ほそかわ・かずひこの BLOG

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キリスト教233~ヨーロッパのキリスト教は危機にある

2019-08-03 09:47:30 | 心と宗教
●ヨーロッパのキリスト教は危機にある

 キリスト教は、パレスチナから地中海地域に広がり、ローマ帝国の国教となった。ローマ帝国が分裂し、西方では滅んだ後も、キリスト教はヨーロッパで広がり、定着した。それだけであれば、キリスト教は中東や北東アフリカの一部とヨーロッパに分布するローカルな宗教にとどまっただろう。だが、キリスト教は、ヨーロッパで近代化が起り、ヨーロッパ文明が世界に進出したことによって、世界に広がった。それゆえ、キリスト教にとって、ヨーロッパは極めて重要な地域である。現在もローマ・カトリック教会の本拠地は、イタリア半島のヴァチカン市国にある。カトリックはキリスト教で最大の教派であり、また世界の諸宗教のなかでも最大規模の団体であり続けている。
 ところが、ヨーロッパでは、人々のキリスト教離れが大きな問題となっている。ヨーロッパでは、1950年代からキリスト教における教会離れが目立ち始めたが、近年、それが加速している。これは、先に書いた世俗化の進行と相即する動向である。
 例えば、最もキリスト教離れが顕著なのが、フランスである。宗教社会学では、世俗化の度合いを示す数値として、ミサの参加率と聖職者の人数が挙げられる。フランス人の中で日曜日にミサに参加する人は1958年には35%、すなわち3分の1以上いたが、2004年にはわずか5%にまで低下した。さらに、2011年には毎週1度は教会に通っている人は0.9%だったという調査結果がある。聖職者については、1950年代のフランスでは、司祭になろうとする人が、毎年1000人程度いたが、現在では毎年100人程度と、10分の1程度に減っている。今後、キリスト教離れの傾向がより一層堅調になっていくことが予想される。
 ドイツでもキリスト教離れが目立ってきている。2014年にカトリック教会を正式に離脱した人の数が、21万7116人にのぼった。ドイツの総人口は同年の時点で8108万人であり、その30.8%に当たる2047万人がカトリックである。そのうち、0.88%が離脱したことになる。2013年に比べると、離脱者の数が21%増えており、毎年、離脱者の数は増え続けている。この傾向は、人口の30.4%を占めるプロテスタントでも同様であり、2014年には20万人が離脱した。カトリック教会では、日曜日にミサに出席する信者は12%に過ぎないという調査結果もあると伝えられる。
 ドイツで、多くのキリスト教徒が教会から離れているのは、教会税の存在が大きい。教会税は、アイスランド、オーストリア、スイス、スウエーデン、デンマーク、フィンランドなどにもある制度である。ドイツでは、所得税とともに、所得税の8%ないし10%を教会税として徴収される。徴収するのは教会ではなく、政府である。住民票の宗教に関する欄にキリスト教と記入すれば、自動的に教会税が徴収される。こうした教会税を払いたくないので、教会を離れる人が増加していると見られる。
 イギリスでは、2001年の国勢調査で信仰する宗教はキリスト教と答えた人が72%だったが、2011年には59%へと減少した。10年の間に13ポイント低下したことになる。また、4人に1人が「無宗教」と答えている。こうしたなか、英国国教会では、1年に25の教会が閉鎖されているという。他の国々でも似たような傾向が近年、問題になってきている。こうしたヨーロッパで、いまかつてないキリスト教の危機が深刻化している。深刻化の要因は、非キリスト教文化圏、特にイスラーム文明からの移民の増加である。
 第2次世界大戦後、ヨーロッパでは、西欧諸国を中心に北アフリカやアジアの異なる文明圏から、安価な労働力として、多数の移民を受け入れてきた。その多くは、イスラーム教徒である。ドイツのトルコ人移民、フランスのマグレブ人移民、イギリスのパキスタン人移民等がそうである。ムスリム以外にもイギリスではインド人シーク教徒が流入するなど、非キリスト教徒の移民が流入している。移民は、北欧諸国や南欧諸国にも広がっている。その結果、ヨーロッパでは、宗教・言語・文化・習慣等の異なる移民が増加したため、社会的な摩擦が強まり、社会不安が増大している。イスラーム系移民の一部は、若い世代を中心に移住した国での就職事情や社会環境に不満を持ってテロを行うようになり、テロ事件が頻発している。こうした移民問題は、もはや長期的な見て、ヨーロッパの最重要問題となっている。この問題は、同時にキリスト教と他宗教と間の問題でもある。
 ヨーロッパ文明は、今日世界に甚大な影響を及ぼしている西洋文明の母胎である。その宗教的中核は、キリスト教である。キリスト教がヨーロッパの精神的な統合原理である。現在、ヨーロッパの多くの国は、EUという広域共同体に参加しているが、EUの参加国は、これまですべてキリスト教国である。
 そうしたEUで現在、非キリスト教国・トルコの加盟が検討されている。トルコは、西洋文明とイスラーム文明の接点にある国である。イスラーム教国でありながら、東方キリスト教を包摂してきた歴史を持つ。もしEUがトルコの加盟を認めるならば、EUはキリスト教文明からイスラーム文明に広がる文明間的な広域共同体となる。すでにイスラーム系移民という異教・異文明の集団を多数受け入れているヨーロッパで、EUが異教・異文明の国家の参加を認めるならば、新たな、これまでの歴史を画する段階に進むことになる。
 本項では、これからヨーロッパの主要国におけるキリスト教とイスラーム系移民の問題について書く。

 次回に続く。

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