ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

小沢氏に「日本改造」を委ねるなかれ

2010-09-09 10:11:49 | 時事
 今回小沢氏が民主党代表選に出たのは、「政治とカネ」の問題で追い詰められており、政治生命の危機に立っているからだろう。年齢や体調からみても、今勝負するしかないと考えたのだろう。検察審査会が再度「起訴相当」の議決をすれば、強制起訴される。その場合、自分が首相になっていれば、首相の権限で訴追を拒否することができる。だから、思い切って中央突破を図り、攻めに出たものと思う。一か八かの勝負である。
 代表選に出馬後、小沢氏は記者会見で、首相になっても「(起訴から)逃げません」と明言した。しかし、首相になってしまえば、言葉を翻す可能性がある。また小沢氏は「離党したり、辞職したりする必要はない」とも述べた。いかにも正々堂々然としたものいいだが、これも首相の座についてしまえば、どうとでもできるという考えによるものだろう。
 私は、小沢氏はこれまでずっとわが国の首相になって、強権政治をすることを目指して政治活動をしてきたと見ている。自由党を解党し、民主党に参入したのも、民主党で実権を握り、政権交代を成し遂げたのも、その目的の達成のためである。政権交代をしたのは、鳩山氏や菅氏ごときに政権を任せるためではない。自分が権力の頂点に立って、日本を動かすためである。ところが、自分のカネの問題が暴露されてしまい、自分の政治生命が危うくなった。追い詰められた小沢氏は、最後の勝負に出たのである。若き日から独裁を志向し、権力を私物化してきた政治家が、ついに野望をむき出しにしたのである。
 小沢氏は自らはポストを求めず、影の実力者であろうとする政治家だという見方がある。私は違うと思ってきた。小沢氏の著書「日本改造計画」を読めば、その計画書を書いた人物が自らそれを実行しようと考えていることは、明らかである。ではどうして小沢氏は、自らが望めば首相になれるチャンスを見逃してきたのか。私は小沢氏なりの判断で、時期や環境が整うのを待っていたのだと考える。
 現在発売中の「週刊ポスト」9月17日号によると、小沢氏は数年前から「日本改造計画」の続編にあたる著作を書き続けてきたという。「日本改造計画」は、首相の権限を一般の憲法解釈より強大なものと解釈し、その強大な権限をもって日本を改造する計画書だった。新著の原稿は、旧著をはるかに上回る500ページの大作であり、小沢氏は4年ほど前に、すでに6稿まで書いていたという。こうしてじっくり練り上げてきた政策を、小沢氏は、自ら日本国の首相となって、強大な権限を掌中にして実行するつもりなのである。
 私は、新著の原稿がどういう内容か知らない。しかし。小沢氏の政策と手法による「改造」は、日本を悪化させる「変造」でしかないと見ている。選挙目当てでバラマキ中心の経済政策、年金制度の実態を認識していない年金制度一本化案、「第7艦隊で極東へのプレゼンスは十分」と言っていながら自主国防を整備しようとはしない安全保障政策等、小沢氏による「日本変造」の愚策はいくつもある。
 また小沢氏への権力の集中は、日本の伝統・文化・国柄を破壊するものとなると私は警告する。8日の記者会見で、小沢氏は女性天皇を容認し、永住外国人地方参政権付与を認める見解を述べたが、小沢氏の場合は単に見解にとどまるのではなく、それを強力に実現しようとするだろう。普天間基地問題でも話を蒸し返し、アメリカと距離を置き、共産中国に接近する方向に外交を進めるだろう。これらは日本を脱日本化し、日本が中国に併合される方向への舵取りである。
 私は、拙稿「友愛を捨てて、日本に返れ」にて、鳩山氏の「友愛」は小沢氏の独裁を先導するものとなり、「友愛政治」に日本を委ねることは、暴君・小沢一郎に日本の政治、日本人の運命を委ねることであると警告してきた。閉塞状態に陥った社会では、大衆は強い指導者を待望する。大衆はその指導者に依存し、すべてを委任しようとする。こうした心理が働くとき、大衆の目には、その指導者は救世主のように見える。しかし、目の前にいる人物が国を救う指導者かどうかは、その人物の過去の言動を見れば分かる。過去の言動に、その人物が善徳の器か悪徳の器か現れている。指導者の選択を誤ってはならない。

