がんの予防や治療における漢方治療の存在意義を考察しています。がん治療に役立つ情報も紹介しています。
「漢方がん治療」を考える
612)白花蛇舌草+半枝蓮+雲南重楼による抗がん作用の相乗効果
図:白花蛇舌草(ビャッカジャゼツソウ)にはウルソール酸やオレアノール酸などの五環系トリテルペノイドなどの成分による抗腫瘍活性が報告されている(①)。半枝蓮(ハンシレン)に含まれる様々なフラボノイドやアルカロイドは抗炎症作用や抗がん作用が知られている(②)。雲南重楼の根茎に含まれるサポニン類(重楼サポニン)は、がん細胞の増殖抑制や細胞死誘導などの直接的な抗がん作用が報告されている(③)。これらの3種類の抗がん生薬はそれぞれが基礎研究や臨床研究によって、がん治療における有効性が示されている。3種類を組み合せた漢方薬は、それらに含まれる様々な抗がん成分と、それらの成分による多彩なメカニズムによって、抗がん作用を相乗的に増強できる。
612)白花蛇舌草+半枝蓮+雲南重楼による抗がん作用の相乗効果
【台湾の医療ビッグデータは漢方薬によるがん患者の延命効果を明らかにしている】
台湾では国民全体の医療情報(年齢、性別、病名、治療内容など)のデータベース化が進んでいます。「全民健康保険研究データベース(National health insurance research database; NHIRD)」や「難治性疾患患者登録データベース(Registry for Catastrophic Illness Patients Database)」を解析することによって、がん患者に使用される生薬や漢方方剤(複数の生薬を調合した薬剤)や生薬の種類や、延命効果のある生薬や漢方方剤の種類も明らかになっています。
台湾では、抗がん剤治療の副作用軽減の目的で漢方薬や鍼治療が積極的に利用されています。
台湾の医療ビッグデータを解析した疫学研究で、漢方治療を受けたがん患者は漢方治療を受けなかったがん患者より生存率が高いことが明らかになっています。
膵臓がんや肺がんや乳がんや白血病など多くのがんで漢方薬(中医薬)の延命効果が報告されています。以下のような報告があります。
Complementary Chinese Herbal Medicine Therapy Improves Survival of Patients With Pancreatic Cancer in Taiwan: A Nationwide Population-Based Cohort Study.(台湾において補完的な漢方治療は膵臓がん患者の生存率を高める:全国集団ベースのコホート研究)Integr Cancer Ther. 2018 Jun; 17(2): 411–422.
この研究では、1997年から2010年に台湾難治性疾患患者登録データベース(Taiwanese Registry for Catastrophic Illness Patients Database)に登録された全ての膵臓がん患者を対象とし、種々の条件(年齢、性、診断時期など)を一致させた1:1マッチング法を用いて、漢方治療を併用した386人と、漢方治療を併用しない386人を比較解析しています。
その結果、漢方治療を90〜180日間受けた群では、死亡率の調整後ハザード比 は0.56(95%信頼区間 = 0.42〜0.75)で、180日間以上漢方治療を受けた群の死亡率のハザード比は 0.33(95%信頼区間 = 0.24〜0.45)でした。
ハザード比(Hazard ratio)というのは追跡期間を考慮したリスクの比です。この論文のリスクは死亡率です。
この報告において、漢方薬非使用群に対する漢方薬使用群の膵臓がん患者の死亡率のハザード比が0.33というのは、追跡期間中に漢方薬を服用した膵臓がん患者は漢方薬を服用しなかった膵臓がん患者に比べて死亡率が67%減少したという意味になります。
95%信頼区間とは,仮に同様な試験を100回した場合に95回はこの値の幅の中に入るという意味です。95%信頼区間 = 0.24-0.45というのは、同様な試験を100回行なえば、95回はハザード比が0.24-0.45の間に入ることを意味します。つまり、膵臓がん患者が漢方治療を併用すると、死亡のリスクが4分の1から半分以下になるという結果です。
この論文で、単一の生薬で最も使用頻度が高かったのは白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)でした。
台湾医療ビッグデータは乳がんでも漢方治療が死亡率を低下させることを明らかにしています。
