ほそかわ・かずひこの BLOG

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仏教55~道家の仏教・儒教への影響

2020-09-17 10:11:23 | 心と宗教
◆荘子
 荘子は、姓は荘、名は周、字は子休という。生年は紀元前369年、没年は紀元前286年と推定される。戦国時代中期の人で、宋の漆園の管理に携わる小役人だった。楚王から宰相に迎えられたが、これを辞退して、清貧の中で自由自適の生涯を送ったと見られる。
 荘子の思想は、万物斉同の観念に基づく。現実のすべての差別・対立、すなわち生死、貴賤、是非、善悪等をすべて平等・同一と見る。荘子は、この思想を持って、相対的な価値観へのとらわれから生じる煩わしさや苦悩を超え出ようとする。そのための方法としては、自然な道理に身を任せる因循(いんじゅん)を説いた。これによって、現実の相対的な世界を超越した絶対的な自由の境地を目指す。その生き方は、脱俗的であるとともに隠遁的である。ただし、仏教のように輪廻の世界からの脱出を目標とするものではない。
 荘子の名を冠する『荘子(そうじ)』は、荘子個人の著作ではない。彼を中心とする荘周学派の寓話・論説を編集した書物である。老子の思想を受け継いで、道家の思想を発展させたもので、文明社会を鋭く批評し、人為を捨てて自然のままに生きることを説く。前漢の時代に編纂された『淮南子(えなんじ)』以降、老子と荘子はまとめて扱われるようになり、老荘思想と呼ばれ、道家の代名詞となった。
 『荘子』は、唐代以後に道教の経典に加えられた。道教では、南華真経と呼ぶ。

◆道家思想の中心概念
 道家の思想の中心にあるのは、道の概念である。道家は、人間は道に従って生きるべきだとして、「無為自然」を説く。道のあり方を模範とし、ことさらに知力や欲望を働かすことなく、自然の道理のままに生きるのがよいとするものである。無為自然は、政治においても人生全般においても、目指すべき姿とされる。
 道家は、道と一体となることを究極の目標とする。相対的な世界を超えた絶対自由の境地に達した者を、至人と呼ぶ。『荘子』は、至人の他に、神人、真人、聖人等の語も用いている。道を極めた人間の姿は、古代からシナで理想とされる不老不死の神仙のイメージと重なり合うことになった。
 道家は、漢代以後、儒家とともに二大思潮を形成した。儒家は、現実世界において、礼と仁による国家・社会の安寧・秩序の実現を目指し、家族から国家までを貫く道徳を説く。これに対し、道家は儒家の説く道徳を人為的なものとして斥け、人間と自然の根源にある道に従って生きることをよしとした。儒家は政治的・世俗的な生き方の指針を示し、道家は個人的・超俗的な生き方の指針を示す。ともにシナ文明の文化全般に大きな影響を与えた。
 儒家は法家と融合して政治的な性格を強めたが、道家は原初的なアニミズム・シャーマニズムやそれを基盤として現れた様々な信仰・思想・医療・生活技術等と結びついて宗教的な性格を強めた。そうした道家の思想を採り入れて後漢代に現れたシナ固有の宗教が、道教である。
 
●道家の仏教・儒教への影響

 道家すなわち老荘思想は、シナ文明が仏教を受容する際、仏教を理解する手立てとなった。また、シナ独自の宗派である禅宗の形成に大きな影響を与えた。儒教における宋代の朱子学や明代の陽明学にも影響を与えた。また、シナの文学・芸術に浸透し、シナ文化の一つの精神的な柱となっている。

 次回に続く。

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