 以下は報道のクリップ。 

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●読売新聞 平成22年9月7日

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100907-OYT1T00516.htm
小沢氏、強制起訴でも「離党や辞職の必要ない」

 民主党の小沢一郎前幹事長は7日午前の日本テレビの番組収録で、自らの資金管理団体の政治資金規正法違反事件で検察審査会の議決によって強制起訴されても進退問題にはつながらないとの考えを示した。
 小沢氏は「何もやましいこともないので、離党したり、辞職したりする必要はない。仮にそういう結論が出れば、正々とそれに対応していきたい」と述べた。検察審査会の判断についても「1年余の強制捜査の結果、不正な事実がないことが証明された。検察審査会も分かってくれると信じている」と強調した。
(2010年9月7日12時21分 読売新聞)

●産経新聞 平成22年9月8日

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100907/plc1009072242009-n1.htm
小沢氏、検察審に対決姿勢強めるも 言動は強弁と矛盾
2010.9.7 22:38

 民主党の小沢一郎前幹事長は7日の日本テレビの番組の収録で、自身の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反事件で、検察審査会が2度目の「起訴相当」議決をした場合の対応について「私自身、何のやましいこともないので、離党したり辞職したりする必要はない」と述べた。強制起訴となっても党に残り、法廷闘争を行う考えを明確にし、検察審との対決姿勢を鮮烈に示したといえる。代表選の帰(き)趨(すう)と検察審の判断次第で、日本社会は初めて被告席に立つため裁判所に通う首相をいただくことになる。(阿比留瑠比)

 「検察のあれだけの1年以上の捜査で、何も不正がなく、実質的な犯罪がないということが立証された」
 「検察審査会には理解してもらえると思うが、仮にそういう結論が出れば、正々と対応していく」
 小沢氏は7日の番組収録でこうも述べ、重ねて自身の潔白を主張した。
 確かに東京地検は今年2月、小沢氏を不起訴処分としたが、それは証拠がまだ足りないという意味の「嫌疑不十分」であり、「容疑なし」ではなかった。決して「真っ白」だと証明されたわけではない。
 実際、東京第5検察審査会は4月に出した議決要旨で「(小沢氏の供述は)極めて不合理・不自然で信用できない」としている。
 さらに小沢氏の政治資金にかかわった秘書経験者は3人も逮捕・起訴されている。小沢氏は秘書らが逮捕された際、「不公正な国家権力の行使だ」と批判していた。にもかかわらず、自分が不起訴となると検察の判断を「錦の御(み)旗(はた)」とするのも矛盾している。
 「強制力を持つ捜査当局が不起訴としたことについて、一般の素人の人がいいとか悪いとかいう検察審査会の仕組みがいいのかどうかという議論は出てくる」
 小沢氏は3日のテレビ朝日の番組ではこんな疑問も表明した。
 だが、検察が独占してきた起訴、不起訴の判断に民意を反映させるための改正検察審査会法は平成16年、小沢氏が前年に加わった民主党も賛成して成立したものだ。
 検察審の議決に基づく強制起訴と検察による起訴とに、小沢氏がほのめかすような差異はあるか。仙谷由人官房長官は7日の記者会見でこう指摘した。
 「法律効果としては違いはない。それが違うとなったら、裁判員裁判の判決と、裁判官だけの判決に違いがあると認めなければならないという論理になる」
 さらに、強制起訴された場合の小沢氏の進退について「国会や世論の関係をどう斟(しん)酌(しゃく)するかの問題だ。ご本人が賢明な判断をされるのではないか」と述べ、小沢氏の行く手には国会運営と世論という壁が立ちはだかることを示唆した。
 小沢氏は首相になっても「(起訴から)逃げない」と対決姿勢を示すが、行政府の長が司法と戦うという三権分立の原則から逸脱した異様な状況が生まれることになる。小沢氏の行為、言動を国民がどう判断するかが問われている。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100908/stt1009080320007-n1.htm
【主張】代表選と検察審 許されぬ審査員への恫喝
2010.9.8 03:19