Adjunctive traditional Chinese medicine therapy improves survival in patients with advanced breast cancer: a population-based study.(中国伝統医学による補助的治療は、進行した乳がん患者の生存率を向上させる:集団ベースの研究)Cancer. 2014 May 1;120(9):1338-44
全民健康保険研究データベース(National health insurance research database; NHIRD)を使用して、2001年から2010年までの進行乳がん患者を対象に、タキサンを投与された進行乳がん患者729人を解析した後ろ向きコホート研究です。
729人のうち、115人(15.8%)の患者は漢方薬(中医薬)の使用者であり、614人の患者は漢方薬の非使用者でした。
非使用者と比較して、漢方薬の使用は全死因死亡率の有意な低下と関連していることが示されました。中医薬の使用が30〜180日間のがん患者では、全死因死亡率の調整ハザード比は0.55 (95%信頼区間:0.33-0.90)であり、180日以上の使用者の全死因死亡率の調整ハザード比は0.46(95%信頼区間:0.27-0.78)でした。
使用頻度の高い生薬の中で、死亡率を減少させるのに最も効果的であることが判明したのは、白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)、半枝蓮(はんしれん)、黄耆(おうぎ)でした。
【がん患者の漢方治療に頻用される白花蛇舌草と半枝蓮】
がんの薬草治療(中国や台湾の中医学や韓国の韓方医学や日本の漢方医学)で最も多く使用される抗がん生薬は白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)と半枝蓮(はんしれん)です。台湾医療ビッグデータの解析で、乳がんの漢方治療に関して以下のような論文があります
Hedyotis diffusa Combined with Scutellaria barbata Are the Core Treatment of Chinese Herbal Medicine Used for Breast Cancer Patients: A Population-Based Study(白花蛇舌草と半枝蓮との組み合わせは乳がん患者に用いられる漢方薬の中核治療法である:人口集団に基づく研究)Evid Based Complement Alternat Med. 2014; 2014: 202378.
この研究は、台湾の全民健康保険研究データベース(Taiwan National Health Insurance Research Database)に記録された乳がんに使用される漢方薬処方の中核的治療法を明らかにすることを目的に行なわれています。
乳がんの外来患者4,436人に対して発行された合計37,176件の処方箋が解析されました。
単一の生薬として最も使用されているのが白花蛇舌草(41.9%)でした。
最も多い組合せは、白花蛇舌草(Hedyotis diffusa)と半枝蓮(Scutellaria barbata)でした(10.9%)。この報告では、乳がん患者に使用する頻度が高い生薬として以下の順番になっています。
表:台湾医療ビッグデータの解析による乳がん患者に使用される単一生薬のトップ10。2008年の全処方箋37,176の内訳
複数の生薬を使う時に、がん治療で最も頻度が多いのが白花蛇舌草と半枝蓮の組合せです。
この傾向は中国も韓国も日本も同じです。
【白花蛇舌草の抗がん成分としてトリテルペノイドが研究されている】
白花蛇舌草(学名はOldenlandia diffusaあるいはHedyotis diffusa)は本州から沖縄、朝鮮半島、中国、熱帯アジアに分布するアカネ科の1年草のフタバムグラの根を含む全草を乾燥したものです。フタバムグラは田畑のあぜなどに生える雑草で、二枚の葉が対になっています。高さ10~30cmで茎は細く円柱形で、下部から分岐し、直立または横に這います。(下図)
抗菌・抗炎症作用があり、漢方では清熱解毒薬として肺炎や虫垂炎や尿路感染症など炎症性疾患に使用されます。さらに最近では、多くのがんに対する抗腫瘍効果が注目され、多くの研究が報告されています。
