志方氏の論に基づけば、尖閣諸島の周辺海域は米国の対中核戦略においても重要な場所となっている。この海域が日本の領域として安定した状態にあれば、米国にとっても安全保障が確保される。逆に、この海域が事実上中国の海となれば、米国の安全保障は脅かされる。
 米国の指導層は、このことをどの程度理解しているだろうか。米国の歴代政権は、尖閣諸島の帰属については中立の立場を取っている。一面では他国の領土問題には関与しないという姿勢であり、一面では周辺国間に領土をめぐる問題で牽制させ合うという姿勢である。だが、尖閣周辺海域が米国の対中核戦略を揺るがすほど重要な場所であるのであれば、米国は従来の立場を改め、尖閣諸島の主権は日本にあることを明言し、中国の野望を抑えるべきだろう。
 このような理由によるものかどうかはわからないが、11月1日付のウォールストリート・ジャーナルは、”The Senkaku Boomerang--Japan needs U.S. support against Chinese bullying.”と題した社説で、尖閣をめぐる日本と中国の対立を取り上げ、オバマ大統領に尖閣が日本の領土であると明確に表明するよう求めている。私の記憶する限り、欧米の有力メディアが米国大統領にこのような要望を社説に書いたのは、初めてではないかと思う。その社説は、尖閣への脅威が米国と日本の同盟を強化させているだけでなく、米国とともに日本を「平和の擁護者」とみなすようになった東南アジア諸国と日本の結びつきも強めたと指摘し、「事故や判断ミス、銃撃事件が起きる危険性が高まっている」ため、日本が政治的な決意や軍事能力を示すことが重要になっていると論じたうえで、米国が第2次世界大戦後、尖閣を管理下に置き、1970年代初めに日本に返還したことで「米国の目的のために(尖閣の)主権問題は事実上、決着している」とし、「オバマ政権が尖閣は日本のものだともっと明確に主張すれば、中国が引き下がる可能性が高くなっていく」という見方を述べている。注目すべき記事である。
 中国の防空識別圏発表は、米国に対中姿勢を改めさせるきっかけとなり、わが国にとって、日米の連携を深める機会となった。アジア・太平洋の平和と安定には、日米同盟を強化し、この地域の諸国との連携を広め、中国の覇権主義を封じることが必要である。
 以下は関連する報道記事。

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●産経新聞 平成25年10月30日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131030/plc13103003260003-n1.htm
【正論】
尖閣を「中国聖域の海」にするな  帝京大学教授・志方俊之
2013.10.30 03:23

 昨年9月にわが国が尖閣諸島3島の国有化を発表して以来、尖閣周辺での中国公船の活動は常態化している。その後の1年間、平均して海警局の公船による接続水域進入は週7日のうち5日、領海侵入は6日に1日に上る。

≪公船、軍艦、爆撃機も登場≫
 中国海軍艦艇の活動も挑発的になっている。5月には、潜水艦が奄美大島付近と久米島周辺の接続水域を潜没したまま通過する大胆な行動に出た。7月には、ロシア海軍とウラジオストク沖で合同演習をした帰路、中国艦艇は宗谷海峡を通過して太平洋に出て、わが国を周回する形で航行し、その外洋能力を誇示している。
 9月には、爆撃機2機が初めて沖縄本島と宮古島の間を通過して往復飛行をし、無人機も出没し始めた。有人の航空機の領空侵犯に対しては部隊行動基準(ROE)がある。無人機への平時の対応は決めていなかったので、防衛省はこれを決定し公表した。
 わが国の固有の領土、尖閣諸島の領有権を中国が主張しだしたのは、1968年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)が海洋調査の結果、周辺の海底にイラクの埋蔵量に匹敵する大量の石油資源が埋蔵されている可能性を報告してからのことである。
 当時の中国は、経済発展のための石油エネルギー資源の確保が最大の関心事で、米国からわが国に返還されたままになっていた尖閣に目を付けたのである。
 一方、中国は核開発を進め、冷戦が激化した64年、核実験に成功し核弾頭を持つに至った。87年に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪1号」(JL-1)、2008年に「巨浪2号(JL-2)」(射程8千キロで米本土へ到達可能)を開発し、04年には12基の巨浪2号を搭載して水中から発射する「晋型原子力潜水艦(SSBN)」(1万2千トン)の一番艦を進水させ15年ごろまでには就役させるとみられている。

≪資源から「核」心的利益へ≫
 中国の核戦略は、最低でも米国のいくつかの大都市を破壊できる核弾頭数とその運搬手段を保有すればよいとする「最小限核抑止」と呼ばれるものである。
 相手からの核攻撃の第一撃に生き残り、最小限の核報復を行うという戦略であるから、第一撃に対する残存性が鍵となる。地上配備型の核弾道ミサイルは偵察衛星によって探知され、攻撃・破壊される可能性が高く、残存性が低い。その点、核弾道ミサイル搭載原潜は海中を遊弋(ゆうよく)して狙われる確率が低く、つまり残存性が高いから核抑止力として機能する。
 問題は、原潜を遊弋させておくのに必要な「聖域化した海域」である。冷戦期、旧ソ連は数隻の核弾道ミサイル搭載原潜をオホーツク海に遊弋させて、対米核反撃力を確実に保持した。ソ連が「太平洋艦隊」と呼んでいた極東配備艦隊の実体は、「オホーツク艦隊」だったといってもいい。
 中国にとっての聖域化した海域は、まさに第1列島線の内側(西側)の海域である。米海軍艦艇が容易に入り込めず米空軍の攻撃も避けることができる海域、すなわち「領域拒否」(AD)の海域こそ東シナ海なのである。
 原潜には、潜没航行できる一定以上の深さが不可欠だ。東シナ海には、潜水艦の行動が困難な浅い部分もあるが、尖閣諸島周辺には十分に深い海域があり、周辺海域は格好の条件を兼ね備えている。中国が同海域を必要とする理由はまさにそこにこそある。
 1970年代、中国が尖閣諸島の領有権を公然と唱えだしたのは「資源」ゆえであった。半世紀たった今、尖閣は、中国にとって対米核抑止力を保持するという「核心的利益」の海となったと考えておかなければならない。

