ちいさなさえずり

柏崎と刈羽の現在の鳥を柏崎の人が柏崎から発信していく。

野鳥方言名 セキレイ類

2017-02-28 05:37:41 | さえずり民俗学

(キセキレイ、セグロセキレイ、ハクセキレイ) 

 門出集落においては、黄色いキセキレイ、白黒のセグロセキレイとハクセキレイの3種類を見ることができます。その方言名は、“いしこなげ”であり、3種を特に区別していませんでした。しかし、この方言名は人家にも営巣していて、比較的人に馴染みのあるキセキレイを指すことが多いようです。

 隣接の旧石黒村においても、“いしこなげ”と“いしこなぎ”でした。この場合の“ぎ”と“げ”は、同地における発音のしかたによるもので、同意であると考えています。旧高柳町においては、“いしなげ”もありましたが、いわゆる石投げか、“いしこなげ”の原形と考えられる“いしくなぎ”の変形なのかは分かりませんでした。“いしくなぎ”が持つ本来の意味は、尾を上下に動かして石にふれることであり、室町時代からの古名です (⓵) 。川原に棲むこの鳥の行動に石投げに通ずるものを見て、門出集落で“いしこなげ”になったと考えれば、“いしなげ”は石投げになります。しかしながら、“いしこなぎ”という使われ方もあり、これは原形である“いしくなぎ”の3文字目が“く”から“こ”に変形したものです。“いしくなぎ”が“いしこなぎ”になり、さらに“いしこなげ”やいしなげ”になったと考えていいのでは思っています。全国の方言が記録されている『日本鳥名由来辞典』(②)や『日本鳥類大図鑑Ⅰ』(③)にも、石投げを意味する方言名はありませんでした。

 新潟県南西部で富山県や長野県との境にある糸魚川市の言葉を記録した『糸魚川言語地図データ集上』(④)においては、セキレイを“いしくなぎ”“いしくなげ”とし、“あおしげ”を(黄)セキレイとしています。ここでは、AOは黄を表わす古い言葉とありました。また、“しりふり”、“しりたたき”、“いしわり”等も記録してありましたが、石投げに繋がる言葉はなかったです。

 “いしこなげ(ぎ)”、及び“いしくなぎ”と同語彙の方言名は、『日本鳥類大図鑑Ⅰ』のキセキレイ欄(和名索引P8)(⑤)にはなかったので、近い語彙を拾い出してみました。“いしくない”(長野県)、“すこなぎ”(岩手県)“、”たぶんくなぎ”(鹿児島県)でした。

 また、『日本方言地図5集201~250』(⑥)には、“くなぐ”に由来するとするものが、青森県、秋田県、岩手県、山形県、新潟県、長野県の連続した地域、及び琉球の広い地域、及び近畿に数地点あり、古い文献に現れる語形としています。

 さらに『日本鳥類大図鑑Ⅰ』(⑦)になかった“ISIKUNAGI”も、新潟県や長野県に多く、山梨県、京都府、兵庫県にありました。古い言葉が、変わらずにいくつかの地方に残った方言同圏論の例と考えています。“石”に通じる方言名としては、同書に、“いしたたき”が、道南、山形県、新潟と福島の県境、北陸西部、四国北半、九州大方の地域にある、とありましたが、いわゆる“石投げ”はありませんでした。このことからも、前出の“いしなげ”は、“いしこなげ”の短縮形と考えていいと思います。

 セグロセキレイの欄(同P12~13)(⑧)には、“いしくない”(長野県)のみでした。長野県においても、黄色いキセキレイ、白黒のセグロセキレイの識別をあまり意識していなと考えていいと思います。

 ハクセキレイについては、これに関わる方言名はありませんでした(⑨)。ハクセキレイは、もともと冬鳥として本州に渡ってきていたものが、数10年前から、夏もそのまま本州に残り、繁殖もするようになった鳥です。ハクセキレイに方言名が少ないのは、このように最近になってその姿を見ることできるようになったことに加え、その色彩がセグロセキレイに似ているため、この両者を識別していなかったものと考えていいと思います。

 柏崎市においては、旧高柳町と同じ方言名はありませんでした。柏崎市街地は海岸沿いにあることから、キセキレイよりセグロセキレイが多いです。さらに最近は、セグロセキレイよりハクセキレイの方が多いです。しかしながら、これらの白黒セキレイの方言名は両者ともありませんでした。

  

(⓵): 柿沢亮三、菅原浩『日本鳥名由来辞典』P38柏書房(1993.03))

(②) :柿沢亮三、菅原浩『日本鳥名由来辞典』P38柏書房(1993.03)

(③) :清棲幸保『日本鳥類大図鑑Ⅰ』和名索引P8、P12~13、P15㈱大日本雄弁会講談社(S27(1952).11)

(④): 柴田武『糸魚川言語地図データ集上』P260~261秋山書店(1998.11)

(⑤) :清棲幸保『日本鳥類大図鑑Ⅰ』和名索引P8㈱大日本雄弁会講談社(S27(1952).11)

(⑥) :『日本方言地図5集201~250』(国立国語研究所研究報告30-1~6『日本方言地図第5集201~250』P37国立国語研究所(1972)

(⑦):清棲幸保『日本鳥類大図鑑Ⅰ』和名索引P8、P12~13、P15㈱大日本雄弁会講談社(S27.11)

(⑧): 清棲幸保『日本鳥類大図鑑Ⅰ』和名索引P12~13(㈱大日本雄弁会講談社(S27(1952).11)

(⑨) :清棲幸保『日本鳥類大図鑑Ⅰ』和名索引P15㈱大日本雄弁会講談社(S27(1952).11)

 

 キセキレイ

 

 セグロセキレイ

 

 ハクセキレイ

 

 

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« シロハラ | トップ | ツグミ »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
初めまして、コメント失礼します (すどど)
2018-03-04 22:16:04
セキレイが尾を動かすさまが石工(石屋さん)の仕事をしている様子に似ているので「石工なギ」と呼ぶのだと、祖父母世代の方から聞いた覚えがあります。

「ギ」は私が思うに「サギ」や「シギ」「トキ」などの名につくように、鳥を表す音かもしれません。

コメントを投稿

さえずり民俗学」カテゴリの最新記事