白花蛇舌草の煎じ薬は、肝臓の解毒作用を高めて血液循環を促進し、白血球・マクロファージなどの食細胞の機能を著しく高め、リンパ球の数や働きを増して免疫力を高めます。脂肪肝やウイルス性肝炎やアルコール性肝炎などの各種肝障害で傷ついた肝細胞を修復する効果もあります。
消化管の悪性腫瘍(胃がんや大腸がんなど)や、肺がん、肝臓がん、乳がん、卵巣がん、白血病など各種の腫瘍に広く使用され、良い治療効果が報告されています。
飲み易く刺激性が少ないので、中国では白花蛇舌草の含まれたお茶や煎じ薬はがんの予防薬や治療薬として多く使われています。
成分としてヘントリアコンタン(Hentriacontane)、ウルソール酸(Ursolic acid)、オレアノール酸(Oleanolic acid)、stmigastrol、β-シトステロール、クマリンなどが分離されています。
白花蛇舌草の抗腫瘍効果に関する研究は、中国、シンガポール、台湾、英国、米国、日本などの異なる多くの研究グループが報告していますので、白花蛇舌草の抗腫瘍作用は世界的に注目されているようです。
抗腫瘍効果の作用機序は使用したがん細胞の種類の違いなどによって結果が異なりますが、様々な機序でがん細胞にアポトーシスを誘導する効果が認められています。白花蛇舌草の抗がん作用の活性成分として、ウルソール酸やオレアノール酸などの五環系トリテルメノイドの関与が多く報告されています。
トリテルペノイドとは、5個の炭素からなるイソプレン単位が6個結合して30個の炭素原子からなる脂質性の化合物群を指しています。多くは4環あるいは5環の環状構造をつくっており、ステロイドやサポニンなど植物成分として存在しています。
五環系トリテルペンには、抗エイズウイルス作用や抗腫瘍効果があることで注目されています。
五環系トリペルペノイドの中で、特に抗腫瘍効果が注目されているのが、ウルソール酸(Ursolic acid)、オレアノール酸(Oleanolic acid)、マスリン酸(maslinic acid)、ベツリン酸(betulinic acid)などです。これらは、様々ながん細胞を使った実験で、がん細胞のアポトーシス誘導、血管新生阻害作用、毒物による障害から肝細胞を保護する作用などが報告されています。
ウルソール酸とオレアノール酸は白花蛇舌草に多く含まれています。マスリン酸はオリーブの果肉や葉に含まれます。
ベツリン酸は、白樺(シラカバ)の木の皮(樹皮)に多く含まれていて、betulic acidの名前は白樺の学名のBetula platyphyllaに由来します。白樺に寄生するチャーガ(カバノアナタケ)にも多く含まれています。
これらの五環系トリテルペノイドの抗腫瘍作用のメカニズムとして、上皮成長因子受容体(EGFR)やマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)などの増殖関連蛋白のリン酸化を阻害して、増殖シグナル伝達を抑制する作用などが報告されています。
白花蛇舌草の五環系トリテルペノイド以外の成分にも、様々なメカニズムによる抗がん作用が報告されています。解毒力や免疫力を高める成分も含まれています。白花蛇舌草の抗がん作用はこれらの複数の総合作用とかんがえるのが妥当です。
図:がん細胞では様々な増殖因子の受容体やマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)が活性化して増殖シグナル伝達系が亢進している。白花蛇舌草に多く含まれる五環系トリテルペノイドのウルソール酸とオレアノール酸は、がん細胞の増殖シグナル伝達系を阻害して、がん細胞の増殖、転移や浸潤、抗がん剤耐性、血管新生を阻害する。
【半枝蓮はがん細胞の酸化ストレスを高めてがん細胞を死滅する】
半枝蓮 (はんしれん)は学名をScutellaria barbataと言う中国各地や台湾、韓国などに分布するシソ科の植物です(下写真)。
アルカロイドやフラボノイドなどを含み、抗炎症・抗菌・止血・解熱などの効果があり、中国の民間療法として外傷・化膿性疾患・各種感染症やがんなどの治療に使用されています。
黄色ブドウ球菌・緑膿菌・赤痢菌・チフス菌など様々な細菌に対して抗菌作用を示し、さらに肺がんや胃がんなど種々のがんに対してある程度の抗腫瘍効果があることが報告されています。
漢方治療では、清熱解毒・駆瘀血・利尿・抗菌・抗がん作用などの効能で利用されています。
半枝蓮の抗がん作用に関しては、民間療法における臨床経験から得られたものが主体ですが、近年、半枝蓮の抗がん作用に関する基礎研究や臨床研究が多数発表されています。
