#608: オシャレな日本酒で乾杯

2014-03-18 | Weblog
毎週土曜日の日本経済新聞朝刊には『NIKKEIプラス1』という生活記事を主体とした別刷り紙面がついてくる。その第一面は「何でもランキング」という特集記事で、人気のスイーツだとか、観光地だとか、毎週いろいろなジャンルのランキングが掲載される。日頃そういうものにあまり関心が向かない蚤助ではあるが、3月8日の記事は思わず熟読してしまった。というのも「スパークリング日本酒で乾杯!!」というヘッドラインに惹かれたからである(笑)。

「スパークリング日本酒」とは発泡日本酒のことで、発泡性のある炭酸ガスを含んでいる日本酒である。近年、日本酒の多様化の一環として酒造各社が「発泡日本酒」に力を入れているというが、『NIKKEIプラス1』の記事によると、ラベルも一見してワインと間違えそうな見た目におしゃれな意匠で、口当たりのよい酒として発泡日本酒の人気が高まっているのだそうだ。何でも日本国内で行われるモータースポーツのイベントでは、表彰式に行われる「シャンパンファイト」にシャンパンの代わりに発泡日本酒が使われることも多いと聞く。

搾りたての清酒の中には溶存炭酸ガスによって微発泡性をもつものがあり、それを発泡清酒ということは知っていたが、この発泡日本酒はそれとは別物のようだ。炭酸ガスを含んでいるため、口にすると舌に刺激を感じる。澱によって濁っているもの(発泡濁酒)やシャンパンを思わせる透明度と泡立ちがあるものまで種類は様々、アルコール度数は通常の日本酒のおよそ3分の1に当たる5%程度のものもあるそうだ。冷やして飲むのが基本、戦前からあったもののようだが、20年ほど前から酒造各社が本格的に参入し始めたらしい。記事によれば、現在では100を超える銘柄があるという。

発泡日本酒の製法には2種類あって、ひとつはシャンパンと同様の「瓶内二次発酵方式」、もう一つは「炭酸ガス注入方式」である。

前者は、アルコール醗酵が止まっていない醪(もろみ)を火入れせず酵母が生きた状態で瓶詰めし、瓶の中でさらに醗酵を進め、炭酸ガスを瓶内に閉じ込める方法である。これはまさしくワインに対するシャンパンと同じ製法であり、日本酒としては純米酒に用いられることが多く、米の味わいが楽しめるという。また「炭酸ガス注入方式」は、その名のように酵母の働きを止めて瓶詰めし炭酸ガスを充填したものだが、実態はそんなに単純なものではなさそうで、水も加えず濾過もしていない原酒に炭酸ガスを入れてから10日ほど経ったときに醪を絞り、もう一度酵母を入れて醗酵させ、出てくる炭酸ガスを低温で溶存させて出荷するというもので、こちらはすっきりした飲み口が特徴だそうだ。


歓送迎会が多い今の時期、女性同士が集まる女子会にもぴったりな一品を、酒に詳しい日本酒きき酒師やソムリエとして活躍する女性の専門家11人に、女子会に向く発泡性日本酒を推薦してもらい、インターネット市場での売れ筋も加味して31種を選定し、それを各専門家が試飲したうえで、味わいや香り、ボトルなどのデザイン性、コストパフォーマンスなどから順位をつけて10品選ぶというのが、今回の記事の趣向であった。

この中で、全国の酒造メーカーの銘酒を抑えて、最高得点376ポイントを獲得し圧倒的な一位を獲得したのが、青森市・西田酒造店の「FLOWER SNOW」である。


青森市の地酒「喜久泉」というより、銘酒「特別純米酒 田酒」の酒蔵の一品といった方が全国的な知名度が高いであろうか。口に含むと、最初は「酸味が勝る感じ」(ANAビジネスソリューション研修業務チーム主席部員・上田紀子さん)がするが、続けて純米酒らしいコクがあり「米をかむ時のような自然な甘さを感じる」(酒ジャーナリスト・葉石かおりさん)と評価されている。開栓すると勢いよく白い沈殿物が浮き上がり、瓶内で泡雪のように細かい澱が舞う濁り酒である。青森県産の酒造りに適した米「華吹雪」に八甲田山系の地下水と自社酵母を加えて熟成させた、とある。

「キリッとしてキレもよく、食中酒にお薦め」(酒料理研究家・渡辺ひと美さん)だといい、にごり部分を酒の重量比で2~3割にとどめているため、のど越しもよさそうだ。ボトルのラベルなどの外観はワインを思わせ、「コストパフォーマンスも非常によく、日本酒好きにお薦め」とは新宿高島屋和洋酒売り場担当・福島美名子さんの弁である。アルコール度数は16度、720ミリリットル、1350円とのこと。2月中旬から5千本の限定生産で、主に東北・関東の酒販店に出荷しているらしい。この記事を読んで、早速飲んでみたくなり、ネット等の通信販売を調べてみたのだが、既に入手は困難のようであった。ああ、しばらくは幻の酒として夢に出てきそうだ(笑)。

なおランキング2位以下もいずれ劣らぬ銘酒ぞろいで、福井県鯖江市・加藤吉平商店の「梵 プレミアムスパークリング」(304ポイント)、山口県岩国市・旭酒造の「獺祭(だっさい)スパークリング50」(264ポイント)のベスト3に加え、「発泡純米 ねね」(山口県岩国市・酒井酒造)、「MIZUBASHO PURE」(群馬県川場村・永井酒造)、「八海山 発泡にごり酒」(新潟県南魚沼市・八海醸造)、「月の桂 吃驚仰天」(京都市・増田徳兵衛商店)、「発泡清酒 ラシャンテ」(秋田県大仙市・鈴木酒造店)、「奥の松 純米大吟醸スパークリング」(福島県二本松市・奥の松酒造)、「本生にごり酒 スパークリング大自然」(長野県伊那市・宮島酒店)と続く。

このリストを見るだけでノドが鳴る。いつの日かじっくり味わってみたいものだが、ご丁寧にも記事には飲みきれなかった場合の注意もあった。「きちんと栓をしておけば数日なら発泡性も残る。泡が抜けても日本酒としてうまみは残る」(トータル飲料コンサルタント・友田晶子さん)そうだが、大丈夫、蚤助は飲み残すことはまずありませんから…(笑)。ちなみに開栓の際にはシャンパンを開ける際のような注意が必要とのこと、さもなければ悲惨な結末が待っていそうだ。なにしろ「酒の一滴、血の三滴」である(笑)。

空き瓶が無言で語る酒の量(蚤助)



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