ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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インド17~ヨーガ

2019-11-04 13:21:39 | 移民
●儀礼

◆ヨーガ
 ヒンドゥー教の儀礼で最もよく知られるものが、ヨーガである。ヨーガは、ヒンドゥー教に限らず、インドの宗教の多くで実践されている。この場合のヨーガは、具体的な修行の方法を意味する。
 ヨーガの語は、「結びつけること」の原義から、「牛馬に軛をかけること」をも意味する。ヨーガの教典である『ヨーガ・スートラ』は、その冒頭に、ヨーガとは、牛馬に軛をかけて奔放な動きを統御するように、自らの感覚器官を制御し、瞑想によって精神を集中して心の作用を止滅することであると説明している。
 ヨーガは、呼吸の制御からはじめて、心身の鍛錬によって肉体を制御し、精神を統一して解脱を目指す修行法である。偉大なインド学者ヤン・ゴンダは、著書『インド思想史』に、次のように書いている。「ヨーガ行者は本性と感情に基づく生活を規制し、日常の意識を取り除き、意識下の状態を登場させて、個人存在の観念を消失させ、正常を超えた宇宙的、あるいは神的意識、個人を超えた存在への意識へと移行する。同時に、筆舌を越え、分析できず、ただ比喩だけで表される忘我の状態に到達する」

・由来
 ヨーガの歴史は極めて古く、アーリヤ人の侵入以前のインダス文明時代から行われていたようである。瞑想する時に結跏趺坐する姿が、インダス文明の印章に刻まれている。
 インドには、神道や儒教におけるような霊魂を現世に呼び戻す招魂の儀礼はない。だが、祭儀を執り行うバラモンは、神々と交信できるような高度な心霊能力を身に付ける必要があった。そのため彼らは、ヨーガの実践をしたり、一種の幻覚剤であるソーマ酒を飲むなどして、神通力を獲得しようと励んだ。こうしたバラモンのあり方は、シャーマニズムが高度に発達したものと見ることができる。
 インダス文明の時代から発達したヨーガの思想と実践方法は、紀元5世紀の前半に簡潔な表現で体系化された。それが『ヨーガ・スートラ』である。この経典を根本教典とするヨーガ学派をはじめ、六派哲学の各学派では、それぞれの教義を学ぶとともに、ヨーガの修行を行ってきた。

・サマーディ
 ヨーガの瞑想はサマーディを目指す。サマーディの原義は「結合させること」であり、そこから「心を一点に集中させること」を意味するようになり、ヨーガでは精神集中が深まりきった究極の境地を指す。深い瞑想の中で自他の差別が解消され、融合・結合が達成された状態とされる。ヨーガ学派では、8種類の実修法の最上位に置かれる。シナの仏教では三昧と訳された。

・万物一体・自他一如
 『バガヴァッド・ギーター』に、次の一節がある。「ヨーガに専心し、一切を平等に見る人は、自己を万物に存すると認め、また万物を自己のうちに見る」(6・29、上村訳)この境地は、サマーディに到達した者の悟りの内容を示唆するものだろう。
 ヒンドゥー教では、ヨーガによって、万物と自己との一体を悟ることを理想とする。万物と自己の一体という観念は、自他が根本において同一であること、すなわち自他一如の観念に通じる。自他一如の観念を持つ宗教では、他者に対して、もし自分が同じことをされたら、自分はどう感じるだろうかと、自己を他者の立場に置いて考えることが習慣となる。それによって他者への寛容や思いやりが発達すると考えられる。

・ハタ・ヨーガ
 ヨーガには、二つの系統がある。ここまで述べてきた心理的・内観的な瞑想によって解脱に到達しようとするヨーガは、古典的なラージャ・ヨーガの系統である。これが坐禅のような静的なヨーガであるのに対し、健康体操のような動的なヨーガもある。これは、肉体的・生理的な鍛錬によって忘我の域に到達しようとするハタ・ヨーガの系統である。ハタ・ヨーガは13世紀に作られた。
 ハタ・ヨーガは、独特の世界観と人間観を持っている。それによると、人間にはクンダリニーと呼ばれる根源的な生命エネルギーが内在している。クンダリニーは「螺旋を有するもの」を意味し、宇宙に遍満する根源的エネルギーであるプラーナの人体における名称である。また、人体には7つのチャクラがあるとする。チャクラは、根源的な生命エネルギーの活動に関係する特殊な器官である。チャクラという言葉は「円」「輪」を意味し、蓮華の形をした円座としてイメージされる。
 脊柱の最下底、恥骨の上には、ムーラーダーラというチャクラがある。このチャクラの中に、クンダリニーは蛇のように三まわり半とぐろを巻いて眠っているとされる。ハタ・ヨーガは、修行によってクンダリニーを目覚めさせて、脈管に沿って他の六つのチャクラを経由して体内を上昇させる。そして、クンダリニーを頭頂部にあるサハスラーラというチャクラに座す神シヴァと合体させるとき、最高の歓喜と至福の境地である解脱に至ることができるとする。
 この目的のためにハタ・ヨーガの修行者は、まず小宇宙である身体を鍛錬・統御しなければならない。それを通じて、大宇宙と合体し、大宇宙をも支配できると考えられる。
 クンダリニーはシャクティとも呼ばれる。シャクティは、「能力」や「創造力」を意味する。そこから世界を維持する最高神の活動力を意味し、それが神格化され、シヴァの妃である女神の名前となっている。ハタ・ヨーガは、シャクティ女神をクンダリニーというエネルギーととらえて、人体の特定部位に内蔵した。シヴァは通常リンガ(男根)によって象徴されるが、ここでは頭頂部のチャクラに座すものとされている。男神シヴァと女神シャクティは、人体において上下に離れ離れとなっている。ハヨーガの修行者は、眠れる女神シャクティが目覚めて体内を上昇し、男神シヴァと合体することを目指す。ここには、男性的なものと女性的なものの合体、陽と陰の一体化を、自己の身体において実現するというイメージがある。

・現代のヨーガ
 伝統的な修行法であるヨーガは、近代以降、様々な指導者によって改良されてきている。その結果、本来解脱を目指す修行法だったヨーガが、健康体操や心の安定のための瞑想法、自己開発の技法のように変わり、ヒンドゥー教徒以外にも取り入れられて、世界各地で多くの人々が実践するようになっている。

 次回に続く。

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