米国のベンチャー企業が半枝蓮の抽出エキスを使って乳がんなどに対する効果を検討しており、有効性が報告されています。
中国医学で使用されている薬草の抗がん作用を検討する臨床試験としては、FDA(米国食品医薬品局)が承認した最初のものです。乳がんや膵臓がんなどで臨床試験が行われており有効性が報告されています。
基礎研究では、半枝蓮には、がん細胞の増殖抑制作用、アポトーシス(プログラム細胞死)誘導作用、抗変異原性作用、抗炎症作用、発がん過程を抑制する抗プロモーター作用などが報告されています。
さらに、がん細胞の解糖系と酸化的リン酸化を阻害してエネルギー産生を低下させ、がん細胞を死滅させる作用が報告されています。すなわち、半枝蓮はミトコンドリアでの活性酸素の産生を増やし、DNAの酸化障害からポリADPリボース合成酵素(PARP)が活性化され、NADを枯渇して解糖系を阻害してATPの産生を低下させ、酸化傷害によてミトコンドリアでの酸化的リン酸化によるATP産生も阻害するという機序です(下図)。
図:半枝蓮の成分はがん細胞のミトコンドリアでの活性酸素の産生を増やし、酸化的リン酸化を阻害してATP産生を減らす。さらに、DNAにダメージを与えてポリADPリボース合成酵素(PARP)を活性化し、NADを枯渇して解糖系を阻害する。これらの作用によってがん細胞のATPが枯渇して死滅する。
白花蛇舌草と半枝連は併用されることが多く、進行がんの治療では、白花蛇舌草は20~60g、半枝蓮は10~30g程度を1日量の目安として煎じ薬として使用されます。
例えば、ある民間療法の処方では白花蛇舌草と半枝蓮は2:1で使用されていて、白花蛇舌草65gと半枝蓮32.5gを1日量としてお湯で煎じて飲用するという方法があります。
白花蛇舌草と半枝蓮は中国の民間薬であり、がんに対する有効性は経験的なものですが、この2つの生薬の抗がん活性に関する科学的な研究が、日本や欧米の医学雑誌などにも掲載されるようになりました。
【古くからがん治療に使用されている七叶一枝花/雲南重楼】
動物実験や臨床経験などで抗腫瘍効果が知られている抗がん生薬として、白花蛇舌草・半枝蓮・竜葵・七叶一枝花・蛇苺・蒲公英・山豆根・紫根などがあります。
固形がんの場合、前述のように白花蛇舌草と半枝蓮の組み合わせの有効例が多く報告されています。 抗がん作用の強い薬草として七叶一枝花(シチヨウイッシカ)も有名です。
七叶一枝花は学名をParis polyphyllaと言い、は中国各地に分布しているユリ科の多年草です。高さ30~100cm、直径約1cmの直立の茎の上端に、通常7片の長楕円形の葉が輪生し(写真)七葉一枝花とも書きます。
薬用部位の根茎は古く「蚤休(そうきゅう)」と呼び「神農本草経」や「本草綱目」などにも記載されています。「草河車(そうかしゃ)」とも言います。
図:七叶一枝花はユリ科の多年草で、高さ30~100cm、直径約1cmの直立の茎の上端に、通常7片の長楕円形の葉が輪生し七葉一枝花とも書く。中国では、その根茎をがん治療に多く使用している。
薬理作用として、強い抗菌・抗炎症作用(清熱解毒、消腫)を持ち、様々な細菌やウイルスに対して強い抗菌・抗ウイルス作用を発揮し、炎症を抑え、腫れを軽減する効果があります。
さらに、抗がん作用、鎮咳・去痰作用、喘息を緩和する作用、鎮静作用・抗痙攣作用などが報告されています。
このような薬効により、がん治療の他、肺炎、気管支炎、喘息、脳炎、腫れもの、蛇咬傷、小児の熱性痙攣などの治療に使用されています。
煎じ液には通常3g~15gを使用し、がん治療には15~30gを使用しています。 ただし毒性もあり、過量に服用すれば悪心、嘔吐、頭痛がみられ、ひどければ痙攣が現れると言われています。 主成分のステロイド様サポニンのポリフィリンD(Polyphyllin D)には、様々ながん細胞に対してアポトーシスを誘導する効果が報告されており、肺がん、乳がん、消化器系のがん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、脳腫瘍、白血病など多くの悪性腫瘍に対して効果が報告されています。
がん治療における科学的研究として以下のような報告があります。
○ がん治療で使用される15種類の生薬について、消化器系のヒト培養がん細胞(胃がん、大腸がん、肝臓がん、食道がん)を用いて、抗腫瘍活性を検討したところ、七叶一枝花の抽出エキスが最も効果が高く、培養がん細胞の増殖を半分に抑制する濃度は10~30 マイクログラム/mlであった。Phytother Res. 2007 Nov;21(11):1102-4.
