ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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皇室制度:政府の「論点整理」を批判する1

2012-11-20 10:24:05 | 皇室
 10月5日、政府は「女性宮家」創設をめぐり有識者12人に対して行ったヒアリングをもとにまとめた「論点整理」を公表した。女性宮家創設案は「検討を進めるべき」とする一方、尊称保持案は「実施困難」と事実上否定し、ヒアリングで全く議論されなかった女性皇族がご結婚後、国家公務員として公的な立場を保持するという案を独自に提起した。そして10月9日から12月9日まで、国民に「論点整理」についての意見公募(パブリックコメント)をしたうえで、来年の通常国会に皇室典範改定案の提出を目指してきた。これは危険な動きである。
 ところが、その目論見は11月16日衆議院解散により、ほぼついえた形となった。12月16日に総選挙が行われる。民主党は惨敗し、自民党が第1党になることはほぼ確実と見られており、新たな連立政権が発足した場合、野田内閣の皇室典範改定方針を引き継ぐ可能性は低い。ただし、背後で方向付けをしてきた官僚集団は変わらない。いずれ新政権を官僚主導の皇室典範改定方針で動かそうとするだろう。それゆえ、皇室典範改定問題は、しっかりここでポイントを押さえておく必要がある。
 女性宮家創設は女系継承への道を開き兼ねず、極めて大きな問題がある。有識者ヒアリングでは対案として女性皇族が御結婚後も尊称を保持する尊称保持案が提案され、政府は両案併記の形で検討してきた。尊称保持案は女性宮家創設よりはましだが、当面の皇族のご公務分担の軽減や皇室活動の維持を図るものにすぎない。有益ではあるが、根本的な改善にはならない。
 私は、男系による皇位継承を保持し、かつ皇族の数を確保する方策は、第一に旧皇族の男系男子孫の皇籍復帰、第二に皇族が旧皇族男系男子孫に限って養子を取ることを許可することであると考える。女性宮家創設については、旧皇族の男系男子孫との婚姻の場合に限るべきである。
 皇統の血筋を引く元皇族男系男子孫が、皇籍復帰、皇族との養子、女性皇族との婚姻などの方策によって、男系男子皇族となる制度を整えば、皇族の人数は増加し、かつ安定的な皇位継承が可能になる。これを旧皇族活用策と呼ぶとすれば、旧皇族活用策以外に、皇室の繁栄と皇位の安定的継承を可能とする根本的な改善策はない。旧皇族の活用を先送りすれば、皇室の命運は先細りする。だが、いまこの根本的改善策を実施すれば、悠仁親王殿下が皇位を継承される将来、天皇を支える宮家が数家維持されて、皇室の弥栄は確かなものとすることができる。目の前に最善にして最も確実な方策がある。国民の英知を結集して、その方策を断行すべきである。
 野田政権が進めようとしてきた皇室典範改定は、わが国の皇室の伝統を破壊する恐れがあり、今後新政権に替わった後も、断固阻止しなければならない。
 続いて、政府の「論点整理」の概要を示し、有識者らによる批判を2回に分けて紹介する。

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●産経新聞 平成24年10月

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121006/plc12100600090000-n1.htm
女性宮家に関する論点整理(要旨)
2012.10.6 00:07

 政府が5日公表した女性宮家に関する論点整理の要旨は次の通り。

【問題の所在】
 天皇陛下や皇族方は、戦没者の慰霊、被災地のお見舞いなどのご活動を通じて国民との絆をより強固なものとされている。他方、皇室典範12条では、「皇族女子は、天皇および皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」と規定されているため、現在の皇室の構成に鑑みると、女性皇族が今後、婚姻を機に、順次皇籍を離脱することにより皇族数が減少し、そう遠くない将来に皇室活動を維持することが困難になる事態が懸念される。

【基本的な視点】
 (1)皇室の伝統を踏まえながら、象徴天皇制度に整合的なものとすること。
 (2)引き続き議論を深めていくことが適当なため、男系男子による皇位継承を規定する皇室典範1条には触れないことを大前提とする。旧11宮家の男系男子孫の皇籍復帰論は皇位継承資格の議論につながるため今回の検討対象とはしない。
 (3)皇室としての一体性に留意しつつ、規模を適正な範囲にとどめ、財政支出を抑制。対象となる女性皇族の範囲は内親王に限定。
 (4)女性皇族のご意思を反映できる仕組みとするとともに、婚姻の障害にならないよう配慮する。

【具体的な方策】
▽女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することを可能とする案(I案)

<A案>配偶者や子に皇族の身分を付与。子は婚姻により皇族の身分を離れる。家族が全て皇族であり、制度として簡明であるが、歴史上の前例はない。範囲は内親王に限定。
<B案>配偶者や子に皇族の身分を付与しない。家族内で身分に違いが生じることから、戸籍や夫婦の氏の取り扱い、家族間における財産の授受、宮内庁の補佐体制の在り方などについて適切な措置が必要。範囲は内親王に限定。

▽女性皇族が皇籍離脱後も皇室活動を支援していただくことを可能にする案(II案)

 皇室典範改正による称号の付与は困難。女性皇族は皇族の身分を離れるが、国家公務員として公的な立場を保持し、皇室活動を支援。その際、「皇室輔(ふ)佐(さ)」や「皇室特使」などの新たな称号をご沙汰により賜ることは考えられないことではない。範囲は内親王に限定。皇族ではないため、摂政就任資格はなく、国事行為の代行もできず、皇族数の減少に歯止めをかけることはできない。

【まとめ】
 象徴天皇制度の下で、皇族数の減少にも一定の歯止めをかけ、皇室活動の維持を確かなものとするためにはI案について検討を進めるべきだが、I-A案、I-B案にはそれぞれ長所、短所があり、さらなる検討が必要。いわゆる尊称保持案は実施困難だが、II案についても併せて検討を進めることが必要だ。

【終わりに】
 政府においては今後、論点整理についての国民各層の議論を踏まえながら検討を進める。安定的な皇位継承の維持は、国家の基本に関わる事項であり、国民各層のさまざまな議論も十分に踏まえ、引き続き検討していくことが必要だ。
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 次回に続く。

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