ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

習近平が2049年までの台湾併合を宣言

2019-02-01 12:13:29 | 国際関係
 1月2日、中国の習近平国家主席は台湾問題に関する「重要講話」を行い、台湾併合への強い意志を示しました。本件について、北野幸伯氏と石平氏の見解を紹介します。
 国際関係アナリストの北野氏は、毎日新聞の記事を引用しながら、本件について解説しています。

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https://www.mag2.com/p/news/382267

 習近平は年始、台湾政策に関する演説を行いました。何を語ったのでしょうか?

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習近平氏が初の台湾政策演説 5項目公表 「武力使用放棄せず」
毎日新聞 1/2(水)21:29配信

【北京・河津啓介、台北・福岡静哉】中国の習近平国家主席(共産党総書記)は2日、中国が台湾に平和統一を呼びかけた「台湾同胞に告げる書」発表から40年に合わせ、5項目の台湾政策に関する重要演説をした。台湾側に経済協力の「アメ」を示しつつ、統一に向けて「武力使用は放棄しない」と明言。米国を念頭に「外部勢力による干渉」をけん制した。
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 具体的にどんな政策なのでしょうか?
 政策の柱は

1.平和統一の実現
2.「1国2制度」の適用
3.「一つの中国」堅持
4.中台経済の融合
5.同胞・統一意識の増進

──の5項目。習氏は演説で「台湾問題は、民族の復興によって必ず終結する」と表明。習氏は建国100周年にあたる49年までに「中華民族の偉大な復興」を実現する国家戦略を掲げており、統一への強い決意を示した形だ。
 5項目、意訳してみましょう。

1.平和統一の実現
=プロパガンダや買収によって、なるべく戦闘なしで併合する。
2.「1国2制度」の適用
=香港の時のように、「中華人民共和国の一部になっても何も変わりませんよ!」ということにして、併合する。
3.「一つの中国」堅持
=中華民国(台湾)は存在せず、世界には中華人民共和国があるだけであ~る。
4.中台経済の融合
=中国が台湾経済を飲み込むことで、吸収してしまう。
5.同胞・統一意識の増進
=プロパガンダと洗脳で、台湾人を中国人にしてしまおう。

 こんな感じでしょうか。

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 一方で、習氏は台湾独立の動きに強い警告を発した。「中国人は中国人を攻撃しない」と述べつつ「あらゆる必要な措置を取る選択肢を保有する」とし、独立や外国勢力の介入に武力行使を辞さない考えを強調した。(同上)
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 「あらゆる必要な措置を取る選択肢を保有する」というのは、要するに「平和理に併合したいが、必要があれば武力行使もする」ということですね。いつ武力行使をするかというと、

•台湾が独立を宣言したとき
•アメリカが介入したとき

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 トランプ米大統領は台湾問題への関与を強めており、昨年末には台湾への武器売却や高官訪問などを促進する法律に署名し、成立させたばかり。中国外務省の陸慷(りくこう)報道局長は2日の定例記者会見で、米側に抗議したと明かしたうえで、習氏の演説を引用し「外部からのいかなる干渉も容認しない」と述べた。(同上)
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 トランプさんが大統領になる前、アメリカは、及び腰でした。しかし、彼が大統領になって関与を強めています。問題の多い大統領ですが、こういうところは立派です。

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 習氏の演説を受け、台湾の蔡英文総統は2日、談話を発表し、「一つの中国」原則や「1国2制度」について「絶対に受け入れない」と強調した。「利益誘導によって技術、資本や人材を誘い込む中国の『経済による統一戦略』に反対する」と強い警戒感も示した。(同上)
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 さすがに蔡総統は、中国の「本音」をよく理解しています。しかし…。

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 ただ、蔡氏を取り巻く環境は厳しい。台湾の世論は、中台統一でも台湾独立でもない「現状維持」を望む声が多数派だ。台湾経済は世界第2の経済大国・中国に大きく依存しており、中台関係の悪化も影響して蔡氏の支持率は低迷する。民進党は昨年11月の統一地方選で大敗し、蔡氏は党主席の辞任に追い込まれた。(同上)
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 蔡さん、苦境に立たされています。しかし、2018年米中覇権戦争が勃発しました。トランプ・アメリカは、台湾への関与をますます強めることでしょう。そして、中国経済はこれからドンドン悪化し、長期的に体制崩壊にむかっていくことでしょう。
 台湾、現状維持を100年つづける決意をもっていれば、いずれチャンスが訪れるかもしれません。チャンスというのは、中国共産党政権が崩壊し、民主化が起こるときという意味です。

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 このように北野氏は、習主席が2049年までに台湾を併合することに強い決意を示したことに対し、昨年勃発した「米中覇権戦争」においてトランプ米大統領は台湾への関与をますます強める。中国経済はこれからドンドン悪化する。長期的に中国は共産党政権が崩壊し、民主化が起こる、と予想し、台湾は現状維持を続けていれば、その時にチャンスが訪れると述べています。

