ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

病気を治すのは薬ではない

2018-06-10 10:38:28 | 
このタイトルは、このブログのサブタイトルとして小さく書いてある「病気を治すのは薬ではなく自分自身」の一部ですが、今回その解説をしてみようと思います。

最近友人とこういった関係の話をする機会があり、漠然と思っていたことをまとめることができました。

これを具体的に書くことはかなり難しいのですが、単なるイメージとしては、何かの病気の状態を10として治って健康な状態を0とします。どんな特効薬であってもそれによって回復するのは8まで程度が限界と思います。

それを0まで回復するのは、ヒトが持つ免疫も含めた恒常性維持機構(ホメオスタシス)という、体を常に健康な状態に保とうする力です。例えば熱が出れば平熱まで下げたり、どこかが傷ついたり炎症を起こしたりするとそこを修復し元に戻す力です。

なぜそう考えるかにつては、私の30年余りの新薬の研究開発で得た情報を総合したものですので、ここでは省略しますが、臨床試験を例に挙げてみます。

臨床試験については以前このブログでも取り上げましたが、通常開発する新薬、対照薬(一般にその病気で最もよく使われている薬を選択します)、およびプラセボ(偽薬、ブドウ糖など効果も害もないものを使います)の3種を投与した場合の有効率を比較することになります。

この試験は実施する医師も自分が患者に投与した薬が上記3種のどれになるのかが分からないようになっており、そのためこの試験を2重盲検試験と呼んでいます。

ここでプラセボを入れるのは、患者が新しく開発されたよく効く薬という言葉によって、病状が自然に良くなる効果が出てしまうためです。これをプラセボ効果と呼んでいますが、非常に興味深い現象といえます。

対象となる病気の種類にもよりますが、臨床試験の結果はプラセボの有効率が20~30%、対照薬が50~60%、新薬が60~70%程度なることが多いようで、この程度の有効率が出ると新薬として認可されるということになります。

この数値にはいろいろと意味があり、例えばプラセボについては、ある病院の集計では対照薬には勝ったが、プラセボに負けたという笑い話のようなことも起こるようです。なぜこんなことが起こるのか治験担当者に聞いてみると、あの病院は患者の面倒見が良いからというわけのわからない答えが返ってきました。

この新薬の60~70%しか有効にならないというのも、実際に薬を作る立場から考えると奇妙なことです。

このブログは簡単にまとめるつもりでいましたが、予想以上に長くなってしまいましたので、中途半端ですが次回に続けます。

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