≪南西諸島防衛一段と重要に≫
 この第1列島線の内側海域は、本土から中国空軍の防護を受けられる距離にある。原潜を秘密裏に地下基地で整備して補給を行えるという利点もあるのだ。
 さらにいえば、第1列島線内の「領域拒否」を確実にするには、第2列島線と第1列島線の間の海域を「接近阻止」(A2)の海域として保持することが必要だ。そのためには、中国本土から米国の艦艇を確実に狙い撃ちできる「対艦弾道ミサイル」を開発して配備する必要がある。中国がこれを配備すれば、米空母戦闘群が第2と第1列島線間の海域でプレゼンスを保つのは難しくなる。
 尖閣諸島周辺の海域が、中国にとっていかに軍事的に重要か、容易に理解できよう。裏返していえば、わが国にとっては、尖閣諸島を含む南西諸島を守ることの軍事的重要性も自明である。
 筆者は米中両国が将来、核戦争をすると言っているのではない。核戦力の均衡維持こそが核を使わないですむことを担保する確実な要件であり、東シナ海を「争いの海」でなく「平和の海」にする有効な要件の一つだと考えている。中国の主要機関紙各紙が28日、原潜部隊を初紹介して誇示する記事を1面で掲載したことで、その思いを一層深くしている。(しかた としゆき)

●産経新聞 平成25年11月2日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/131102/amr13110200300000-n1.htm
「オバマ政権は尖閣は日本領と表明せよ」 米紙ウォールストリート・ジャーナルが主張
2013.11.2 00:29

 【ニューヨーク=黒沢潤】1日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルは、尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる日本と中国の対立を社説で取り上げ、オバマ米大統領に尖閣諸島が日本の領土であると明確に表明するよう求めた。
 社説は尖閣への脅威が米国と日本の同盟を強化させているだけでなく、米国とともに日本を「平和の擁護者」とみなすようになった東南アジア諸国と日本の結びつきも強めたと指摘した。
 その上で、「事故や判断ミス、銃撃事件が起きる危険性が高まっている」ため、日本が政治的な決意や軍事能力を示すことが重要になっていると論じた。
 さらに、米国が第二次世界大戦を経て尖閣を管理下に置き、1970年代に日本に返還したことで「(尖閣の)主権問題は事実上、決着している」とし、「オバマ政権が尖閣は日本のものだと明確に主張すれば、中国は引き下がる可能性がある」と強調した。

●ウォールストリート・ジャーナル 平成25年11月1日 

“The Senkaku Boomerang――Japan needs U.S. support against Chinese bullying. ”

China's leaders may have thought that by frequently dispatching ships and planes into Japan's territory around the tiny SenkakuIslands they would cause Tokyo to bow to their demands. Instead, their strategy of harassment and intimidation has accomplished the opposite—and then some.
Prime Minister Shinzo Abe has rallied Japanese to defend their territorial sovereignty, and he may succeed in reinterpreting the Japanese constitution to allow Japan to come to the military aid of its allies. The threat to the Senakakus has strengthened Tokyo's alliance with Washington, with the two countries agreeing earlier this month to bolster their military ties, including the deployment of U.S. P-8 maritime surveillance planes in Japan and stationing a second missile-defense radar.
Japan has also strengthened its ties with Southeast Asia. Smaller regional powers have come to see Tokyo as a potential defender, along with the U.S., of the peace against a hegemonic Middle Kingdom.
In an interview with the Journal last week, Mr. Abe, fresh from a successful tour of the region, signalled his willingness to take up a greater leadership role and issued a warning to Beijing. "There are concerns that China is attempting to change the status quo by force, rather than by rule of law. But if China opts to take that path, then it won't be able to emerge peacefully," he said.
Mr. Abe's remarks were followed by more clear-eyed talk from Defense Minister Itsunori Onodera, who on Tuesday accused China of endangering the peace by sending its coast guard vessels into the Senkaku waters more than once a week: "I believe the intrusions by China in the territorial waters around the Senkaku islands fall in the 'grey zone' (between) peacetime and an emergency situation."
Japan has begun conducting amphibious exercises that simulate the kind of operations that might be needed to defend or retake the Senkakus. It is expected to create a new unit tasked with such missions.
The danger now is that the chances of accident, miscalculation or even a shooting incident grow with each Chinese foray near the islands. That's what makes Japan's demonstration of political resolve and military capability all the more important, but Japan cannot be left on its own. The U.S. took the Senkakus from Japan after World War II and returned them in the early 1970s, effectively settling the question of their sovereignty for American purposes. The more explicit the Obama Administration is that the Senkakus are Japanese, the likelier Beijing is to back down.
In the long term, there may be a possibility for Japan and China to resolve their differences by freezing the status quo and deferring resolution of the dispute to future generations. That was the view Deng Xiaoping had of the matter, and current leader Xi Jinping would do well to follow in those footsteps. The alternative is to further alienate China from its neighbors, and further call into doubt the promise—and the hope—that China's rise will be peaceful.
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