#684: 天使のハンマー

2015-04-09 | Weblog
昨年の1月、94歳で亡くなったピート・シーガーは、モダン・フォークのレジェンドの一人だった。彼が在籍したザ・ウィーヴァーズはモダン・フォークのパイオニア的なグループで、彼はその中心メンバーとして活躍した。

彼の書いた“Where Have All The Flowers Gone?”(花はどこへ行った)や、同じくウィーヴァーズの中心メンバーだったリー・ヘイズの書いた“Seven Daffodils”(七つの水仙)などは今でも歌い継がれる永遠のフォーク・ナンバーである。

さらにもうひとつ、ウィーヴァーズ時代には注目されなかったが、60年代前半のモダン・フォーク・ブームに多くのアーティストに取り上げられたのが、ヘイズとシーガーが共作した“If I Had A Hammer”(天使のハンマー)だ。元々は“The Hammer Song”というタイトルで世に出た。

IF I HAD A HAMMER (THE HAMMER SONG) (1949)
(Words & Music by Lee Hayes & Pete Seeger)

If I had a hammer
I'd hammer in the morning
I'd hammer in the evening
All over this land

I'd hammer out danger
I'd hammer out a warning
I'd hammer out love between my brothers and my sisters
All over this land...

もしも私にハンマーがあれば
朝も晩もハンマーを打ち続けるだろう
国中を回って

世の中の危険や 注意すべきこと
さらには国中の人々(兄弟姉妹)に愛を
知らせて回るのだ...

以下、「鐘があったら、朝も晩も打ち鳴らすだろう」、「歌があったら、朝も晩も歌い続けるだろう」、そして「さあ、ハンマーを持ったぞ、鐘もあるぞ、国中で歌うべき歌もあるぞ、それは正義のハンマー!自由の鐘だ!国中の人々の愛の歌だ!」と続く。
かつて、赤狩りによって活動停止を余儀なくされたシーガーや、反戦活動家としても知られるヘイズらしい、簡潔ではあるが、社会的、政治的視点を持った力強いメッセージ・ソングである。
シーガー自身、ウィーヴァーズ時代から数えきれないほど歌っているが、これは56年のライヴ映像。歌いながら次第に聴衆を巻き込んでいく彼の「Sing Out Style」は日本のフォーク・アーティストにも大きな影響を与えた。


この歌を一躍有名にしたのが、ピーター・ポール&マリー(PP&M)であった。
“Lemon Tree”で登場したPP&Mが62年にリリースしたファースト・アルバムに収録されたこの歌は全米トップ10に入る大ヒットとなった。
こちらは63年のニューポート・フォーク・フェスティヴァルに出演したPP&Mのライヴ映像だが、改めて聴くとマリー・トラヴァースらの声が若々しく溌剌としている。
多くのフォーク・グループがレパートリーにしたが、蚤助の世代には最も馴染みの深い歌声である。


元々軽快なリズムを持った作品ではあるが、フォーク・ソング以外のファンにも広く認知されるようになったのは、翌63年、ラテン調の8ビートに乗せて歌ったトリニ・ロペスのレコードが発表されてからだ。
PP&Mの大ヒットから1年も経っていないのに、彼らを上回る成功を収めた(全米3位)。
ロペスのは、「クラブPJ’s」における手拍子、歓声入りのライヴ録音で、まるでパーティー会場にいるようなノリノリのダンス向きヴァージョンだった。
これはスタジオ・ライヴの映像だが、その熱気はPJ’sにおけるライヴ盤を彷彿とさせる。ロペスはこれと同じ調子で“Lemon Tree”(65年)、“La Bamba”(66年)など次々とヒットさせていく。


もうひとつ、大物サム・クックである。64年の夏、ニューヨークのナイトクラブ「コパカバーナ」で録音されたもので、彼の生前最後となったライヴ・アルバムからである。客層が主として白人アダルト層ということもあってか、ポピュラー寄りの選曲に難癖をつけられることもあるアルバムだが、艶やかで、軽快かつ奔放なヴォーカルは、やはり彼が素晴らしいシンガーだったことを見事に証明している。


今回、アップした動画がすべてライヴだったのは偶然だが、おそらく「天使のハンマー」という曲自体に歌い手と観客や聴衆の間との交流を促す要素が潜んでいるのだろう。それにしても、「あんな歌こんな曲をラジオの深夜放送などでよく聴いたものだなあ」などと、昔のことを思い出す今日この頃である。

ラジオから孤独な友のリクエスト  蚤助

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