 民主党代表選に出馬した小沢一郎前幹事長が、自らの関与が問われる政治資金規正法違反事件をめぐり、検察審査会(検審)のあり方に疑問をぶつけている。まな板の鯉(こい)が料理人にケチをつけているようなものだが、その鯉が最高権力者の座を争っているのだから、不適切きわまりない。
 小沢氏は検審について「強制力を持った捜査当局が調べて何もなかった。不起訴だということについて、一般の素人の人がそれをいいとか悪いとかいう今の検察審査会の仕組みが果たしていいのか」と述べた。日本記者クラブ主催の公開討論会では「1年有余の強制捜査の中で実質的な不正、犯罪はなかったと結論を得ているので、審査会の皆さんもそのことをよく理解してくれると信じている」とも語った。
 検審制度は、検察官が独占していた公訴権の行使に民意を反映させ、不当な不起訴処分などを抑制するために設けられた。しかも、民意による強制起訴を可能にした改正検察審査会法は、昨年5月に施行されたばかりだ。
 小沢氏の一連の発言に、千葉景子法相が「改正され、ようやくスタートした段階で『どうか』というのはまだ早い」と語ったのは当然といえる。
 小沢氏は6日、検審制度の見直しは「今のところ考えていない」と民放番組で語り、制度がある以上は「結論に従うのは当然だ」と軌道修正を図ったようにみえる。だが、当初の発言が検審制度の趣旨を否定し、現在進行中の審査に対する圧力や恫喝(どうかつ)につながっていることは間違いない。
 小沢氏の資金管理団体「陸山会」の平成16、17年の政治資金収支報告書への虚偽記載容疑を審査している東京第5検察審査会は4月、小沢氏について「起訴相当」と議決した。東京地検特捜部の再度の不起訴を受けて、現在進められている再審査でも起訴相当の議決が出されれば、小沢氏は強制起訴される。議決は10月末までに出される見通しだ。
 憲法75条は「国務大臣はその在任中、内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない」と定め、小沢氏は首相になっても「逃げない」と語った。仮に強制起訴に至れば小沢氏は公判の場で存分に自らの主張を述べればよい。審査中の段階で審査員に予断を与えるようなことはあってはならない。

●産経新聞 平成22年9月8日

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100908/stt1009082332024-n1.htm
小沢氏「女性天皇」を容認 菅、鳩山両氏は閣内に 靖国神社は分祀を
2010.9.8 23:29

 民主党代表選に向け、小沢一郎前幹事長は8日、国会内で記者会見し、皇位継承を男系男子に限っている皇室典範について「(父方の祖先に天皇を持つ)男系の男性にはこだわっていない」と述べ、「女性天皇」を認める考えを示した。 小沢氏は「天皇陛下のことなので軽々しく論ずるべきではないが、女性がなられても不自然ではない。男系の男性、直系の男性に限る必要はないのではないか。百二十何代(今上陛下は第125代)の中で、女性の天皇陛下は何人もおられた」と述べた。
 小泉純一郎政権では、母方のみが天皇の血筋の「女系天皇」まで認める皇室典範改正が検討されたが、平成18年に皇室に41年ぶりに男系男子の秋篠宮悠仁(ひさひと)さまがご誕生になり、改正が立ち消えになった。
 小沢氏は会見で「女系天皇」まで認めるかには言及しなかった。ただ自由党党首時代の13年5月、「(皇位継承を)男系に限ったのは明治時代。過去には女性の天皇もいた」と述べ、過去の女性天皇に女系天皇もいたかのような事実誤認の発言をしている。実際には、過去の10代8人の女性天皇は全員男系だった。
 また小沢氏が首相に就任した場合に「菅直人首相や鳩山由紀夫前首相には政府の中で重要な役割を担ってもらうのが挙党一致になる」として、両氏を閣僚で処遇する考えを示した。
 靖国神社に合祀(ごうし)されている「A級戦犯」については「靖国神社本来の趣旨とは違う。合祀すべきではないと以前から申し上げている」と分祀論を唱えた。
 永住外国人への地方参政権(選挙権)付与では「私個人は認める方向でいいが議論が分かれているので、さらに議論する必要がある」と語った。
 内閣法制局は「最終的に(法案が)憲法に合致するか判断するのは国会、裁判所だ。内閣に法制局がある必要はない」と述べた。
 米軍普天間飛行場移設問題では、日米合意を尊重するとした上で、名護市辺野古(へのこ)地区への移設案に関して「辺野古で住民を説得するとか、辺野古を白紙にして米国と話すという意味ではない。双方の一致を見いだす以外にない」とした。
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関連掲示
・拙稿「友愛を捨てて、日本に返れ~鳩山政治哲学の矛盾・偽善・破綻」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13b.htm
 小沢氏関連の記述は第4章(5)~(7)