ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

改憲論2~戦力不保持、交戦権否認

2018-04-28 18:36:31 | 憲法
(3)戦力不保持

 9条2項の前半は戦力不保持を定めている。戦力不保持は、人口500万人以上の独立国では、世界唯一の規定である。しかし、起草に当たったGHQのケーディス中佐は後年、これは自衛権の放棄を規定したものではない、と述べている。もし自衛力を含めてまったく戦力を持たないとすれば、独立主権国家として成り立たない。そこで、芦田均元首相が発案し、2項の冒頭に「前項の目的を達するため、」という文言を入れた。芦田修正という。この修正をマッカーサーが承認した。本来は自衛のための戦力は持てるという主旨だった。
 ところが、左翼・日教組等は、日本は自衛権をも放棄した、自衛隊は違憲であると主張し、自衛力の整備に強く反対した。国防の目的は、国家の主権と独立、国民の生命と財産を守ることである。その目的のためには、自らを守る力を保有することが必要である。これを否定したとすれば、独立主権国家とはいえない。他国から侵攻されても正当防衛による抵抗さえしないのは、自滅行為である。
 そこでわが国の政府は、自衛のために「最小限度の実力組織」は持てる、自衛隊は戦力ではないという理屈を立てて、自衛隊を保持してきた。しかし、戦力も実力も英語ではforceである。自衛隊は、英語名をJapan Self-Defense Forces という。海外のメディアは、陸上自衛隊を Japanese Army、海上自衛隊を Japanese Navy、航空自衛隊を Japanese Air Forceと呼ぶことがある。それぞれ、陸軍・海軍・空軍に相当する呼称である。そうした自衛隊を戦力ではないというのは、国内的にも国外的にも欺瞞である。しかし、自衛隊に対する反対意見や自衛隊を違憲だとする主張があるなかで自衛隊を保持するために、このような漢字によるレトリックを使ってきたものである。
 ところで、日本国憲法は、第66条2項に「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」と定めている。この条項は、文民統制すなわちシビリアン・コントロールを定めたものである。GHQが極東委員会の強い要求としてこの条項を入れるように強硬に要求した。civilian は軍人ではない者を意味する。これを「文民」と訳したために、混乱を招いている。公務員には、文官と武官がいる。武官は軍人である。文官は官吏であり、非軍人である。文官には、官僚ではない民間人は、含まれない。だが、civilian を「文民」と訳したため、文官と民間人を合わせた概念とも考えられる。だが、「文官」と訳すと、憲法の発布時に「武官」の存在を前提にしていることになる。日本が非武装化され、軍も自衛隊もない占領下で、憲法に武官という用語を使うわけにはいかない。こういう事情が、おかしな訳語を生み出したのだろう。逆に言うと、憲法に「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」と定めたということは、この憲法は日本国が将来、軍隊を持つことになることを前提としており、軍人は内閣総理大臣その他の国務大臣にはなれないと定めていることになるのである。
 この第66条2項の規定から見ても、9条2項は自衛のための戦力は持てるという主旨であり、日本が自衛のための軍隊を持つことができることを前提としたものと理解すべきである。

(4)交戦権否認

 9条2項の後半は「国の交戦権はこれを認めない」と規定している。交戦権とは、国家が交戦国として国際法上有する権利であり、戦争の際に行使し得る権利である。武力による戦闘の権利だけでなく、敵国との通商の禁止、敵国の居留民と外交使節の行動の制限、自国内の敵国民財産の管理、敵国との条約の破棄またはその履行の停止が、合法的な権利として含まれている。
 9条1項は侵攻戦争のみを放棄したものとし、2項の「前項の目的を達するため」という文言は侵攻戦争の放棄という目的を意味し、自衛のための戦力は保持できるという解釈に立てば、9条2項の後半は自衛戦争に関する交戦権までを否認したものではない。だが、わが国の政府は、自衛のために持てるのは戦力ではなく「最小限度の実力組織」であるという立場を取っている。その場合、わが国はこの「最小限度の実力」の行使を含む交戦権を行使し得るのかが問題となる。一方、左翼勢力は交戦権を国家が戦争をなし得る権利と解釈し、自衛戦争も含めて交戦権を否認したのだと主張する。ここにも解釈上の対立や混乱がある。

 私は、このように問題の多い第9条は全面的に改正すべきだという意見である。詳しくは下記をご参照願いたい。

・拙稿「国防を考えるなら憲法改正は必須」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08d.htm
・拙稿「憲法第9条は改正すべし」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08m.htm
・拙稿「日本再建のための新憲法――ほそかわ私案」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08h.htm

 次に、第9条の改正を検討するために、同9条に関わる基本概念について述べる。

 次回に続く。
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