ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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キリスト教225~9・11 と「新しい十字軍戦争」

2019-07-16 09:37:22 | 心と宗教
●9・11 と「新しい十字軍戦争」
 
 ブッシュ子政権で現代史を画する9・11が起こった。9・11とは、2001年(平成13年)9月11日に起こった米国同時多発テロ事件である。この事件には、不審な点が多くある。詳しくは、拙稿「9・11~欺かれた世界、日本の活路」に書いた。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12g.htm
 事件が起こるや、ブッシュ子大統領は、「新しい十字軍戦争」を唱導し、国民に支持・協力を呼びかけた。この「新しい十字軍戦争」という名辞は、明確にキリスト教的なものであり、イスラーム教徒の宗教戦争を喚起するものである。世論は報復に沸騰した。世論を後押しにして、アメリカ政府は、テロはイスラーム教原理主義勢力タリバンによるものとし、2001年(平成13年)10月7日イギリス等とともに、アフガニスタンへの空爆を開始した。 さらに2003年(15年)3月19日、イラク戦争を開始した。9・11及びアフガン戦争及びイラク戦争こそ、現在の世界の状況を生み出した一連の出来事である。そこに、キリスト教の戦闘的な観念が表れていることが重要である。
 9・11をきっかけに始まった戦争は、米国のキリスト教徒によって終末論的な最終戦争とイメージされ、善と悪の戦いという構図が生み出された。キリスト教的終末論において、特別の意味を持つのが、イスラエルの存在である。聖書の解釈の一つに、世の終わりが近づいた時、救世主(メサイア)が再臨する前に、カナンの地にユダヤ人の国家が建設されるというものがある。その国家がイスラエルであると考えるキリスト教徒右派にとって、イスラエルは絶対に守らなければならない国家となる。こうしてユダヤ教の強硬派とキリスト教的終末論が結びつき、アメリカとイスラエルの連合は、不離一体のものとなった。
 こうして、ユダヤ・ロビーは、半世紀を超える年月の活動の結果、政治活動・選挙運動に注がれる巨額のユダヤ・マネーと、信徒人口約7000万というキリスト教右派の大票田とを結びつけることに成功し、アメリカの政府や連邦議会に対して強力な働きかけを行えるようになっているのである。
 9・11をきっかけに、米国とイスラーム教過激派の対立が激化した。イスラーム教徒が多数を占める国は発展途上国が多く、人口増加率が高い。国際的な格差の拡大と人口増加によって、貧困層の増大が大きな問題となっている。貧困は乳幼児の死亡率の高さ、識字率の低さ、不衛生、環境破壊等をもたらす。イスラーム文明では、冷戦終結後、イスラーム復興運動が高揚した。その高揚の中で一部の過激な勢力は、暴力によって貧困に伴う問題を解決しようと考えるようになった。彼らによるテロが世界各地で破壊や殺害を引き起こしている。 そこには、ユダヤ=キリスト教対イスラーム教という唯一神教同士の争いという性格がある。

