#672: サヨナラ・ベイビー

2015-01-21 | Weblog
後年、「音楽が死んだ日」(The Day The Music Died)と呼ばれることになる1959年2月3日、ツアー中だった3人のロック・スター、バディ・ホリー、リッチー・ヴァレンス、ザ・ビッグ・ボッパーの搭乗した飛行機が墜落、操縦していたパイロットも含めて全員が死亡した(#470参照)。
当時15歳の高校生だったロバート・ヴェリーン少年は、仲間と急造のバンドを作り、亡くなった3人のロックン・ローラーの舞台の穴を埋めるという大変責任の重い仕事を引き受けることになった。
幸いにも、彼らのステージは成功を収め、彼はやがてボビー・ヴィーという芸名でポップ・スターとなっていくのである。

余談だが、ボビーが駆け出しの頃、ロバート・アレン・ジンマーマンという名のミュージシャンが彼のバンドに加わってツアーを共にした。後にボブ・ディランという名前で有名になる。蚤助は未読だが、ディランの自伝では、ボビーとの公私にわたる交友について詳細に触れられているそうである。

ところで、ボビーは、ホリーらの死の悲劇をきっかけに素人同然の状況でデビューしたにもかかわらず、その後、ビルボードのヒット・チャートに38曲ものヒット曲を送り込み、うち10曲はトップ20に達したという。

1961年、ボビーは8枚目のシングル「サヨナラ・ベイビー」(Take Good Care Of My Baby)で、見事全米1位に輝いた。日本では発売が遅れて、翌年の10枚目「バーバラのことは聞かないで」(Please Don't Ask About Barbara)とのカップリング盤で出され、ファンを喜ばせた。


この曲、おしどりソングライター・コンビとして知られたジェリー・ゴフィンとキャロル・キングが、女性ヴォーカル・グループ、シュレルズのために書いた大ヒット曲“Will You Love Me Tomorrow”に続いて、ボビー・ヴィーのために書いた曲である。

英語詞は、時折、しようと思えば何通りも深読みできるのが面白いのだが、特にゴフィン=キングの企みと思われるところがある歌なので、歌詞を紹介しておこう。

TAKE GOOD CARE OF MY BABY (1961)
(Words by Gerry Goffin / Music by Carole King)

My tears are fallin' 'cause you've taken her away
And though it really hurts me so, there's something I gotta say...

Take good care of my baby, please don't ever make her blue
Just tell her that you love her
Make sure you're thinking of her
In everything you say and do

Take good care of my baby
Now don't you ever make her cry
Just let your love surround her
Paint rainbow all around her
Don't let her see the cloudy sky

Once upon a time the liitle girl was mine
If I'd been true, I know she'd never be with you

So take good care of my baby
Be just as kind as you can be
And if you should discover that you don't really love her
Just send my baby back home to me...

「僕の涙が落ちている。なぜって、君が僕の彼女を連れてってしまったから…」という語りから入るイントロ。僕の彼女を君に奪われてしまったのだが、暴力の嫌いな「僕」は殴り込みに行くことなどせず、「大切にしてやってくれよ」と相手に頼みこんだりするのだ。気弱なボビー君である。これがまあ素直な曲の理解だろう。

ところが、この歌、「おむつ」のCMソングだったというハナシがあるのだ。嘘か真か知らないが、要するに、この歌の中の“My Baby”はほんとに「僕の赤ちゃん」で、お父さんが手抜き育児をしたせいで、連れ去られてしまう歌なのだという。

何しろ、
So take good care of my baby(僕の赤ちゃん大事にしてね)
Be just as kind as you can be(できるだけやさしくしてね)
And if you should discover that you don't really love her(もし本当に好きじゃないと分かったら)
Just send my baby back home to me(すぐに僕のところに返してね)

うーむ、そうだったのか、と思わず納得してしまいそうになる(笑)。

また、愛娘を花嫁として送り出す父親から、新郎に向って贈る歌とも解釈できるのだ。

「この娘を連れ去っていくなんて、本当に悲しいけど、これだけは言っておきたい。この娘をよろしく。悲しませるなよ。いつも愛を語り、いつでもしっかり娘のことを考えて。泣かせたりするんじゃないよ。愛で包んでやってくれ、虹が辺りを覆いつくすように。曇り空など見せちゃだめだ…」という具合にね。

そういう深読みを可能にするというのは、きっと、ゴフィン=キングの仕掛けた陰謀なのであろう。
でも、ボビー君はこうした企みにもめげず、“Devil Or Angel”、“Rubber Ball”、“Run To Him”、“The Night Has A Thousand Eyes”(燃ゆる瞳)、“Come Back When You Grow Up”(素敵なカム・バック)など次々と良い曲を歌い、時代の影響を受けながらも大人になっていくのである。


こういった曲を聴いていると、その昔、ラジオのポップス番組で知ったアメリカン・ポップスの数々、次第にオールディーズにハマっていくキッカケとなった曲の数々を思い出す。

ジャリタレの恋も知らない恋の歌  蚤助



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