○ 七叶一枝花の根に含まれるディオスゲニル・サポニン(diosgenyl saponin)類にはマクロファージを活性化し、免疫増強作用がある。Bioorg. Med. Chem. Lett. 17(9):2408-2413, 2007
○ 中国では七叶一枝花は肝臓がんの治療に使用されている。七叶一枝花の根に含まれるPolyphyllin Dは、培養肝臓がん細胞のアポトーシスを誘導した。また、抗がん剤感受性を高める効果もある。Cancer Lett. 217: 203-211, 2005
○ 七叶一枝花の根に含まれるPolyphyllin Dは乳がん細胞に対して細胞死(アポトーシス)を誘導する効果がある。乳がん培養細胞を使った実験では、5μMの濃度で48時間処理するとがん細胞の半分がアポトーシスで死んだ。Cancer Biol Ther 4(11): 1248-1254, 2005
雲南重楼(学名:Paris Polypylla Yunnanensis)は七叶一枝花(Paris polyphylla)と同属のユリ科の多年草です。 中国・雲南省の1500m以上の高台で栽培され、中国では古来より重用されてきました。 食品としても利用されています。また、重楼エキス粉末を含有した健康食品も販売されています。
近年では、独自の成分である重楼サポニンの抗炎症、がん細胞のアポトーシス誘導効果、肝臓の解毒作用が注目されています。 抗がん効果があるとされる生薬のなかでも特に腫瘍抑制率が高いとされており、肺がん、肝臓がん、消化器系のがん、膵臓がん、脳腫瘍、白血病など多くの悪性腫瘍への有効性が示唆されています。
また、抗炎症作用があり、アトピー、乾癬など、広く炎症を抑える目的で古くから利用されてきました。
【白花蛇舌草+半枝蓮+雲南重楼の抗がん作用の相乗効果】
抗がん剤の有効性の判断は、何よりも腫瘍サイズの縮小(奏功率)であり、それも50%以下にならないと有効と判定されません。
QOL(生活の質)がいかに改善され、何か月にもわたって腫瘍サイズが不変のような薬剤があったとしても、現行の基準では無効と評価され、治療薬になる可能性はゼロです。
抗がん剤開発の過程では、生薬を始め多くの薬草の抗がん活性がスクリーニングされてきました。しかし生薬の抗がん作用のスクリーニングの過程ではがん縮小効果の強いことが選択の基準とされてきたため、がん縮小率は低くても延命効果という面から有用な生薬の多くが見逃されてきました。
抗がん生薬の多くは、腫瘍縮小率から評価すると、化学薬品の抗がん剤の効果に及ばないのですが、副作用が少なくしかも腫瘍の増殖を有意に抑制できるようなものは腫瘍の退縮につながります。腫瘍縮小率が0であっても、がん細胞を休眠状態にもっていけるものであれば延命効果は期待できます。このような薬剤は、従来の抗がん剤の評価法では無効と分類されるものですが、がんとの共存を目指す治療においては極めて有用と考えられます。
生薬には、毒性を示すアルカロイドだけでなく、抗がん作用や免疫増強作用を有するフラボノイドやサポニンや多糖類など抗腫瘍効果を有する成分が多く含まれています。
このような生薬を複数組み合せることによって、がん細胞の増殖を抑制し休眠状態に誘導することも、縮小させることも不可能ではありません。
がん細胞を死滅させる作用のある「抗がん生薬」の多くは感染症や炎症の治療にも用いられており、「清熱解毒薬」と言われることもあります。
「清熱解毒(せいねつげどく)」という薬効を西洋医学的に解釈すると、抗炎症作用(清熱作用)と体に害になるものを除去する作用(解毒作用)に相当します。
体に害になるものとして、活性酸素やフリーラジカル、細菌やウイルスなどの病原体、環境中の発がん物質などが考えられますが、「清熱解毒薬」には、抗炎症作用、抗酸化作用、フリーラジカル消去作用、抗菌・抗ウイルス作用、解毒酵素活性化作用、抗がん作用などがあり、がんの予防や治療に有用であることが理解できます。
白花蛇舌草の抗がん成分としてトリテルペノイドのウルソール酸(Ursolic acid)とオレアノール酸(Oleanolic acid)などが指摘されています。白花蛇舌草の煎じ薬は、肝臓の解毒作用を高めて血液循環を促進し、白血球・マクロファージなどの食細胞の機能を著しく高め、リンパ球の数や働きを増して免疫力を高めます。ウルソール酸やオレアノール酸などの五環系トリテルペノイドは細胞の増殖シグナル伝達系を阻害する作用が報告されています。多くのがんに広く使用され、良い治療効果が報告されています。
さらに半枝蓮はフラボノイドやアルカロイドなど多くの抗がん成分が含まれており、がん細胞の増殖抑制作用、アポトーシス(プログラム細胞死)誘導作用、抗炎症作用などが報告されています。 最近は、人間での臨床試験も実施されるようになり、臨床での有効性が報告されています。
雲南重楼には抗腫瘍活性の高いサポニン成分を多く含みます。がん細胞に対する直接的な増殖抑制作用や細胞死誘導作用があります。古くからがんの治療に使用され、その強い抗がん作用が多くの臨床経験で示されています。
つまり、これら3種類の組合せは、異なる成分と多様な作用メカニズムの相乗効果で、抗がん作用を高めることができます。しかも、副作用は極めて低いのが特徴です。 がんの漢方治療において、白花蛇舌草と半枝蓮と雲南重楼の組合せは試してみる価値はあると思います。
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