ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

「友愛民主党」の危うい外交3

2009-10-09 10:02:16 | 時事
 鳩山政権の「友愛外交」に対する疑問や不安が、内外に広がりつつある。私は、「友愛外交」は、日本を危険にさらし、自壊滅亡に導く亡国外交だと見ている。

 鳩山首相は、「友愛」とは「自立と共生の原理」だと言う。その原理を安全保障に当てはめると、どうなるか。
 自分で自分の国を守る「自立」した国が、他国と共同で防衛するのが「共生」となる。わが国においては、自主防衛の整備による「自立」が必要であり、集団的自衛権の行使と日米安保条約の双務化による「共生」が目標ということになる。ところが、鳩山氏の「友愛外交」は、こうした「自立と共生の原理」を実行するものではない。「友愛」とは「自立と共生の原理」だと言いながら、「自立」を目指さない。そこに、「友愛外交」の矛盾がある。

 昨日の掲示に私は次のように書いた。
 「民主党のマニフェストは、(略)『日米外交の基盤として緊密で対等な日米同盟関係をつくるため、主体的な外交戦略を構築した上で、米国と役割を分担しながら日本の責任を積極的に果たす』と書いている。(略)
 軍事同盟における『対等』は、双方が集団的自衛権を行使することで初めて対等となる。また、役割分担で積極的に責任を果たすには、現在の日米安保条約の片務的な規定を、双務的つまり対等なものに改正しなければならない。こういう課題をあいまいにしたまま、『緊密で対等な日米同盟関係をつくる』と言うのは、わが国民や米国政府を欺くものである」と。
 これとほぼ同じ主旨のことを、佐々淳行氏が、今朝の産経新聞「正論」欄に書いている。佐々氏は、元警察官僚で危機管理のプロフェッショナルであり、初代内閣安全保障室長としてわが国の安全保障の基盤構築に尽力したエキスパートである。佐々氏も「友愛外交」の矛盾を、明快かつ精緻に書いている。次に転載し、ご一読をお勧めする。

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●産経新聞 平成21年10月9日

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091009/plc0910090324002-n1.htm
【正論】初代内閣安全保障室長・佐々淳行 鳩山氏の友愛外交に「自己矛盾」
2009.10.9 03:23

≪社民路線で四分五裂の政策≫
 国政の根幹であるべき安保・外交方針も曖昧(あいまい)なまま、「鳩山友愛外交」が始まってしまった。反米的と疑われている理想主義の総理と教条主義といわれる外相の慌ただしい訪米でそのスタートを切ったが、今後、日米関係が悪化しないかと懸念するのは筆者だけではあるまい。
 憲政史上、鳩山内閣ほど奇妙な内閣はない。民主党に308議席を与え、発足時に75%という支持率を誇ったのに、有権者たちの70%以上が、自分たちが選んだ政権に「不安」を感じている。その原因は、民主党の安保・外交政策が定かでないことにある。民主党のバイブルとなったマニフェストにも北朝鮮の核ミサイルに具体的防衛策は何も書かれていない。
 幹事長の小沢一郎氏は国連至上主義的な発言が目立つ。さらに安全保障感覚の異なる社民党との連立で政策協定し、福島瑞穂氏を入閣させたから、民主党の安保・外交政策は四分五裂となった。
 二大政党論からいえば、社民党との連立は大失敗だ。選挙大敗後の自民党の惨状では、国民は、民主党が安保・外交で現実路線を歩むことを期待せざるを得ない。何をするか分からない隣国北朝鮮の脅威に「友愛」「子育て予算」で対抗できないことは誰もが分かっている。民主党の責任は重大である。国民が納得する安保・外交方針の確立が急務だ。

≪条約改定でもなければ無理≫
 初訪米で鳩山総理は、中曽根総理とレーガン大統領時代の「ロン・ヤス」に対抗して、「ユキオ・バラクの信頼の絆(きずな)ができ、温かい雰囲気だった」と自画自賛した。だが敢(あ)えて言えば、それは離反の気配をみせた「保護国日本」をつなぎとめるため、カート・キャンベル国務次官補ら知日派が争点をすべて先送りして演出した友好劇である。日米安保条約はただの友好親善条約ではなく、「軍事同盟」であることを銘記すべきだ。
 鳩山総理が「緊密で対等な日米関係」を宣言したとき、筆者は淡い期待を抱いた。自民党も左派勢力も果たせなかった「平成維新」と呼ぶにふさわしい無血革命を、選挙という平和的合法的な手段で成就した。積年の宿痾(しゅくあ)を治す大胆な政治・行政改革はすでに始まった。だから安保・外交でも、米国の「保護国日本」を米国と対等な独立主権国家として再興してくれるのかと期待したのだ。
 そのためには、自民党ができなかった「集団的自衛権」の内閣法制局解釈を改め、日米安保条約第5条を攻守同盟に変え、第6条の基地提供、思いやり予算など、世界に例のない条約上の義務としてのホスト・ネーション・サポート(駐留国支援)を軽減しなければならない。「地位協定」は、同条約の付属協定にすぎず、改定しても対等にはなれない。軍事的には日本は米国の「保護国」であり、安保条約と「対等の日米関係」という二つの概念は、安保条約そのものを改定しないかぎり両立しない自己矛盾なのである。
 約二千億円の協定外の思いやり予算や沖縄米海兵隊のグアム移駐経費六千億円の負担など、それを放置してきた自民党の不作為責任は重い。だが鳩山総理はオバマ大統領に第5条、第6条をそのままにして条約堅持を確約した以上、沖縄の基地提供も思いやり予算も、条約上の国家の義務として受忍せざるを得ず、「対等な日米関係」と矛盾するのである。

≪極端な独断専行は許されぬ≫
 次は「核の傘」である。安保条約の本質は米国の核抑止力(核の傘)の問題だ。「核のない世界」の国連決議を主導したオバマ・ヒラリー(クリントン)政権は、就任から9カ月が経った。首脳会談で鳩山総理はオバマ大統領に「核の傘」についてのコミットメント(確約)をはっきりと求めるべきだった。それどころか、対等関係への選択肢の一つである「核(武装)カード」を捨て去り、「非核三原則」を強調して外務省に「密約」の調査を命じている。
 核抜きの安保条約は意味がない。ユキオ・バラク関係が「チェンジ」を合言葉とする思考回路の似た二人の理想主義者の束(つか)の間の意気投合でなければよいが…。
 今回外遊で中国に提案した「東アジア共同体構想」も問題だ。覇権国家を目指す中国を利し、日本が中国の属国化する危険性と、欧米、とくに米国の人たちに疑心暗鬼を招く恐れがある。
 核を保有する軍事独裁大国・中国と経済技術大国・日本の連携は欧米にいらぬ疑念を生むことにもつながる。
 最後に、鳩山総理は祖父の言を借りて「友愛」に基づく各国協調を訴えたが、国際社会はそれほど甘くない。温室効果ガス25%削減の国際公約も唐突で無謀だ。日本の経済成長や国民の負担増にかかわる公約だから、国民の合意が必要だった。ある世論調査によると、民主党の大勝は「自民党への嫌悪」(58%)の影響が大きい。マニフェストを要因とするもの10%、「鳩山総理」はわずか2%であった。国民は極端な独断専行を鳩山総理に信託、授権していないのである。(さっさ あつゆき)
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