 次に、中国問題の権威である石氏は、1月10日付の産経新聞の記事に大略次のように書いています。
 「台湾の蔡英文総統は習講話当日に談話を発表し「一国二制度」をきっぱりと拒否した。それを待っていたかのように、習主席は4日、軍事委員会の会議で演説し、「軍事闘争の準備を確実に進めよう」と中国軍に指示した」。「中国軍将校・兵士は、これから「練兵備戦」を急ぐことを誓った」。
 「2018年の1年間、習主席が進める個人独裁化や毛沢東回帰が国内の一部知識人や若者たちからの猛反発を招き、貿易戦争に関する一連の判断ミスと失策を犯したことで指導者としての権威は大きく傷ついた。貿易戦争の打撃もあって、中国経済は数十年ぶりの大不況に陥った。外交的には、習主席肝いりの「一帯一路」がアジア各地で挫折を遍歴し、欧米諸国からも総スカンを食らった。その一方、米中関係が国交樹立以来の最悪状態となり、貿易戦争は米トランプ政権の攻勢に圧倒される一方である」。
 「習主席は新年早々、台湾への攻勢を強め、それを政治危機打開の突破口にしたかったのではないのか。「祖国統一」の大義名分において台湾併合を進めていくと、党内と国内における自らの求心力を取り戻すことができ、反対勢力を押さえつけることもできる、と習主席は踏んでいるに違いない。そして、「軍事闘争の準備」を叫べば、軍に対する主席自身の掌握はさらに強固なものとなり、経済不況に苦しむ国民の視線を外なる危機にそらすこともできるのである」と。
 次に、石氏の記事の全文を示します。

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https://www.sankei.com/column/news/190110/clm1901100006-n1.html
【石平のChina Watch】独裁者の「いつか来た道」
2019.1.10 11:00|コラム|その他

 今月2日、中国の習近平国家主席は台湾問題に関する「重要講話」を行った。講話の中で彼は40回以上、「統一」との言葉を使って台湾併合への強い意志を示す一方、併合の具体案として「一国二制度」を提案した。
 「一国二制度」は、もともと、トウ小平氏がイギリスの植民地であった香港の中国返還を求めた際に考案した折衷案である。今になって習主席が独立している台湾に対してそれを言い出すのはお門違いだ。しかも、香港で実行された「一国二制度」は、結果的に香港の民主主義と法治を破壊してしまい、それが、最初から中国共産党の欺瞞(ぎまん)であったことが分かった。
 それを目の当たりにした台湾の民衆は中国の言う「一国二制度」に強い不信感を抱き、台湾への適用には、おおむね反対である。案の定、台湾の蔡英文総統は習講話当日に談話を発表し「一国二制度」をきっぱりと拒否した。
 それを待っていたかのように、習主席は4日、軍事委員会の会議で演説し、「軍事闘争の準備を確実に進めよう」と中国軍に指示した。
 一体どこに対して「軍事闘争の準備を進める」のかについて、習主席は明言しなかった。しかし、このタイミングからすれば、「一国二制度」を拒否した台湾を念頭に置いていることは明らかだ。実際、2日の対台湾講話でも習主席は、台湾に対して「武力の行使も放棄しない」と語っている。
 習主席の「軍事闘争準備指示」を受け、中国軍将校・兵士は、これから「練兵備戦」(兵を訓練して戦争に備えること)を急ぐことを誓った、と6日の人民日報や解放軍報が1面で報じている。
 このようにして、今年に入ってからわずか1週間、習主席の主導下で台湾情勢は一気に緊張が高まり、戦争の足音が聞こえてきたかのような雰囲気になりつつある。習主席はなぜ、このような猪突(ちょとつ)猛進のやり方で一年のスタートを切ったのだろうか。習主席の昨年1年間を見れば、その理由が分かってくる。
 2018年の1年間、習主席が進める個人独裁化や毛沢東回帰が国内の一部知識人や若者たちからの猛反発を招き、貿易戦争に関する一連の判断ミスと失策を犯したことで指導者としての権威は大きく傷ついた。貿易戦争の打撃もあって、中国経済は数十年ぶりの大不況に陥った。
 外交的には、習主席肝いりの「一帯一路」がアジア各地で挫折を遍歴し、欧米諸国からも総スカンを食らった。その一方、米中関係が国交樹立以来の最悪状態となり、貿易戦争は米トランプ政権の攻勢に圧倒される一方である。
 こうしてみると、習政権の2018年は、まさに四面楚歌(そか)・内憂外患の一年であったことがよく分かる。習主席にとって、就任以来最大の政治危機が、今そこにあるのである。
 それが故に、習主席は新年早々、台湾への攻勢を強め、それを政治危機打開の突破口にしたかったのではないのか。「祖国統一」の大義名分において台湾併合を進めていくと、党内と国内における自らの求心力を取り戻すことができ、反対勢力を押さえつけることもできる、と習主席は踏んでいるに違いない。そして、「軍事闘争の準備」を叫べば、軍に対する主席自身の掌握はさらに強固なものとなり、経済不況に苦しむ国民の視線を外なる危機にそらすこともできるのである。
 結局習主席は、対外的危機を作り出すことで自らの政治危機の回避を図るという、独裁者の「いつか来た道」をたどることになった。台湾人民にとってだけでなく、アジア全体にとって、中国の習政権はますますの脅威となり、災いの元となっていることは確実だ。国際社会は今後、この問題をより真剣に考えていくべきではないか。
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 先に引いた北野氏は「米中覇権戦争」という言葉を使っていながら、中国が台湾に対して軍事的な行動を起こす可能性を重視していません。米国の圧力によって経済が悪化し、共産党政権の崩壊に至るという見方をしています。だが、後に引いた石氏がいうように、政治危機に立たされた独裁者は、しばしば対外的危機を作り出すことで自らの政治危機の回避を図ろうとします。追い込まれた習主席が軍事力の行使に突破口を見出す可能性があります。これを抑止するためには、国際的な対中包囲網を構築する必要があります。米国の関与が最大の抑止力であり、アジアと日本の平和と繁栄のために、わが国はこれに連携・協力すべきです。また、日・米・印・豪・英の連携によって、インド太平洋の安全保障を強化することが必要だと思います。

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