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#139: 三上の発想

2009-05-04 | Weblog
松本清張と太宰治は1909年の同年生まれ。どちらも今年は生誕100周年だそうだ。清張は広島生まれの福岡育ちの労働者上がり、太宰は津軽の名家の生まれ、というように、この二人は生まれや育ちはもちろん扱った題材も作風もまったく違うが、没後今なお多くの読者を魅了してやまない点では比類のない作家ということであろう。

清張の方は、一連のミステリー小説が長編・短編を問わず何度も映画やテレビでドラマ化されてきたが、生誕100周年ということもあってか、ここにきてまた次々と映画・テレビで素材として取り上げられるようだ。一方、太宰の方は生誕100周年記念ということで、生地の近くの津軽鉄道では顔写真入りの切符を売り出すという記事が某新聞に出ていた。その記事には、顔写真だけではなく太宰の何か名文句を載せたらいいとして「生まれて、すみません」はどうかというアイデアを出したが、このご時世にはむしろ名作「津軽」から「元気で行こう。絶望するな」の方がいいとその記事は結んであった(笑)。

その太宰の文学の師匠である井伏鱒二に、ある作家志望の若者が自作の原稿を持ち込んで見せた。井伏は原稿を読んで厳しい批評をする。「君は下手だね」と言われて若者が小さくなっていると、井伏は優しい声で「でも、最初はみんな下手だったんだ」…というエピソードがある。

この4月から新しい環境で仕事をしたり学んだりし始めた人も多いはず。最初は下手でもいずれ上手になるかというと、必ずしもそうはならないところがこの世の習い。要するにアマチュアからプロフェッショナルになれるかどうかが肝心なところだろう。仕事に対する回路を常にオンにしてあるのがプロというもので、飲み会やインターネット、アフターファイブでの活動などから得た情報を常に自分の仕事に結びつけているはずである。寝ている間はどうかといえば、情報の発酵プロセスに過ぎない。

得た情報からどういうアイデアをひねり出せるかというのは、職業や趣味のいかんを問わず大事なことである。昔から「発想の極意は三上と三中にあり」と言われているようだ。「三上」は残念なことに「みかみ」ではなく「さんじょう」である。すなわち「馬上、厠上、枕上」である。「三中」は、どこかの中学校の名前ではなく「散歩中、湯(風呂)中、乗車中」だそうである。ちなみに、外国ではアイデアの生まれる場を「3B」ということがあるらしい。こちらは「Bed, Bath, Bus」である。

所詮、我々の川柳に対する回路はいつもオンにあるわけではないので単なるアマチュアに過ぎないわけだが、そういえば川柳もふと句想が浮かぶのが「三上」、「三中」あるいは「3B」であることが多いが、そういうときに限って紙と鉛筆が見当たらなかったりする。けやぐ柳会の三上(みかみ)蝉坊氏は、句ができると携帯電話のメモ機能を使って保存しているようだ。これぞまさしく「三上の発想」(笑)。

「さっきまで名句浮かんですぐに消え」(蚤助)

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1 コメント

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連日のブログご苦労様です。 (みかみ蝉坊)
2009-05-06 11:12:37
「三上の発想」ときたので、びつくり!
コメントを要求するシグナルかとワンキー計上です。
前段の共通項をもつ好対照な二人では、以前から蚤助さんから聞いていた、サッチモvsジョージルイス、国内では高橋竹山vs後藤銀竹の話が象徴的に面白く、そういうパターンでずっと思っていたのが、清張vs司馬遼太郎、また清張vs柳田国男。小生、清張の古代史マニアでした。当然「出自/人生」が関わっていることとは思いますが、○○観などという難しい話ではなくて「目線」の角度の差が面白いと思っていました。
「目線」ということでは、この国をはじめて「この国」といったという司馬の目線というパターンから、『民藝」の先生方の目線に同様なものを感じて、30年来の「民藝」に対する違和感に自分なりの回答を得ることができました。ただし棟方志功を世界に導いたのもその目線があったからこそとは思いますが。
後段の「三上」「三中」ですが蝉坊の場合も枕上が多いのですが、とくに目覚めのご破算状態の一句がよろしいようで、もうひとつは西池袋「中田屋」での無言のTVニュース見ながらの独り酒のときもよろしいようです。
そういえば先日の朝日の同刊に寺山と太宰の記事が出てましたね。ご両人の共通項といえば「マザコン」でしょうか、これについてはまた後日。
へば、そろそろ極楽も昼近くになったようでございます。

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