仮 定 さ れ た 有 機 交 流 電 燈

歴史・文化・環境をめぐる学術的話題から、映画やゲームについての無節操な評論まで、心象スケッチを連ねてゆきます。

三宝絵研究会第2回集会

2005-11-23 13:40:39 | 議論の豹韜
火曜は成城大学にて、共同研究の「三宝絵研究会」第2回集会が開かれました。今回はわが心の師(?)、増尾伸一郎さんのご報告で、タイトルは「道慈と大安寺大般若会」。

『三宝絵』の下巻は諸寺法会の縁起譚がまとめられていて、大安寺の大般若会は第十七話です。今回のご報告は、同話の構成と素材について考察した基礎的なもの。前者では、a)大安寺の来歴・b)道慈による大般若会始修・c)『大般若経』の霊験の3部構成になっていることをあらためて確認、後者では、天平資財帳・寛平縁起のほか、『大安寺碑文』『三宝感応要略録』の重要性を指摘されていました。
私は、奈良期に『大般若経』へ対雷の霊験が期待されてゆく理由(天平資財帳、『続紀』にみる道慈の大般若会始修申請、道行による奉為伊勢大神の大般若経書写などもこの文脈です)、時代が降るに従い縁起類から舒明天皇の業績が消えてゆく理由などに関心があったので、早速に質問。増尾さん自身、明確な答えはまだみつけられていないようでしたが、自分でも調べてみたい気がしました。次回は私が報告ですし……でも、増尾さんのネタを横取りしてしまうことになるのでまずいでしょうね。

実はいまだ、自分がいかなる問題意識をもって『三宝絵』と向きあうべきか、見通しを持てていないのです。このところ出講の行き帰り、電車のなかで『三宝絵』を広げているのですが、「おっ」というようなネタはみつかりません。院生のとき、良弁を調べている関係から石山寺を扱い、その縁起の展開を跡づけるなかで『三宝絵』にも触れたのですが……日本宗教史懇話会サマーセミナーなどで報告させていただいたにもかかわらず、以後ずっと封印し論文化もしていない情況です。それを蒸し返すのも気が乗りませんし……。今のところ、比叡懺法のところに出てくる『提謂経』に着目し、その日本における展開を『三宝絵』に結びつけて考えるか、あるいは長谷菩薩戒の話に出てくる樹木伐採のモチーフを調べ、仏像製作と伐採抵抗との関わりについて論じようかと考えていますが、どちらが有効に展開しそうか……。資料を集めて、年内には見極めていきましょう。

終了後の飲み会は、冬らしくお鍋主体。久しぶりにたくさん食べました。しかも、ほとんど篠川さん、増尾さん、小林さんのおごり状態。ごちそうさまでした。
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