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高齢者の睡眠薬・抗不安薬の危険性

2020-02-09 10:26:41 | 
代謝が悪く排泄能力が衰えた高齢者が睡眠薬や抗不安薬を服用すると、認知機能の低下や歩行がおぼつかなくなるといった副作用が出る危険性が高いようです。

こうした症例は「薬剤起因性老年症候群」といい、海外では問題視されてきましたが日本では長らく放置されています。

日本の睡眠薬・抗不安薬のほとんどを占めるベンゾジアゼピン(BZ)系薬剤の危険性を始めて指摘したのは日本老年医学会です。

2005年に作成した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」で、BZ系薬剤を含む特に慎重な投与を要する薬物リストを公表して、主に75歳以上を対象に注意を促しています。2015年に改訂版では、使用するべきでないとさらに踏み込んでいます。

その間に消費されたBZ系薬剤の薬剤量の推移は以下のようになっています。厚生労働省の「社会医療試料行為別統計」で催眠鎮痛剤・抗不安剤の1か月間の薬剤量を75歳以上に限って集計すると、2003年は約16億円となっています。

10年後の2013年には25億円を突破し、2018年が約19億円となっていますが、先発品の単価は薬価改定で3割前後引き下げられていますので、使用量はあまり変わっていません。これを見る限りガイドラインの警告は全く生かされていません。

海外と比較すると、国連の国際麻薬統制委員会の報告書によれば、各国のBZ系薬剤を含む睡眠薬の消費量をまとめた統計で、2015年の日本の人口当たりの消費量は第1位となっています。

その後イスラエルなどの消費量が急増したため、2018年には5位になりましたが、米国の倍以上で英国の約20倍となっています。

BZ系薬剤などによる薬剤起因性老年症候群の被害は、正確には把握できませんが、専門家は認知症の疑いでやってくる患者の1〜2割は薬剤が原因としています。厚生労働省が推計した2020年の認知症患者数は602万〜631万人としています。

その1割が薬剤によるとすると60万人、2割だと120万人となります。これはかなり大雑把な推計ですが、過小評価ではないという実感があるようです。

厚生労働省も2018年5月に「高齢者の医薬品適正使用の指針」で、薬剤起因性老年症候群と主な原因薬剤の一覧表を公表し、認知機能低下の危険性などを明記しました。このように若干の対策も取られていますが、BZ系薬剤の使用はほとんど減少しないようです。

これは患者が欲しがるという面もありますが、BZ系薬剤に代わるような良い薬が全くないことから医療サイドも対応が難しいようです。少なくとも飲みすぎになったりしないような、適正な処方を徹底してほしいものです。


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