#409: 義理でも本命でも…

2012-02-13 | Weblog
毎年、2月14日は「チョコレートの日」、つまりは「バレンタイン・デイ」です。
チョコレート売場は女性たちでいっぱいというニュースが流れておりました。
日本では、女性の方から愛を告白できる日とされ、基本的には意中の男性に「チョコレート」をプレゼントするということになっております。
アメリカでも、この日が「愛の日」であることは違いありませんが、プレゼントは男性の方がする、ということになっているようです。

バレンタインが近づくと、テレビ、ラジオから必ず流れてくるのが「MY FUNNY VALENTINE」です。
以前、別の記事(#220)で触れましたが、恋の歌だからといって、いつも美男美女ばかり登場するわけではありません。
「おかしくて写真向きじゃない」とこの名曲の歌詞にもありますね。

ファニーといえば、オードリー・ヘプバーンがフレッド・アステアと共演した『パリの恋人』(FUNNY FACE-1957)はスタンリー・ドーネンの職人技の小唄風ミュージカルでした。
そして巨匠ウイリアム・ワイラーが珍しくもミュージカル映画を撮った『ファニー・ガール』(FUNNY GIRL-1968)というのもありましたが、バーブラ・ストライサンドの歌唱力だけで持たせるやや冗長な作品でした。
さらにはビル・コンドンの『ドリームガールズ』(DREAMGIRLS-2006)ではちょっと太めのジェニファー・ハドソンがオスカー助演女優賞を取りましたが、彼女が演じたファニー・フェイスのシンガーが、このミュージカルの面白さを支えていました。

日本にも、「蓼食う虫も好き好き」という諺もありますし、最近では映画も必ずしも美男美女ばかりウケる時代ではなくなったことを考えれば、「MY FUNNY VALENTINE」という歌は実に現代的ともいえるのです。

 (TRANS-BLUE/1984)

ひところフュージョン的なアプローチの作品を発表していた日野皓正ですが、やはり傑出したジャズ・プレイヤーであることをファンに知らしめたのが、この『TRANS-BLUE』という作品でした。
少しも饒舌ではありませんが、雄弁に自分を語りきったそのコルネットの演奏は、自身の才能、そしてジャズという音楽世界の奥深さを見事に描いているといえるでしょう。
彼は、このアルバムで、歌もののバラード曲をギターのジム・ホール以下のクインテットと、佐藤允彦の絶妙なアレンジによるストリングスと木管楽器にのって、素晴らしい「歌」を聴かせてくれました。
アルバムの冒頭を飾るのが「MY FUNNY VALENTINE」です。
ドラマーとして加わっているグラディ・テイトが渋いヴォーカルを披露していますが、何の違和感もなくトータルな表現で盛り上げていて、マイルス・デイヴィスを始めとする先達の演奏とは一味違った出来となっています。
80年代の半ばといえば、単に人気のスタンダード作品を集めたり、華麗なストリングス付きでともすればイージー・リスニング風の作品が数多く発表されていたものですが、ここにあるのはそんな安直な企画を遥かに超えた圧倒的な美しさです。

 (UNDERCURRENT/1962)

ビル・エヴァンスの音楽の基本は「対話」にありました。
トリオにおけるコンセプションが最高だったことには異論がありませんが、三者が高度なレベルで対話し合い、その結果自然と一つの世界を作り上げていくのです。
その意味で、デュオというのは、エヴァンスの音楽にとっては最も原単位的なフォーマットではなかったかと思います。
『UNDERCURRENT』というアルバムは、ファンキー・ブームが勃興しつつある時期に、ビル・エヴァンスとジム・ホールという白人同士のデュオ、しかもまだ極めて珍しかったピアノとギターの一騎打ちということで、非常に冒険的な試みでした。
しかし、これもアルバム冒頭の「MY FUNNY VALENTINE]を聴いた瞬間から、その詩情あふれるインタープレイの素晴らしさに耳をそば立てざるを得なくなります。
原曲のイメージはすっかり変えられ、速いテンポで演じられ緊迫感あふれた「対話」が展開されます。
緊張と弛緩、音と間(ま)、それらを巧みにあしらった「対話」はまったくリスナーを飽きさせません。
これは名演です。

(STAN GETZ & J. J. JOHNSON AT THE OPERA HOUSE/1957)

クール・テナーからホット・テナーに転じたスタン・ゲッツのブロウアー(吹きまくり派)としての面白さがあますところなく捉えられた秀作アルバムです。
ここでの彼の即興演奏は、ファンキーな味付けで、ホットでとてもスイングしています。
一方で、「MY FUNNY VALENTINE」のようなバラード・プレイで見せる細やかな抒情性は、クールなゲッツをこよなく愛したファンたちをも大いに満足させたはずです。
ゲッツとJ. J.ジョンソンは、軽妙に絡み合いながら、それぞれの素晴らしいソロに展開していきます。
共演したトロンボーンのJ. J. ジョンソンもゲッツに負けじと好演を繰り広げていて、これは白熱的ライブ・アルバムの好い(酔い)見本ともいうべき作品です。
バックをつとめているのは、当時のオスカー・ピーターソンのドラムレス・トリオに、MJQのドラマーのコニー・ケイが加わったカルテット。
これで良いプレイができなかったら、ジャズ・ミュージシャンの資格はない…ってか(笑)

以上、今回は、あえてヴォーカルものを避けて、インストものだけを紹介してみました。

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「義理がたい女性ばかりのバレンタイン」(蚤助)

義理でも本命でもいいけれど、世の中の女性ってのは結構義理がたいんだなあ…て、感心しています。



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