●有色人種の増加と黒人大統領の誕生
 
 アメリカは、第2次大戦後、ヒスパニックを中心に有色人種の人口が増え、世界最大の移民国家として成長し続けている。そのアメリカで、2008年(平成20年)民主党のバラク・オバマが大統領選挙で勝利し、建国以来、初めて黒人の大統領が誕生した。
 米国は非常に多様性の高い社会である。様々な人種・民族・宗教等が混在している。その状態はサラダ・ボウルにたとえられる。根底には、建国以来の白人/黒人の二元構造がある。1950年代までは人種差別が横行していた。1964年には公民権法が成立し、権利においては平等が実現した。しかし、黒人の多数は貧困層を脱することができない。大都市では、居住地と学校において、黒人の隔離が続いている。そうした状態の改善を求めて、アファーマティブ・アクション(積極的是正措置)やポリティカル・コレクトネス(人種・性差等の中立表現)が唱えられ、実施されてきた。だが、20世紀末から、ヒスパニックやアジア系等の移民が多数流入し、人口構成が大きく変化してきた。白人が多数を占める社会から、有色人種が多数を占める社会へと変貌しつつある。
 史上初の黒人大統領は、こうした多様で対立・摩擦の多い社会を、一つのUSAとすべく統合を試みた。そのスローガンが「Change(変革)」だった。しかし、アメリカの伝統的価値観がこうした転換を阻んだ。優越的な立場にある白人種の多くは、開拓民の子孫という伝統から、自立自助を重んじる。そのため、国民全体をカバーする医療保険制度がない。公的年金制度も発達していない。世界で最も豊かな国でありながら大都市にはホームレスが多くおり、貧困層を中心に乳幼児の死亡率が高い。アメリカ合衆国は、キリスト教の国である。キリスト教の愛の教えに立つならば、貧困層への救済・支援が国家的・社会的に行われて当然のようだが、キリスト教の思想よりも、自由を至上の価値とする古典的自由主義の理念の方が上位にある。社会保障の拡大のための徴税に対しては、政府の干渉、自由への制約として、古典的リベラリストであるリーバータリアンが反発した。オバマ大統領は、オバマ・ケアと呼ばれる健康保険制度を導入した。しかし、共和党を中心に抵抗が続き、制度上の弊害も指摘され、国民の多くが満足できるものにはならなかった。「変革」は、成功に至らなかった。 
 2008年(平成20年)9月のリーマン・ショック後、米国は、オバマ政権下で財政赤字が膨らみ続けた。際限のない国債の発行などによる財政悪化に歯止めをかけるため、法律で政府債務に上限を設けているが、2011年(平成23年)以降、政府債務が上限を超え、繰り返しデフォルト(国家債務不履行)寸前に陥る危機に直面してきている。
 20世紀末の1990年代から、21世紀にかけて、世界的にグローバリゼイションが急速に進んでいる。グローバリゼイションは、国境を越えた交通・貿易・通信が発達し、人・もの・カネ・情報の移動・流通が全地球的な規模で行われるようになる現象である。グローバリゼイションに伴い、技術・金融・法制度等の世界標準が形成されつつある。グローバリゼイションは、アメリカ主導で進められ、アメリカの標準を世界の標準として普及する動きとなっている。この動きは、アメリカの国益を追求する手段として推進された。またアメリカの伝統・習慣・言語・制度等を他国に押し付けるアメリカナイゼイションの拡張ともなった。
 グローバリゼイションは、一方で米国の経済・社会に大きな変化を生み出してもいる。グローバリゼイションの進行によって、米国の製造業は海外の安い労働力と安い製品に押されてきた。格差の是正は進まず、逆にますます拡大している。所得が上位1%の富裕層は、2015年の平均年収が約1億1000万円、残り99%の平均年収は345万円だった。その差は約31倍となっている。また、上位0.1%の最富裕層が所有する財産の総額は、下から90%が所有する財産の総額に等しいという。約900倍の差である。
 貧困層には、黒人やヒスパニックが多いが、彼らの多くは貧困を抜け出せないままである。また、極端な二極化の進行によって、白人を主としていた中間層が崩壊し、白人の多くが貧困層に転落した。
 オバマ政権は、共和党のブッシュ子政権が9・11後に始めたアフガニスタン戦争、イラク戦争を引き継ぎ、その収拾を図った。だが、戦争終結は容易でなく、そのうえ、2011年(平成23年)の「アラブの春」がきっかけとなった中東の地殻変動が生み出したシリアの内戦、いわゆる「イスラーム国(ISIL)」の台頭等が起りイスラーム過激派によるテロリズムが拡散・激化してきた。アメリカでもテロ事件による被害が続いている。
 2016年(平成28年)11月の大統領選挙では、こうしたオバマ政権の8年間が問われた。

 次回に続く。
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